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2013/09/24

【開催報告】公開研究会「ミライバ」第2回:地域の子どもたちが集まるコミュニティ

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公開研究会「ミライバ」
第2回:地域の子どもたちが集まるコミュニティ
― 二子玉川「いいおかさんちであ・そ・ぼ」プロジェクト ―
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 今まで独立して存在していた「家」「学校」「コミュニティ」の敷居が、近年徐々に低くなってきているように思います。東京大学 情報学環・福武ホールとミサワホーム総合研究所が開催する、公開研究会「ミライバ」では、この変化めまぐるしい現代社会のなかで、大きく意味が変わりつつある「場」の未来について考えていきます。

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 第2回の公開研究会は、9月2日(月)東京大学工学部2号館miraiba2_01.jpgで開かれました。今回のゲストは「いいおかさんちであ・そ・ぼ」を企画していらっしゃる、株式会社グラディエ代表取締役の磯村歩さん、二子玉川で自宅を開放されている飯岡さん、やなぎ教育グループの山口靖代さんにお越しいただきました。研究会前半は「いいおかさんちであ・そ・ぼ」が立ち上がった背景や、二子玉川を中心とした、子どもをとりまく地域コミュニティづくりの現状についてお聞きし、後半は約30名の参加者からの質疑に応えながら、子どもたちが立ち寄る地域コミュニティの現状や展望についてディスカッションをおこないました。

 磯村さんの会社では、(1)繋がる場としてのシェアハウス・シェアオフィスなどの建築設計・コーディネート、(2)繋がるためのきっかけとしての地域オリジナル商品の開発、(3)その場所へアクセスするツールとしてのモビリティのデザインを主にされています。今回は(1)に関わる、二子玉川(世田谷区)にお住まいの飯岡さんのお宅を、地域の様々な世代が集う場所として活用するプロジェクト「いいおかさんちであ・そ・ぼ」についてお話しいただきました。

 近年、「住み開き」と呼ばれる、家の中の空き部屋や空きスペースを使う取り組みが始められています。コミュニティ作りの場として、空き家を活用するには、家主やその家族の同意が得られなかったり、初期費用がかかるため実際には難しいのが現状です。「ハードウェアを一から作るのではなく、既存の空間の一部をちょっと地域の人達に住み開くことが、今後のハードウェアの活用方法として大きな可能性があるのではないか」という磯村さんの思いが形となったのが、今年の6月からスタートした「いいおかさんちであ・そ・ぼ」というプロジェクトです。
 ご自宅を住み開いている飯岡さんは、二子玉川で生まれ育ち、miraiba2_02.jpg保育士として40年以上子どもたちに関わっていらっしゃいました。退職される前から、将来的には地域でお母さんや子ども、高齢者を支え合う活動がしたいと思っていたと言います。インフォーマルエデュケーションの普及の観点から地域に関わっている、やなぎ教育グループの山口さんや磯村さんと色々な縁が重なって出会い、築60年の自宅の一部を地域の人達に提供する、このプロジェクトが始まりました。
 現在は、月2回、使わなくなった子供服を持ち寄ったり、育児の悩みを相談したりする中で、子育て世代のコミュニティが生まれています。また、地域の子どもたちや親だけでなく、祖父母世代の方に紙芝居をやってもらったり、料理を作ってもらう事で、子どもを軸として世代を越えた繋がりもできています。
miraiba2_03.jpg 「こういった場が地域に小さくとも複数生まれれば、いずれ大きなソーシャルインパクトに繋がるのではないか」と言う磯村さんは、つい先日二子玉川へ引っ越されたばかり。お子さまをもつ親のひとりとして、より当事者意識をもって関わりたいという思いから決断されたそうです。今後はオフィスだけではなく飯岡さんのお宅でも仕事をしながら、ついでに子どもたちの面倒をみることで、「ついでを持ち寄る場」の実証実験的な運営をしていく予定であることもご紹介いただきました。

 
 会場の参加者からは、様々な質問が出されましたが、なかでも運営の方法や今後の展開についての質問が多くみられました。
 まず、コミュニティの中で、多様性を認めていく仕掛けについての質問がありました。それに対し、磯村さんは「他人に同調することを前提としている日本人に対しては、ゆるやかなルールを提示しさえすれば、コミュニティは上手く回ると思う」と言います。この「ゆるやかなルール」について、飯岡さんは「あるとすれば、人間としての常識だけ」と話します。集まった子どもたちに対して、基本的に成長過程として受容し、制約をせず、ご自身の経験から年齢や場面を勘案しながら、その場に相応しい注意のみにとどめるのが飯岡さんの教育方針です。学校や公的な機関であれば不公平と思われがちな各家庭・各保護者への対応の差も生じるそうですが、こうしたゆるやかなルールこそが「いいおかさんち」の良さと言えます。

 それに関連して、この活動の基盤ともいえる、地域の人との信頼関係についても質問がありました。「顔見知りでなければお金を払って託児をお願いする。一方、『ちょっとお願い』と知り合いに預ける場合もある。どちらも必要であり、選択しえる社会があれば安心」と磯村さんは言います。子どもを預かる時、飯岡さんは「わざわざ怪我をさせる事はmiraiba2_04.jpgありっこないけれど、もし万が一怪我をしたらごめんね」とひとことだけ保護者に断るそうです。これは保護者と信頼関係があるからこそ可能なことです。待機児童問題が挙げられる中、「いいおかさんち」では、公的なものではすくいきれない部分を補おうと試みているのです。

 「いいおかさんちであ・そ・ぼ」は、20年前に知り合った山口さんに飯岡さんが「退職したら自宅を住み開きたい」という夢を語った事と、その後山口さんと磯村さんが知り合い、3人が繋がったことが発端となっています。「人的なネットワークがあって、そこに活動のための場所が提供された時、はじめてハードウェアが上手く活用される。」と言う磯村さんの言葉どおり、今回のプロジェクトはまさに3人の出会いの賜物と言えるでしょう。
 ただ、飯岡さんのような、保育のプロの方が自宅を住み開くような事例を増やす事は、とても難しいことです。退職して元気な保育士は沢山いるにも関わらず、そういった人が皆、自宅を住み開けるとは限りません。それでも、こうした活動をソーシャルインパクトに繋げるためには、まず、活用できる空き家と適切な人材を引き合わせて、住み開きを実現できるようなシステムが必要だと言います。「いいおかさんち」の雰囲気をそのままに水平展開することは極めて難しいことですが、ひとつのモデルとして共有し、それぞれの人の特色をもった住み開きのプロジェクトが生まれることが大いに期待されます。
miraiba2_05.jpg
 核家族化がすすみ地域コミュニティの希薄化が叫ばれる昨今、世代を越えて繋がりをもてる場が求められています。子どもをテーマにしたコミュニティ作り「いいおかさんちであ・そ・ぼ」は、これからの地域が求める「ミライバ」の1つのモデルであるとともに、住宅の新しい可能性を示唆していると言えます。

 今回お話いただきました磯村さん、飯岡さん、山口さん、そしてお集りいただきました参加者の皆様、どうもありがとうございました。

[ スタッフ 河田承子・特任専門職員 野口雅乃 ]