2015. 2.21 開催
第3回 公開研究会

学習効果を高める反転授業のデザイン

向後千春 FLIT Seminar

講演
学習効果を高めるICTの活用法
反転授業も含めた授業設計

向後千春 FLIT Seminar

向後千春
早稲田大学人間科学学術院/教授

ブレンド型授業のタイプ

反転学習はブレンド型授業のひとつの形態です。予習タイプのブレンド型授業は、ビデオでeラーニングを受けた後に対面で授業をします。他には、対面授業を受けてからビデオを見る復習タイプ、対面でわからないことがあればビデオを見る補習タイプがあります。その中でも予習タイプが反転授業として捉えられています。

eラーニング・対面授業の「神話」

eラーニングはドロップアウトしやすい、簡単にサボれるという神話がありますが、これらは嘘だと思っています。そのような事実は確かにありますが、これはeラーニングそのものではなく作り方に原因があります。生徒たちは、つまらないと見るのをやめてしまいます。先生がしゃべり続けるだけではなく、きちんと eラーニングを設計すれば、そういったことは起こらなくなります。サボることに関しても同じです。

対面授業においては、グループワークは効果的であるという神話があります。グループをつくり、課題を解決し、お互いにプレゼンテーションをする活動がアクティブラーニングなどの名称で盛んに行われていますが、すべてのグループワークが効果的というわけではありません。また、グループワークは自発性を引き出すと言われていますが、きちんとグループワークを設計できなければうまくいきません。私の専門はインストラクショナルデザインで、授業をどう設計するかということを扱っていますので、次に、実際に私がどのような授業設計や工夫をしてきたのかについてお話させていただきます。

ビデオの収録方法

はじめに、eラーニングの作り方について、私の取り組みをご紹介します。早稲田大学人間科学部では、2003年にeスクールというコースが開設されました。この時に初めてオンデマンドビデオを制作しましたが、スタジオでプラズマディスプレイにスライドを写してその横で解説するという、今考えるとつまらないものをつくっていました(笑)。その後、研究室のパソコンで制作できるようになってからは、自分の顔とスライドを組み合わせて収録し、TechSmith社の Camtasia(カムタジア) というソフトを用いて編集しています。

編集は簡単な切り貼り程度でほとんどが流し撮りです。言い間違いなども特に編集しません。間違ってはならないというビデオ学習の固定概念を少し変えて、ラフに教材作成を行います。スライドにはマンガやイラスト、セリフなども入れます。ビデオの長さは1セクション10分以内で7分程度がいいと思います。15分は長いですね。

ビデオ+クイズの必要性

向後千春 FLIT Seminar 1セクションの終わりには必ずクイズを付けます。クイズは成績をつけるためではなく見たことを確認するためなので、できれば全員が100点を取れるようなものがよいでしょう。クイズは対面授業につながるものにしたほうがよく、たとえば小レポートなど(200-400字)のような重すぎないものにしています。そこでの課題はグループ活動で共有させることも有効です。

ビデオの配信方法ですが、配信チャネルが学校に整備されていない場合は、YouTubeで配信してみましょう。生徒以外は見られないプライベート仕様も、一般の人が見られるパブリック仕様もどちらも可能です。

グループワークの極意

グループ人数は7人だとサボる人が出てくるので、5±1人が適当です。私の授業では、学年と性別をランダムにしてグループを編成し、出席表の代わりに大福帳を用いています。全15回の出席欄が1枚の紙になっている、先生とのお便り交換のようなものです。そこには座る席とグループを書いておき入室の際に返却することで、グループ編成がスムーズになります。

アイスブレイクは1分間スピーチや4コママンガを描かせるなど、スキルトレーニングを組み込む形で行います。その後、具体的な実習活動に移りますが、その際に大切なのは司会、タイムキープ、記録、全体の俯瞰などの役割を全員に与えることです。

さらに、ディスカッションの成果は必ず紙にまとめて発表させます。基本的にはグループ間でプレゼンテーションを行い、ときにはいくつかのグループが全体へ発表することもあります。

また、活動時間は短く区切ることが大切です。10分以内であれば集中して取り組むことができますし、スクリーンにタイマーを映して管理すると学生は時間を意識するようになります。なお、活動内容の指示は明確であることが大切で、もし学生から質問が出てきたらそれは指示が徹底していない証拠です。

向後千春 FLIT Seminar