UTalk / 「制度」に埋め込まれた企業、そして成長

舟津 昌平

経済学研究科 講師

第218回

「制度」に埋め込まれた企業、そして成長

6月のゲストは、制度派組織論がご専門の舟津昌平さん(経済学研究科・講師)です。 制度派組織論は、法律や明文化されたルールだけでなく、慣習・規範・評価基準といった広い意味での「制度」の中で、組織のあり方や意思決定がどのように形成されるのかを考える研究領域です。 舟津さんが特に注目しているのは、利益の追求を重視する「営利の論理」です。 実際に企業と関わりながら研究を進める中で、営利の論理が社会にどう影響してきたのか、それに企業がどう向き合っているのかが見えてくるそうです。 営利の論理がますます強まる状況の中で、企業はいかにイノベーションを生み出し、成長できるのか。そもそも成長する必然性とは何なのか。 フィールドワークの体験談もお聞きしながら、一緒に考えてみませんか。

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今回は、経営組織論を専門とする舟津昌平さん(経済学研究科)をお招きし、「制度に埋め込まれた組織」をテーマにお話しいただきました。制度とは何でしょうか。婚姻「制度」を例にとると、法律として明文化されているものだけでなく、「結婚式では披露宴を行うものだ」といった、明文化されずとも多くの人が「当たり前」だと感じる慣習も制度には含まれます。私たちが日常の中で無意識に受け入れている「当たり前」が、どのように生まれ、組織や個人の行動に影響を与えているのかを考える時間となりました。

イベントの冒頭で、舟津先生は参加者に「大学は何をするところでしょうか」と問いかけました。参加者からは、まず「研究」と「教育」を行う場だという意見が挙がりました。どちらも大学の主要な役割ですが、舟津先生は、活動によって「関係者(ステークホルダー)」が変わることに注目します。「研究」では主に教員や研究員などが関係者となる一方、「教育」には教職員だけでなく、学生も関わります。このように、一つの組織であっても、そこで行われる活動によって関係する人々や役割が変化します。さらに大学には、学術的な知識や情報を蓄積する場、災害時の避難場所、学生にとっての交流や遊びの場といった側面もあります。大学は一つの目的だけを持つのではなく、関係する人によって異なる意味を持つ「多義的な場」だといえます。

一方、企業は一般的に利潤の追求を前提とするため、大学よりは多義性が削減されます。株主価値や利益の最大化が目標とされ、売上や事業規模など、量的な拡大による成長が求められます。日本企業では従業員の生活を支える役割も期待されてきましたが、基本的には企業とは営利を目的とする組織であり、効率性が強く求められる構造を持っています。

こうした大学や企業など組織について考える中で、「なぜ異なる組織が似たような動きをするのか」というテーマにも話が及びました。組織は政府の方針や社会からの期待など、外部からのプレッシャーを受けることで、次第に似たような形や行動へと収束していく傾向があります。これを経営組織論では「同型化」と呼びます。組織は常に外圧を受けて行動を変容させます。例えば大学が企業のように収益を上げることを求められたり、大学ランキングを上げるべく共通の評価指標を導入したりすることも、社会からの圧力によって生じる変化の一つです。組織は、社会から正当な存在として認められるために、外部の期待に適応しようとします。しかし、その結果、従来と異なる活動を行わざるを得なくなることもあります。そこに、組織が抱えるジレンマ、制度がもたらす複雑性があります。

このようなジレンマに対して、舟津先生は「成長」のみならず「発展」を目指すという方向性について考えているそうです。売上や規模を増やすなど量的な拡大を目指すことが「成長」です。しかし、人口が減少する社会において、量的な拡大を続けることには限界もあります。それに対して「発展」とは、多様な人々が集まり、新しい関係や価値が生まれていくような、質的な変化を指します。効率や規模だけを追い求めるだけでなく、一見すると無駄に見える活動や、すぐには成果につながらない「余白」を受け入れる組織を作ることが、今後の社会で求められるのではないでしょうか。

今回は「制度に埋め込まれた組織」についてお話しいただきました。今回も多くの方にご参加いただき、質問が尽きない回となりました。舟津先生、そしてご参加いただいたみなさん、誠にありがとうございました。

[アシスタント 松原 正典]