総合文化研究科 特任研究員
第215回
筋肉は健康のために重要、という話を多くの人は聞いたことがあるのではないでしょうか? 昨今では、マッチョな姿になるため、ダイエットのため、そして健康のため、筋トレに励んでいる方も多いように感じます。そんな筋トレブームの中、本日のUtalkでは筋肉について研究していらっしゃる大学院総合文化研究科・特任研究員の伊田暁人さんをお招きして、筋肉とはなんなのか、また筋肉を科学するとはどういうことかをお伺いしました。 伊田さんは大学で筋肉の研究を行なわれているほか、パーソナルジムの経営やメディアでの発信にも取り組まれています。参加者の皆さんの中には、そのようなアウトリーチング活動から伊田さんを事前に知って、今回のUtalkにお越しいただいた方も多くいらっしゃいました。
会が始まると、まず伊田さんが「筋肉って聞いて思い浮かぶことは?」と質問を投げかけました。「赤色!」「体育会系!」「鶏ささみ!」「ステロイド!」など参加者の方からさまざまな回答が飛びます。そもそも筋肉とは、一番イメージされやすい骨格筋のほかにも、心臓の筋肉である心筋と内臓や胃腸を支える平滑筋があります。骨格筋はそのなかでも自分の力で動かせる筋肉であり、伊田さんの研究の中心となっているのもこの骨格筋になります。 伊田さんによると、筋肉には熱産生、血糖コントロール、ホルモン分泌、乳酸の生成の主に4つの役割があるそうです。まず筋肉で生まれた熱は人間の体温維持に欠かせません。また体内の糖の7割程度は筋肉に貯蔵されるため、筋肉が多いと食事後に糖がすぐに筋肉に取り込まれ、結果糖尿病のリスクが減ります。さらに筋肉の新しい役割として近年注目されているのが、筋肉のホルモン分泌です。運動後に分泌され、脳の認知機能を高めることに役立つホルモン等があります。同様に運動後に筋肉から出される乳酸も、脳や他の器官に届いてエネルギーとして使われることがわかっています。また一時的な健康面だけでなく、筋肉がある方が、死亡リスクが2割ほど下がること、老年期でのサルコペニア(筋力低下により日常生活に支障をきたす病気)になりにくくなること、など筋肉には人生を通じたメリットがあることも述べられました。 このように人間の健康に重要な筋肉ですが、実は老化が始まる30歳ごろから減少の一途をたどります。ではどうすればいいのでしょうか。その答えは端的に「筋トレ」と伊田さんはおっしゃいます。筋肉の減少を抑える、代謝を上げる、糖尿病を防ぐ、循環器系のリスクを下げる、脂肪・コレステロール値の改善につながる、骨密度が高まる、メンタルヘルスにポジティブな影響を与えるなど、「筋トレは百薬の長」「Resistance exercise is medicine」と評されるほど、筋トレによるメリットはアカデミアの世界でも強く支持されているのです。
さて、そんな筋肉を研究するとはどのようなことなのでしょうか。伊田さんによると、筋肉の活動を定量化することとおっしゃいます。筋トレの効果は外見にも表れますが、体内で何が起こっているかを直接見ることはできません。伊田さんの研究では、脳の指令が運動神経を経て筋肉へ伝わった結果、筋肉で記録される電気的な信号(筋電図)を測定し、どこでどのくらいの筋肉が使われたのかというデータを使って研究しているのです。 今回は、実際に筋電図で筋肉の電気信号を測る過程を見学しました。太ももと腹筋に電極を張った伊田さんがスクワットを行うと、太ももの筋肉だけでなく腹筋にも電気信号が計測され、スクワットでは腹筋も使っていることがはっきりと現れました。King of Exerciseとも呼び声高いスクワットですが、確かに太ももだけでなく全身の筋肉を刺激する効果があるようです。
本日の参加者の方には普段から筋トレをされている方も多く、会の後半では筋トレについての具体的な質問がたくさん出され、いつもにも増してインタラクティブな会となりました。 素晴らしいお話と筋トレの実演をしてくださった伊田暁人さん、参加されたみなさんありがとうございました。
[アシスタント 川俣 愛]