UTalk Report

井原智彦

新領域創成科学研究科環境システム学専攻 准教授

どうすれば熱中症を防げるか?

U-Talk Report U-Talk Report

概要

井原智彦さん(新領域創成科学研究科 環境システム学専攻 准教授)のご専門はライフサイクルアセスメントで、主に温暖化適応策の設計を研究されています。夏に気温が上昇すると、熱中症や睡眠障害が起きやすくなります。井原さんは、夏の暑さにが人に及ぼす影響を評価し、緑化やエアコンなど、どのような対策をすれば効果的に防ぐことができるかを研究されています。今年の夏に備えて、この機会に一緒に学んでみませんか。みなさまのご参加をお待ちしております。

暑くなってきたこの時期、熱中症を心配しはじめた方もいるのではないでしょうか。

5月のUTalkでは、井原智彦さん(新領域創成科学研究科環境システム学専攻 准教授)をゲストにお招きし、熱中症の防ぎ方、暑さによる健康被害について考えました。


そもそも熱中症はどこで発生することが多いのでしょうか。水分補給が不十分なまま屋外で作業をしていた…ニュースで取り上げられるのはこのような原因が多いですが、統計を見ると、住宅での発症者が増加していることが分かります。つまり、私たちが普段過ごしている屋内の環境が、熱中症を引き起こす大きな原因になりかねないのです。


では、屋内環境のどこに原因があるのでしょうか。井原さんによれば、エアコンをつけているかが1つの大きなポイントになるそうです。屋内の温度が上昇する原因は、住宅の型(戸建て、集合住宅など)、築年数の長さ、部屋の位置(上階、角部屋など)などが研究で明らかになっています。温度を下げるための対応として、ヒートアイランド対策によって気温の低下を目指すことが考えられますが、最大限導入してもこの方法では1℃未満しか温度を下げることができず、効果的な対策とは言えません。なにより、熱中症が起こりやすいのは室内ですから、屋外の環境を変えることによって室内温度の低下を狙うより、室内温度を直接調整する方が圧倒的に効果的な対策になることは、一歩立ち止まって考えると当たり前かもしれません。


東京都の調査では、熱中症死亡者の8割がエアコンをつけていなかったことが明らかになっています。しかしながら、エアコンを使わない理由が「エアコンを持っていないから」という人は、全体のうち2割にしか満たないそうです。エアコンを使わないのはなぜなのか。はっきりした調査結果がまだ得られていないとのことで、当面はエアコンをつけるように情報発信を続けることと、エアコン以外のローカルな対策で熱中症対策を促すことの両方が必要ではないかと感じました。


暑さによる健康被害は熱中症だけではありません。井原さんが特に注目されているのは、睡眠困難です。真夏の寝苦しさを経験されたことがある方はイメージしやすいのではないでしょうか。熱中症は命に関わることもあり、医学的な診断が下されます。一方で睡眠困難は直接命に関わる症状ではないこともあり、医学的な定義や統計が存在していません。そのため、具体的な対策を考えること自体が難しい状況にあるそうです。そこで、井原さんは暑さによる睡眠困難の定量化を試み、様々な調査を統合した結果から数式によって暑さと睡眠の関係を明らかにされ、暑さによる健康被害が熱中症だけではないことも研究を通して主張されています。


夏が近づくと毎年話題になる熱中症。コロナ下のマスク生活も影響して、年々関心が高まっているのではないでしょうか。マスクと熱中症の関係ははっきりしていませんが、マスクで覆われた部分は熱が逃げにくくなるので、通常より低い温度環境でも熱中症になる危機意識は持っておいた方がいいでしょう。屋内ではエアコンの使用、屋外では日傘の使用や日陰を歩くなど、私たち個人がいつもと少し違う行動をとることで熱中症の予防につながります。


当日は約10名の参加者とアットホームな雰囲気で熱中症を考えることができました。これから本格的に暑さと向き合っていかないといけませんが、井原さんのメッセージがきっと参考になるのではないでしょうか。井原さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。

[アシスタント:山田瑞季]

Report

Copyright (C) The University of Tokyo. All Rights Reserved.
The University Tokyo