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永野真義

工学系研究科都市工学専攻助教

新宿を広場の歴史でひもとく

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概要

永野真義さん(大学院工学系研究科 都市工学専攻 都市デザイン研究室助教)のご専門は都市設計で、主に公共空間のデザイン論を研究されています。今年9月に新宿で開催された「アーバニズム・プレイス展2018ー都市計画の過去と未来の創庫」では、新宿のパブリック・プレイスの歴史をたどる展示を中心となって作成されました。戦前・戦後、新しい都市像を描いた都市計画家や建築家たちは新宿に超高層ビルだけでなく、多くの広場を作っていきました。そこにはどのような意図や未来像があったのか?そしてこれからの新宿はどうなっていくのでしょう?土曜の午後、知的好奇心を刺激するカフェでのひととき。みなさまのご参加をお待ちしております。

2018年12月のUTalkでは、工学系研究科都市工学専攻助教で都市デザインを専門とされている永野真義さんにお越しいただきました。今回のテーマは新宿の広場です。

永野さんは新宿の広場の設計に携わった人の印象的な言葉を紹介するところから今回のトークを始めました。東京市の技師であった小田川利喜は1939年に「新宿は今回の広場の建設に依り一大進展を来す訳であって、広場を中心とした一大総合駅と周囲の高層建築は茲に厳然として新宿の中心点を現出する」と語っています。
このように広場を新宿の中心点としてつくっていくという考え方は戦後にも引き継がれました。東京都都市計画課長の石川栄耀は戦災復興計画において、新宿に歌舞伎座を呼ぶぐらいの意気込みで芸能中心のまちづくりを進めていきました。こうしてできたのが現在の歌舞伎町であり、新宿コマ劇場前の広場です。

高度経済成長期に突入すると、新宿の開発は東から西に及んでいくようになりました。山田正雄東京都都市計画課長が「今までの線的、平面的な即ち一次元的、二次元的都市計画から空間的、立体的な三次元都市計画への脱皮である」と語った背景には、郊外に向けて東京が急速に拡大しているという時代状況がありました。新宿駅西口の淀橋浄水場の撤去と新宿西口の再開発は単に新宿のみにかかわる話ではなく、大手町付近の通勤混雑を分散させるという首都圏全体のスケールから考えられていたのです。
このような西口の開発を受けて、先行的に新宿駅西口に大きな地下広場が設けられました。坂倉設計事務所の東孝光によって地下広場はいろんな方向から自由に人が集うという匿名的な空間として設計されました。
そんな新宿西口広場では、次第にベトナム戦争反戦フォーク集会が開かれるようになり、単なる交通の空間から群衆が集まるような広場に移り変わっていきます。警察はこのような動きに対して、69年に新宿西口広場を新宿西口通路と変更し、規制を強化するようになりました。しかし、こうして広場が注目を浴びたことにより、都市空間で過ごすというありかたそのものが考え直されていくようになりました。1970年から東京ではじまった歩行者天国もこうした動きの延長線上にあるといえるでしょう。

さて、新宿の都市開発は1970年代から民間主導の開発が進んでいくようになります。そのなかでも、新宿三井ビルを設計した池田武邦は「都市環境の立場から見れば高層建築によって得られた余白空間こそその主な計画対象となるものであり、その空間は当然、直接・間接にその影響圏として対象敷地外に対してある広がりをもって存在している」と指摘しています。こうした考えは、高層建築はビルそのもののためにあるものではなく、その下の空間をつくるためにあるという思想を反映したものでした。しかも、広場は敷地のみならずそれを取り巻く空間にも影響を与えるものとして捉えられていたのです。
86年に審査がおこなわれた新都庁コンペにおいても多くの広場のプランが提案されました。コンペに勝利した丹下健三は「八方を超高層に囲まれた広場というのは世界でもおそらく例がなく、かなり都市的な広場だという意味合いが出てくるのではないかと思っている」と語り、周囲の超高層ビルを見上げるような象徴的な広場のあり方を示しました。

現在では、西新宿のまちづくりを官民一体となって進める西新宿懇談会の手によってこれまでの西口のオープンスペースを快適で過ごしやすい空間へと改良し、そこでの「パブリックライフ」を充実させることが重視されるようになっています。こうした背景には敷地のみならず、その地域一帯を一括して捉え、よりよいまちをつくっていくというエリアマネジメントの考え方があります。
例えば、東口側ではモア4番街において道路上の居心地を良くするような取り組みが続けられています。法律改正によって道路上にオープンカフェを出店するような試みや、2005年から地元の商店の人の手でお祭りが実施されるようになっています。このように空間を活かし、街を整えていく試みはプレイス・メイキングと呼ばれています。道路空間のなかにいかに賑わいをつくっていくかということが大事になるのです。
新宿西口においても三井ビルの公開空地をリニューアルし、大屋根をかけて全天候型の広場をつくろうとする動きが現在進行しています。近年は道路と敷地内のオープンスペースは連続したものとして考えられるようになり、場合によっては建物のラウンジともつながって、半屋内のような場所も増えてきました。こうした新しい動きは人間の行動や振る舞いを中心に据えた設計思想によって進められているのです。

来場者からは過去の新宿の姿をあまり知らなかったという声や、どのような動機でオープンスペースの改良が進められるのかという質問が上がっていました。永野さんは、現在の法制度のなかで領域横断的なオープンスペースをつくっていく難しさについて触れつつ、広場のような居心地のいい空間が単にそのビル周辺のみならず、その地域一帯に対してもいいイメージを与えたり、新しいアクティビティを生む力があることを強調されていました。

永野さん、参加者のみなさま、どうもありがとうございました。

[アシスタント:中川雄大]

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