UTalk Report

玉置亮

先端科学技術研究センター 助教

光でみる次世代の太陽電池

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概要

7月のUTalkは、ナノ構造を用いた次世代太陽電池の高効率化について研究されている玉置亮さん(東京大学先端科学技術研究センター 助教)をお迎えします。私たちの生活に身近となった太陽電池ですが、その出力や効率は明らかにできるものの、実際に太陽電池の内部で何が起きているのかは、ナノレベルではまだ解明されていないことが多いそうです。この謎に分光計測をツールとして取り組む玉置さんとともに、次世代太陽電池内部の物理現象をのぞいてみませんか?

2018年7月のUTalkでは、先端科学技術研究センター助教の玉置亮さんにお越しいただきました。次世代の太陽電池の開発と、その内部で起きている物理現象の解明に挑む研究についてお話いただきました。

太陽電池は半導体を使ってつくられていますが、半導体には「バンドキャップ」というものがあります。これは電子を取り出すために必要なエネルギーの大きさを表していて、光の波長(色)によって越えられるギャップの幅が異なります。そのため、バンドギャップによって「電圧は高いけれど電流が小さい」「電流は大きいけれど電圧が小さい」といった状態ができ、うまく電子を取り出せないことがあります。白色の光である太陽光は様々な色の光が混ざっているため、複数の波長の光をうまく扱う必要があります。

そこで次世代の太陽電池である多接合型では、バンドギャップの異なる複数の太陽電池を直列に組み合わせ波長ごとに電子を取り出せるようにしています。これによって発電効率の向上が見込めますが、一方で多接合型太陽電池の製造費用はまだまだ高く、1cm角の次世代太陽電池をつくるのにかかる費用で、現行の太陽電池のパネルが買えてしまうそうです。広い面積の光を集光することでコストを下げることが期待されますが、集光するには太陽光をモジュールにまっすぐ当てなければならず、そのためにヒマワリの花のように太陽の位置を追いかける複雑な仕組みが必要になります。

次世代の太陽電池には他にも種類があります。例えばバンドギャップの中間を埋めて電子を取り出す中間バンド型の太陽電池では、理論的には集光下で63%の効率が期待できます。現行の太陽電池パネルでは理論限界が30%ほどであることと比べれば大きな発展です。その一方で、理論的な可能性をそのまま実現するためには乗り越えなければならない課題も多くあります。そこで玉置さんはパルスレーザーを使うことで太陽電池の「内部」を分析しようとされています。カメラのシャッターがある時点での動きを切り出してくれるように、超短時間のパルスレーザーを太陽電池に2本当てることで、時間差による状態の違いを分解するのです。その結果、熱の抑制が必要であることが見えてきました。

こうした分析を続け、次世代の太陽電池を実現していきたいと玉置さんはお話されていました。参加者の方からは、実現のための期間はどれくらいかという質問が出ました。多接合型のものは10年後、中間バンド型のものは20~30年後を見通しているそうです。現在は宇宙での発電用途が主であるために、それを地上に降ろしてくることも必要です。

印象的だったのは「次世代の太陽電池としてどの技術が残るかは分からない」とお話されていた点でした。研究開発として様々な可能性が模索されているのが現在の状況なのです。

玉置さん、参加者のみなさま、どうもありがとうございました。

[マネージャー:杉山昂平]

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