UTalk / 自分のまちの未来をデータで予測する

関本義秀

生産技術研究所 准教授

第122回

自分のまちの未来をデータで予測する

関本義秀さん(生産技術研究所 准教授)は都市情報学がご専門で、都市と人に関する膨大なデータを分析し、それらを用いていかに社会をアクティブな方向に動かすかという研究・実践をされています。現在のプロジェクトの1つ、"My City Forecast”は、全国各地の市町村が2040年にどういった状態になっているかを分析し、わかりやすい形で一般向けに提供するもの。自分の愛着あるまちがこれからどうなるのか、具体的なデータを用いて考えることで、対策の仕方も変わってくるかもしれません。カフェでお話をききながら、まちの未来に思いをはせてみませんか。みなさまのご参加をお待ちしております。

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2018年5月のUtalkは、生産技術研究所の関本義秀先生にお越しいただきました。関本先生のご専門は「人間都市情報学」というもので、ある特定の権力・お金のみで簡単に解決はしない都市の課題について情報技術を巧みに用い、少しずつ社会を動かすこと、社会の基盤になるような、人を中心とする都市の情報技術を扱うことを目的にしています。また先生の研究室は2013年4月に生産技術研究所人間・社会系部門にできたことからも伺えるように、最先端の取り組みを行っています。
 関本先生がこの分野に関心を持たれたきっかけとしては、街づくりが主に行政の側からトップダウンで担われていることに違和感を感じたためとのことでした。また2000年代以前の都市計画は「ショッピングセンターなどの娯楽施設を各地に配置する」ものであったため、各地方の都市は無秩序に拡張することとなりました。そこで街を小さくし、効率的に居住空間を作ろうという「コンパクトシティ」論が生まれ、関本先生はその活動に加わられました。
 街作りの「マスタープラン」は市民が協働して行うことで遂行されます。例えば先生が着手なされた具体例としては”My City Forest”があります(論文は“My City Forecst: Urban planning communication tool for citizen with national open data” から参照できます)。設定項目に地域のオリジナルデータを用いたカスタマイズ機能を搭載するなど、あらゆる工夫がなされています。
 ここまで書くと、情報技術を用いた都市計画は欠点が全くないようにも思えますが、それでも課題は残っているそうです。例えばシミュレーション計算に莫大な予算がかかることが想定されます。ここで使用される「情報技術」とは主に「オープンデータ=特定のデータが一切の著作権、特許などの制御メカニズムの制限なしで、全ての人が望むように利用、再掲載できるような形で入手できる」ことを指しているのですが、その種類が多種多様なのです。例えば、将来都市に居住するだろう人間の分布の推定方法、施設の配置、アクセシビリティなどです。これらを全て変数に含んで分析するため、将来行政コストの算定方法が非常に煩雑なものとなってしまいます(計算によると32.4~35万円かかるそう!)。
 このように情報技術――その中でもオープンデータをもとにした活用方法は未だ議論が始まったばかりの分野であり、今後も幅広い応用が期待されます。一方で前述したように多く残っている課題を解決しないことにはその進展が望めないのも事実です。また市民協働と銘打っているように、広がる社会的基盤と一貫して考えなければなりません。
 このように興味深い話を伺うことができ、非常に充実した時間を過ごすことが出来ました。関本先生、参加者の皆様、ご参加いただき誠にありがとうございました。

[アシスタント:小寺はるか]