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池亀彩

情報学環、東洋文化研究所(兼)准教授

カーストから見えるインド

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概要

池亀彩さん(情報学環、東洋文化研究所(兼)准教授)のご専門は社会人類学・南アジア研究で、南インドを中心に研究されています。カースト制度というと、不平等な身分制度といったマイナスイメージで捉えがちですが、実は今日のインド社会を支えるのに一役買っているという側面も。インドにカーストは数え切れないほど存在し、同じカーストに属する者たちの横のネットワークは非常に強固で、一種の社会保障的役割すら果たしている、と池亀さん。カーストとは一体何かを知ることで、これまでとは違ったインドの側面が見えてくるのでは。知的好奇心が刺激される、休日の午後のひととき。みなさまのご参加をお待ちしております。

2018年2月のUTalkは,情報学環・東洋文化研究所准教授の池亀彩さんにお越しいただきました.社会人類学が専門の池亀さんは,もともと学部のときには建築史を勉強されており,その頃からインドを訪ねられています.

今回のお話のテーマは「カースト」.このカーストという言葉は,もともとインドにはない言葉で.「人種」を意味するポルトガル語のカースタから派生したものです.インド現地でカーストに対応する言葉は「ヴァルナ」と「ジャーティ」.この2つがインドの社会構造をなしています.

「ヴァルナ」は,バラモン,クシャトリア,ヴァイシャ,シュードラからなる士農工商のような構造で,その外には不可触民(ダリト)や部族民があります.それはインドの「理念型」としての社会構造で,実質的に機能しているのはより複雑な社会集団です.それが「ジャーティ」です.

ジャーティは職業や儀礼などを共有する集団で,一地域に500のジャーティがあると言われています.同じジャーティの者どうしでないと結婚しない内婚集団であり,インドの人々の日常生活ではジャーティがカーストとして扱われています.

ジャーティと切っても切り離せないのが「浄/不浄」という概念です.これによってカーストの上下が判断され,時に差別のもととなります.例えば,洗濯屋のジャーティは他人の「血に触れる」ことがあるので,不浄・穢れの要素をもっています.寺院のジャーティは「お金に触る」ことがあるので,地位が低く見なされがちです.こうした浄・不浄の感覚によって,ジャーティどうしの婚姻やモノのやりとり,共食の拒否がなされるのです.

その一方で,カーストは互助団体カースト・アソシエーションを母体に信用や助け合い,政治活動を可能にするなど,現在でもインドの社会を形づくっています.いまだに外婚は5~10%ほどであったり,名誉殺人や見せしめとしてのレイプの原因になったりもします.カーストを通すことで,インドがどのような社会なのかが見えてくるのです.

ただ,カーストは一筋縄ではいかないのが興味深いところです.参加者の方からの質問で「洗濯することが汚れならば,洗濯屋カーストが穢れた存在だとすると、誰が洗濯屋に仕事を頼むのか?」というものがありました.池亀さんの答えは「みんな洗濯を頼むんです」.洗濯屋カーストは低いカーストで人によっては不可触民に近いとみなしている。でも,彼らに洗濯を頼むことはみんな気にしない.「汚れ」の概念というのは「むちゃくちゃ」で矛盾がたくさん含まれているそうです.だからこそ,インドの社会構造には,たくさんの研究を惹きつける謎があるのだと感じました.

池亀さん,参加者のみなさま,ありがとうございました.

[マネージャー:杉山昂平]

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