先端科学技術研究センター 特任助教
第113回
8月のUTalkでは、量子力学を専門とする野口篤史さん(先端科学技術研究センター 特任助教)をゲストにお招きします。ニュースでは実用化に向け急発展を遂げた量子コンピュータについて耳にするようになりました。私たちの時間感覚や空間感覚をはるかに超える量子の世界を、この目で見てみたいと思いませんか?今回は目に見える量子現象に魅せられた野口さんのお話を伺いながら、それが私たちにとって身近となる未来を思い描いてみましょう。
8月のUTalkは野口篤史さん(先端科学技術研究センター 特任助教)にお越しいただきました。野口さんはさきがけ研究者として「表面弾性波を使ったエレクトロメカニクスの量子制御」という、現代物理学の根幹を成す理論「量子力学」に基づいたプロジェクトに携わっておられます。野口さんには、この「量子力学」とは何か、その魅力とは何かについてお話しいただきました。
物理学は大きく古典論・現代物理学に二分されます。古典論として著名なものは、ニュートン力学や相対論的力学です。ニュートン力学では3つの運動の法則や万有引力の法則などの、物体の運動に関する動力学の知見が発達してきました。一方、現代物理学の基礎になっている「量子力学」はその後に発展した理論です。主に分子や原子、電子について微視的な現象を記述する学問であり、この学問によってミクロな系をとり集めて解析する事が可能となりました。代表的な理論としてはシュレディンガーの創始した波動力学、ハイゼンベルクらが創始した行列力学があります。「シュレディンガーの猫」をご存知の方も多いのではないでしょうか。
量子には不思議な特徴があります。例えば、量子トンネル効果です。これは壁があっても量子だと通り抜けることを意味します。他にも量子は自分自身と干渉したり、シュレディンガーの猫の例のように、例えば生と死という異なる状態に同時になれるといった特徴も持っています。当日は、原子を捕獲した写真を紹介していただいたり、量子電気回路という小さな金属片を参加者に回していただきながら、普通は見えない微視的な世界の特徴を具体的にお話しいただきました。
量子力学は情報科学への援用によって量子コンピュータの発展が目覚ましく、科学哲学でも心の因果作用において議論される非常に重要な学問になってきています。このような微視的な考察をあらゆる事象に当てはめて考えられる事は非常に興味深く、関心を持って拝聴しました。貴重なお話をいただいた野口さん、たくさんの質問で会を盛り上げてくださった参加者の皆様、誠にありがとうございました。
【アシスタント:小寺はるか】