理学系研究科 助教
第112回
7月のUTalkでは、古生代から中生代の地層について研究している高橋聡さん(理学系研究科 助教)をゲストにお招きします。恐竜の絶滅よりさらに昔の約2億5千万年前、生物種の9割が絶滅したという史上最大の大量絶滅が起こりました。その原因は何だったのでしょうか。地層や化石を手がかりに当時の世界を研究している高橋さんと一緒に、太古の謎に迫ってみたいと思います。
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人類が誕生する遥か昔の地球、そしてそこに存在していた大小様々な生き物たち。どんな風に生息していたんだろう?どんな地球の生態だったのだろう?そんな世界への想像は、いつだって私たちの心をつかんでやみません。
7月のUTalkでは、古生代から中生代の地層について研究をされている高橋聡(理学系研究科 助教)をゲストにお招きし、化石や地層を手がかりに2億5千万年前に起こった大量絶滅を中心にお話をお伺いしました。
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今回のUTalkは、高橋聡さん(理学系研究所 助教)をお迎えして行われました。
高橋さんは古生代から中生代の地層について研究されています。化石や地層を手がかりに2億5千万年前に起こった大量絶滅についてお話をお伺いし、太古の謎についてみなさんと思いを巡らせる時間となりました。
この日、テーブルには高橋さんが持ってきてくださった化石やレプリカが用意されていました。会の前半では、参加者のみなさまと化石を手に取りながら、何の化石かをみんなで当てていきました。たとえば、スピノサウルスの歯や、アンモナイト、オウム貝、三葉虫といった有名どころのものから、上級者編としては、カンブリア紀から現在まで生息している放散虫の化石など。また、ルーペや顕微鏡も用意していただき、背骨をもった私たちの祖先に近いともいわれるコノドント動物といわれる動物についても覗いていきました。
大量絶滅といえば、恐竜やアンモナイトの絶滅ですが、この背景には、ユカタン半島に隕石が落ちたということが定説になっていることで有名です。しかし、それより遥か昔、2億5千万年前に地球史上最大の大量絶滅が発生していたといいます。このときの絶滅では、生物の9割が地球上から姿を消していました。高橋さんは、この古生代から中生代の間で起きていた大量絶滅の背景を探っていく研究をされています。
2億5千万年前のペルム紀末は地球にはパンゲア大陸があり、それが移動、分裂を行い現在の大陸のかたちになっています。地層の研究は、主に中国やヨーロッパなどで、当時の陸地に近い浅い海の地層が調査されていました。しかし、地球の7割は海であることを考えると、当時の海の様子も調査していく必要があります。実はわたしたちの住む日本は、当時海であった海底の堆積物で形成されているため、日本の地質をみていくと、当時の海洋の様子がわかるというのです。
当時大学院生だった高橋さんが、岩手県の地層で大量絶滅次の深海の地層を調査していると、ちょうどその時代の地層がみつかったといいます。そして、その地質を調べていくことで、大量絶滅が起きていた時代の様子がわかってきたそうです。そうして分かったのは、その時代は猛毒である硫化水素が大量に存在していて、なんと海に酸素がない状態であった可能性があるということ。衝撃的で、今の地球からは想像ができません。酸素がないから9割というほとんどの生物が絶滅してしまっていたのです。実は、現在のアメリカの五大湖では、この状態に類似した酸素が少ない状況になっているそうで、ヘドロがたまっているそうです。このまま温暖化が進むと何か類似現象が発生する可能性があるかもしれません。
最後に、参加者からなぜこの研究に取り組んでいるのかという質問がありました。高橋さんは、小さい頃から恐竜化石少年だったそう。大学で、日本では大きな化石はみられないと言われたそうですが、だったら日本ならではの研究をしようということで日本の地層の研究をしていて大量絶滅の地層の発見につながったといいます。現在では、海外で大きなアンモナイトや恐竜の化石に触れられる機会も多いそうで、小さい頃の夢に立ち戻ってこれているということでした。
この日、参加者のなかには化石が好きな少年も来てくれていました。大人の参加者のみなさまも、恐竜や化石を目の前に、童心にかえりワクワクを共有できた暖かい時間となっていたように感じました。高橋さん、参加者のみなさん、ありがとうございました。
[アシスタント:青木翔子]