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村松真理子

総合文化研究科 地域文化研究専攻 教授

ダンヌンツィオとは誰だったのか?

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概要

村松真理子さん(総合文化研究科 地域文化研究専攻 教授)のご専門はイタリア文学で、特に中世の文学や20世紀前半に活躍したイタリアの国民的詩人、ダンヌンツィオの研究をされています。情熱的な言葉で人々に直接訴えかけるダンヌンツィオの詩やテクストは、20世紀前半のイタリアだけでなく、漱石や鴎外など日本の知識人に愛読され、白樺派の有島生馬や三島由紀夫にも影響を与えたと言われています。「作家」の範疇を超えた政治的行動でも知られ、壮大な「終の住処」を死後は国の博物館にさせたダンヌンツィオの波乱万丈な人生と、彼の美しいテクストに触れてみませんか。

 2017年6月のUTalkは、ダンテと並んでイタリアの二大作家と賞賛されている世界的流行作家・ダンヌンツィオ(1863-1938)についての研究をなさっておられる総合文化研究科・地域文化研究専攻の村松真理子さんにお越しいただきました。若い頃に日本趣味を持っており(皿や漆器を所持していたとのこと)、イタリア人にすら知られていないダンヌンツィオの姿を提示すべく、あらゆる活動を行って来られました。例えば、2016年に駒場博物館で開かれた「ダンヌンツィオとはだれだったのか?」展があります。村松さんは、あらゆる展示物について興味深いお話をしてくださいました。

 その中でも心惹かれたのは、北イタリアにあるガルダ湖畔の保養地、ガルドーネ・リヴィエーラにあるヴィラ(上流階級のカントリー・ハウス)です。その1つ、「ヴィットリアーレ」にあるのは、美しい庭園畑と大理石の建造物。実はこれはお墓で、眠っているのはダンヌンツィオ本人です。彼の周りに取り囲むように置かれている東西南北の石の箱には、彼の友人の名前が刻まれているのだそうです。このエピソードは彼の多才さを示す1つの例ですが、彼は他にも様々な活動をしていました。例えば、広告作り、映画のキャプション作り、演説のレトリックとスタイルの提示などです。村松さんは彼を「20世紀のダンテ」と形容します。

 また、ダンヌンツィオは日本趣味の持ち主である一方で,日本人に影響を与えた存在でもあります。森鴎外が戯曲を「秋夕夢」というタイトルで訳したり、森田草平に至っては『死の勝利』を訳した上心中未遂事件まで起こしたりしたそうです(真似はしたくないですが、人の心にそのように深く射し込んでくるものが遺されているというのは凄いことだと感じます...ちなみにその相手はあの平塚らいてうだったそう)。その『死の勝利』がどのような話なのか、そのあらすじを『東京大学駒場博物館特別展示 ダンヌンツィオに夢中だった頃--ガブリエーレ・ダンヌンツィオ(1863-1938)生誕150周年記念展』から引用したいと思います。

【あらすじ】ジョルジョ・アウリスパとイッポーリタ・サンツィオの恋愛は危機的な状況にあった。二人は二周年を記念して、ローマ近郊の町アルバーノへ旅行する。行きの電車内で、二人は情欲に身を委ねる。旅館で二人は、イッポーリタが保管していたジョルジョの手紙を一緒に読む。旅行の後、イッポーリタは姉に呼ばれてミラノへ行き、ジョルジョは母に呼ばれてアブルッツォ州グアルディアグレーレの実家に戻る。堕落した父、やつれた母、心の通わない弟などに囲まれ、ジョルジョは自殺を考える。イッポーリタがアブルッツォに来ることになり、ジョルジョは海沿いのサン・ヴィートに隠れ家を見付ける。田舎の素朴な暮らしの中で、二人の愛は再生するかと思われた。しかし、やはりジョルジョには、恋人を快楽と破滅の道具として見ることしかできない。二人は田舎の貧困と迷信の凄惨な光景を目のあたりにする。ある夜、ジョルジョは恋人を散歩に誘い、海の断崖へ連れて行く。嫌がる女を男は掴み、縺れ合ったまま二人は死の中に墜落する。

なんとも壮絶な恋愛...。でも、羨ましいような。現実には起こらないであろう物語を追体験できるのが美術・文学の最大の長所ではないでしょうか。皆さんもこれを機に、ダンヌンツィオに限らず、あらゆる芸術に触れるチャンスを持ってみてはいかがでしょうか。村松さん、今回は素敵なお話をしてくださりありがとうございました。

【アシスタント:小寺はるか】

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