UTalk / 都市でキャンプをしてみると

中島伸

工学系研究科都市工学専攻

第108回

都市でキャンプをしてみると

中島伸さん(工学系研究科 都市工学専攻 助教)は都市デザインやまちづくりについて研究されています。課題解決型プロジェクトだけでは限界があると感じていた中島さんが3年前から実施している「アーバンキャンプ」は、都会の真ん中でただキャンプをするというもの。あえて目的を持たないことで、参加者たちが自主的につながり、様々な動きが生まれていったそう。キャンプができるかどうかが、よい都市の指標になったらいいと語る中島さんと、これからの都市について考えてみませんか。土曜日のカフェでのひととき、みなさまのご参加をお待ちしております。

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3月のUTalkは、工学系研究科都市工学専攻の中島伸さんにお越しいただきました。中島さんは普段都市計画や歴史について研究されており、今回は「アーバンキャンプ」という都会でキャンプをする実践プロジェクトについてお話していただきました。その日はちょうどアーバンキャンプの開催日で、キャンプ会場がUTalkカフェから近かったため、キャンプ会場に立ち寄った後に参加された方もいらっしゃいました。

アーバンキャンプの目的は「ただ都市の真ん中でキャンプがしたい」というシンプルなものです。まず、たくさんの写真とともにキャンプの様子を紹介していただきました。花束をつくって渡している人や、コタツに入っている人の写真は「マイパブリック屋台」という取り組みの様子です。花やお茶などをふるまい、それを受け取った人とのコミュニケーションを楽しむのが醍醐味で、ちょっとしたものを分け合い、コミュニケーションをとって、テンションがあがる様子を「ふるまいハイ」と呼んでいるそうです。この「ふるまう」という行為は通常のサバイバル能力とは別に、災害後の避難所なので必要になる、互いに声を掛け合って助け合える社会的なサバイブ能力を楽しく身につけることにもつながるのではないか、と中島さんはおっしゃっていました。

また、普通のキャンプでは、一緒に来たメンバーと話すだけで終わってしまいがちですが、都会でキャンプするという特殊な状況が加わることで、参加者同士で勝手に仲良くなってしまうのだそうです。さらに、都市であることを十分に生かしてキャンプ用品を宅急便で送ったり、カフェに行ったり、銭湯に行ったりして、その都市にあるお店などの環境資源の新しい使い方を発見するきっかけにもなります。

アーバンキャンプの価値は、キャンプを通じて参加者同士やふるまった相手とのコミュニティーをつくり、開催都市で生活することの魅力を新たに発見したり、そこにある環境資源を利用したりすることで、参加者と街の人々が「都市に生きる能動性」を実現することにあるそうです。アーバンキャンプを行える都市は「創造性・寛容性・感応性」という三つの特徴をもっている必要性があります。新しい取り組みに積極的で、普段その都市に住んでいない人がキャンプをすることを許容できるという特徴は、都市そのものをよりよく変えていくために必要な下地であり、アーバンキャンプができる都市はよい都市であるという指標にすることができるのではないかと中島さんはおっしゃっていました。

UTalk参加者の方からは「どんな人が参加するのか」という質問がありました。普段山でキャンプをし慣れている人から、キャンプ自体が始めてで、テントの建て方を知らない人まで老若男女が参加しているそうです。多様な人が集まってできないことは助け合いつつ、一方で自分たちがくつろげる仕切られた空間を上手に作っている人もいて、運営している中島さん達もキャンプ場での多様な空間の使い方を見て楽しんでいるとおっしゃっていました。

アーバンキャンプは今後も開催されていく予定で、東京以外の都市での開催も検討されているそうです。あえて堅苦しい目的は持たず、ただキャンプを楽しむ・・・しかし思いがけない人とのつながり、都市にある資源の新たな可能性、普段の生活とは異なる視点を得ることができるアーバンキャンプ、ぜひ参加してみたいと思いました。アーバンキャンプの様子について写真を用いて具体的なエピソードを生き生きと話してくださった中島さん、まだ肌寒さの残るなかご参加いただき、積極的な議論で場を暖めてくださった参加者の皆さま、ありがとうございました。

[アシスタント:加藤郁佳]