総合文化研究科 助教
第107回
今や世界の人々を魅了している折り紙。一枚から出来ているとは思えない複雑な造形作品や、宇宙開発に折り紙が応用されていることでも話題を呼んでいます。もし欲しい形を作るための折りのパターンを計算できたら?折りたたんで展開すると、柔らかくも堅くもなる構造がデザインできたら?2月のUTalkでは、舘知宏さん(大学院総合文化研究科 助教)のお話を伺いながら、様々な折り紙構造に触れてみましょう。 みなさまのご参加をお待ちしております。
2017年2月のUTalkは、大学院総合文化研究科助教の舘知宏さんにお越しいただきました。舘さんはコンピューターを使いながら折り紙のデザインや応用方法について研究されています。
折り紙には他のものにはない特徴があります。それは、変形するとはいえ、アメーバ・スポンジのようにどんな形にも変形するのではなく、変形する部分もあれば変形しない部分もある、というように変形していくことです。変形する部分と変形しない部分をうまく組み合わせるのが折り紙なのです。そしてそもそも紙の性質については次のように言えます。紙は伸びたり縮んだりせず、無理に縮めようとするとシワがよって縮んだような形になります。このシワこそが折り目なのです。紙ではなく金属であったらこのような性質は見られません。紙ではなく金属であっても、十分に薄いと同じような性質が得られます。
例えば紙を曲げようとすると、紙はアーチ上になるので、曲げた方向にしか曲がりません。球の表面のように曲がったりなどしません。しかし折り紙にして、「シワ」をうまく利用することで、球の表面のような形を作ることもできます。このように、欲しい曲面がある時、どのように折り目を付けたらいいかを舘さんは研究なさっています。研究にはコンピューターのソフトを使われていて、折り紙の展開図を作るのはソフトを使って短時間でできるそうです。その後カッティングマシーンを使って紙に折り線を入れ、その後手作業で折っていくそうです。一体のウサギの形になった折り紙を当日持ってきてくださっていましたが、それを折るのにはなんと10時間もかかったそうです(!)。今後の展望としては、手作業で折るのではなく、材料が勝手に折れていくような仕組みを作れるのではないかと考えているようです。これは「セルフホールディングフォールディング」と言える仕組みです。突飛なアイデアのように思えるかもしれませんが、新しい考え方でもありません。というのも、生命が形作られる時、その材料自体に将来の形の情報がつまっていて、誰に操作されるでもなく勝手に形が作られていきます。折り紙も同様に、材料に情報を入れることで、電子レンジにいれたら勝手に形ができていく、というようなことができないか舘さんは考えておられます。
折り紙を応用することにも可能性はあるそうです。例えば紙ではなくパネルを折っていくことで、仮設の建築物などを作ることができるかもしれません。このような変形機構を持つ折り紙を剛体折紙と呼んでいます。難しい点もあって、例えば折り紙は自由に変形できず互いに拘束しあうため、実際折りあげられるのか折りあげられないのかというのは計算理論から見ても難しい問題で、折り紙で作りうる剛体折紙となりうるパターン形の全体像がまだ掴めていないことです。また、折りたたむことができるものはシートそのものは折り目がついているため柔らかいという性質があり、それが建築物に不向きな場合があるということです。この解決策としてはまず、ダンボールのように、柔らかい内部の外側にかたい板をつけることで折って作った立体構造を二枚の板の間にはさんで強化することが考えられます。他にも、折り紙の構造を工夫して組み合わせるすることで変形できるのに強い立体を作ることができるそうです。舘さんが実際に見せてくださった折り紙には、折りたたまれていた紙を展開し一部を固定すると、全体が固まって強くなる折り紙や、ある方向からの圧力からには弱いが別の方向からの圧力には強い、というような折り紙がありました。
このような舘さんのお話を受けて、参加者の方からは、「折り紙を折るのに限界はあるのか」という質問をいただきました。この質問に対し舘さんは、「折り紙は厚くなってくると折りに限界がでてくる。強くするには厚くしたいが、そのために折りにくくなるというトレードオフ関係があり難しい」という回答をいただきました。
舘さんは沢山の不思議で美しい折り紙を実際にお見せくださり、参加者の方々と共に見入ってしまいました。折り紙の応用の話も伺い、折り紙の構造が今後様々なもののデザインに使われていくのではないかと胸が高鳴りました。舘さん、参加者の皆様、ありがとうございました。
〔アシスタント:東秋帆〕