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安藤規泰

先端科学技術研究センター 特任講師

「昆虫ロボット」に何を期待しますか?

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概要

11月のUTalkは、神経行動学の観点から昆虫の行動について研究されている安藤規泰さん(先端科学技術研究センター 特任講師)をお迎えします。子どもの頃にカイコを育てた経験がある方は多いかもしれませんが、成虫の雄カイコが雌のにおいに反応して特定の動きをすることをご存知でしょうか?ロボットさえも動かすことができる昆虫の体の不思議を探っていきましょう。 みなさまのご参加をお待ちしております。

2016年11月のUTalkは、先端科学技術センター特任講師の安藤規泰さんにお越しいただきました。安藤さんは神経行動学の知見を用い、昆虫の動きを生かしたロボットを作る研究をされています。

安藤さんの元々の興味の出発点は生物学で、特に生き物の動きの美しさに惹かれていたそうです。生き物は生き物らしく動くが、一方ロボットはロボットらしく動く。生き物らしい動きをどうやってロボットに再現させられるか、ということに興味を持ち現在の研究を始められました。現在の研究室で扱っているテーマは、「匂いの探し方」だそうです。

匂いの発生源を探すことは難しいことだそうです。というのも、匂いは光のように直進はせず、距離が遠くなるほどまばらになっていくからです。実際人間も匂いの検知は警察犬など他の生物に頼る場合があります。しかし生物にとっては匂いを探すことは非常に重要な能力です。異性の個体を探す、エサを探す、巣を探す、など色々な場面で使われます。そこで安藤さんは、生き物が匂いを探すメカニズムを調べることで匂いを探すロボットが作れないかと研究を行っています。

この研究に主に使っている生き物はカイコガという昆虫です。昆虫を使っているのは、昆虫は小さくて扱いやすく、また太古からずっと形態が変わらない古くたくましい生き物であるからだそうです。特にカイコガはガの姿になると何も食べず、飛ばずにじっとしているシンプルな生き物なので扱いやすいのです。ほとんど動かないカイコガですが、実はオスのカイコガはメスが近づくとフェロモンに反応して突然羽ばたく動作を見せます。そして羽ばたきながら交尾をするためにメスを探します。この時のカイコガの動作は、匂いから離れている時にはグルグル回転をしながらメスに近づいていき、最後すぐそばまで近づくと直進していきます。

このようなカイコガの動きを再現するのはなかなか難しそうな気がしますが、実はカイコガの動きは非常にシンプルにプログラムされているそう。カイコは①匂いを感じると直進する、②匂いがなくなるとジクザグに動いたり回転する、という法則で動いているのです。発生源から遠い場所では、匂いがまばらに存在しているので基本グルグル回転をして、時折匂いにぶつかったら少し直進する、という具合で匂いに近づきます。そして匂いの発生源に近くなってくると、連続的に匂いにぶつかるので匂いの方向にただ直進していくことになるのです。このようにまるでマシンのような仕組みでカイコガは匂いを探しているのです。

このようにカイコガの匂いの探し方は意外とシンプルなメカニズムでした。そのため、将来昆虫の動きを使った実用的な昆虫ロボットを作ることができる可能性も見えてきます。ところが、まだ昆虫の動きの仕組みが十分解明されていないことから実現が難しいのが現状だそうです。そこで安藤さんたちが作ったのはなんと昆虫が操作するロボット、「昆虫操作型ロボット」。ロボットの中の操縦席に昆虫が乗り、足元のボールの上を歩くことで、その情報を元にロボット自身も同じように動くことができる仕組みを持っています。このロボットを作る大きな意味は、将来実現しうるロボットの姿が見えて来る点だそうです。まずは昆虫操作型ロボットの性能を詳しく調べることで、将来の完璧なロボットができる動作の内容をある程度推し量ることができるのだそうです。また、さらに昆虫操作型ロボットの条件をいじって実験をすることで、生物学的な事柄についても知ることができるのだそうです。このように生き物とロボットを両方扱って比較を行うことによって、「生き物らしさ」を作ることを安藤さんは追求しています。

こうしたお話を受けて、参加者の方から「昆虫でも学習するのか」という質問をいただきました。安藤さんのお答えは、昆虫もヒトの学習を司る脳の領域である海馬に相当する領域を脳内に持っていて、学習することができるとのことでした。例えばミツバチは巣から餌場までの距離や方向を覚え、それを独特な体の動き(8の字ダンス)で仲間に教えることができるそうです。それは人間が何かものを覚えてコミュニケーションを取るのと似たことをしていると言えます。

安藤さんはお話中に実際に生きているカイコガ、カイコガのフェロモン、ロボットなどを見せてくださいました。実際にカイコガの動きを見ることができて生物の動きの面白さを体感することができました。また「昆虫操作型ロボット」のアイデアの斬新さにも驚きましたが、今までよく見えていなかった生物と機械の関係について思いを巡らす非常に面白い体験をすることができました。

〔アシスタント:東秋帆〕

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