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沼田宗純

生産技術研究所 講師

中小市町村の防災システムを考える

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概要

4月のUTalkは、防災を通じてよりよい社会の実現に向かうための工学研究をされている沼田宗純さん(生産技術研究所 講師)をお迎えします。災害時には市町村の行政が災害対応の第一線で活動しますが、中小市町村では初めての経験となる場合が多く、効果的な対応が困難です。また、事前に各種の防災システムが整備されていますが、市町村のモチベーション、財政、知識などにより整備状況にも差があります。今後の人口減少、財政悪化などの状況下で大規模災害に対応するためのあるべき防災システムを考えます。 みなさまのご参加をお待ちしております。

2016年4月9日のUTalkは、沼田宗純さん(生産技術研究所 講師)をお迎えして行われました。沼田さんは防災プロセス工学として、防災に関してソフトとハードの両面から研究されています。実際に開発されている防災システムを中心にお話を伺いました。

2011年3月、忘れられない出来事である東日本大震災がありました。震災の後、沼田さんは、震災の際の避難所の動き方について調査されました。災害時は、一般の私たちはもちろんのこと、行政もメディアも混乱してしまいます。そんなパニックのなか、避難所運営や支援において次になにをするべきか?を的確に判断するために一番重要なことは、情報収集だそうです。

災害時は、各地域の避難所から市役所へとデータが集約され、行政の判断がくだされます。しかし、現在はその情報収集がうまく機能していないと沼田さんは指摘します。そこで、沼田さんたちの研究チームでは、避難している人の把握や情報収集の一元化を行うことのできるCOCOA(ココア)と呼ばれる避難所情報管理システムを開発し、石巻市の総合防災訓練で実証実験を行いました。

お話を伺っていて驚いたのは、現在はこのような情報管理システムは、自治体ごとに開発・運営することが法律で定められているということ。つまり、国単位で統一された情報管理システムがあるわけではなく、各自治体がそれぞれに独自のシステムや方法で災害時の情報収集を行い、対応を行っているのだそうです。沼田さんは、ココアを日本の標準的なシステムにして小さな自治体でも使えるようにし、避難所運営を効率化したいとおっしゃっていました。

ココアの実用化に向けて、参加者の方から、石巻市での実験で評価されたところは具体的にどのようなところかという質問がありました。実は、沼田さんはこのココア以外にも、BOSSという災害時の業務オペレーションシステムも開発されているそうです。そちらは、地震などの災害発生時に被害をシミュレーションし、どのような被害がどの程度でるか?を予測し、必要な対応(作業の詳細や仕事量)を割り出すシステムだそうです。このような具体的な対応策は、東日本大震災の際の調査からつくられたそうです。実験では、このBOSSと実際の状況を把握するココアをセットで使うことで評価されたそうです。

その後も、実際に国でこのようなシステムを普及させるためにはどうすべきか?について、参加者のみなさんも交え議論が続きました。自然災害の多い日本において、災害に備えて進めるべき課題はたくさんあります。「起きた後にはお金をかけるが、"予防"にお金をかけない」という沼田さんのお話から、自分もちゃんと日頃から防災について意識・準備ができているかどうか、改めて考えなおさねばならないと感じました。沼田さん、参加者のみなさま、ありがとうございました。

[アシスタント:青木翔子]

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