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東馬哲雄

理学系研究科附属植物園 助教

植物の多様性を知る

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概要

見た目では同じ種と考えられていた植物が、DNAを調べることで思いがけないような多様な進化をとげてきたとわかることがある。4月のUTalkでは、植物の多様性をフィールドワーク、植物園での栽培、そしてDNA分析を通して研究している東馬哲雄さん(理学系研究科附属植物園助教)をお迎えしました。芽吹きの季節、植物の多様性について考えました。

2015年4月のUTalkは、理学系研究科附属植物園・助教授の東馬哲雄さんをお招きしました。東馬さんには、植物園と、植物多様性に関するご自身の研究についてお話をいただきました。

東馬さんが所属されている理学系研究科附属植物園は、一般的に小石川植物園として知られている施設です。ここは、もともと徳川幕府の御薬園で、明治10年に東京大学の施設となりました。平成24年には国の名勝および史跡に指定されています。園内には、裸子植物にも精子があることを発見した記念のイチョウや、学名発表に必要なタイプ標本を提供したソメイヨシノをはじめ、多くの植物が育っています。

まず植物園の紹介をされたのち、東馬さんは植物多様性とは何か、というお話をされました。例えば、生物多様性といったとき、それは地球に「たくさん」生物がいることを指しています。この「たくさん」ということは、種の多さを表していることもあれば、種内の遺伝的な多様さ、あるいは生態系の多様さを指していることもあります。植物の場合、フロラという言葉が、ある地域にどのような植物がいるのかということを表しています。西洋の博物学や日本の本草学をはじめ、分類学、系統学、進化生物学と、歴史的に人間は、生活や研究のなかで、フロラの多様性を認識してきました。そして現在では、DNAによってさらなる探求が可能になっています。東馬さんの研究は、まさにその最前線にあります。
日本は植物の多様性が豊かで、ホットスポットなのだそうです。その研究は、フィールドワークによって多様な植物に出会い、標本を採取し、DNAを調べることで進められます。東馬さんのフィールドワークは、日本だけでなく中国や台湾にも及ぶそうです。そうすることで、「日華植物区系」という広い範囲における種の分化が見えてくるといいます。それは、アオキという植物のDNAを分析することで、日本のアオキがかつて中国のアオキと交雑したことが明らになってきたそうです。このことは、アオキの目に見える形を観察・分類しただけでは分からないことです。また、日本のウマノスズクサの研究でも、形を見ただけではわからない雑種の存在が明らかになり、各地域における分布の様子とその歴史的な変化が、より詳細にわかるようになったそうです。

地域における植物の分布に関して、参加者の方から「分布の境界には何があるのか」という質問が出ました。これに対して東馬さんは、「境界に何かがあるわけではないと思っている」とお答えになりました。もちろん山のような物理的に遮断するものがある場合もあるけれど、多くの場合、物理的境界があるとは限らないそうです。むしろ、最終氷期に暖かい場所を求めて散り散りになった分布が、気候が暖かくなりそれぞれ拡大してゆき、今の地点で「たまたま」出会ったところが境界となっているのではないか、と。「たまたま」という答えは、研究としては良くないかもしれないけれど、現実はそうなっているようだというのが、東馬さんのお答えでした。

東馬さんのお話をうかがい、身近なところにある植物の来歴が気になってきました。植物園にもぜひ行ってみようと思います。東馬さん、参加者のみなさま、今回もどうもありがとうございました。

[アシスタント:杉山昂平]

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