UTalk Report

横張真

工学系研究科・教授

都市の自然を問いなおす

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概要

横張真さん(工学研究科・教授)は都市の中の生物多様性や農というテーマで研究をされています。100年前とは比べものにならない程、生活環境も気温も変化した東京の街。大手町の里山や都心の公開空地などの例をご紹介いただきながら、様変わりした社会や環境に対する新たな緑のあり方を考えました。

今月のUTalkは、横張真さん(工学研究科・教授)をお招きしました。横張さんは、都市の中の生物多様性や農について研究されています。都市のなかで、自然はどのような姿をしているのか、どのようにあることができるのか、お話いただきました。

現在は工学研究科に所属している横張さんは、もともと農学を専攻されていました。都市の中の自然という、農学と都市工学の2つの領域またがるテーマは、難しいものである反面、自分のような経歴の者にしかできない面白さがあると言います。

都市の自然を考えるに当たって、「在来種」をどう捉えるのかという問題があります。一般的には、在来種とはその地域に「自然に」分布する種のことで、いま人間が一切の干渉をやめた場合にどんな植生が育まれるのか、という観点から判断されます。しかし、人間の干渉がたとえなくなったとしても、気候変動や立地の改変によって植生は変化し続けていきます。そのようなときに、「かつての在来種」を「自然な」種と考えることはできるでしょうか。横張さんは、現在の都市の気候や立地に、外来種や園芸品種の方が適合している可能性を挙げながら、「在来種」の概念を相対化することを説きます。

現状において、都市の自然はどのような構成になっているのでしょうか。東京では、レッドデータブックに記載された希少種のうち、公園緑地が扶養しうる種が全体の31%を占め、二次林が55.6%、自然林が13.4%となっています。このうち、人が快適だと感じるのは公園緑地と二次林だといいます。この点に注目すると、二次林は、人の快適さと生物多様性の良いバランスをとるものとして、都市の自然において注目に値する存在だと言えます。
そこで横張さんは、公園緑地に二次林的要素を加えたり、残存する二次林を保存したりすることを提案します。例えば、「大手町の森」のように、プレフォレストという手法によって、ビルの足元に里山の自然を「コピー&ペースト」するもの、名古屋市条例のように、都心の開発業者が里山保全に貢献できるようなシステムを構築するもの、といった事例があります。海外に目をむければ、カナダでは埋立地が港にならずほうっておれたうちに植生が回復し、野鳥のコロニーが生まれた事例や、ドイツの製鉄所跡地が当時の姿を残したまま公園となっている「産業自然」の例、ニューヨークの高架鉄道跡地が放置される間に雑草がのび、公園となった例などがあります。横張さんはこうした事例に注目しながら、新しい発想をもって、都市・東京の自然を考えようとおっしゃいました。

参加者の方からは、「大手町の森」に関して質問が挙がりました。「大手町の森」はほうっておくことはできるのかという質問には、横張さんからはやはり手入れが必要という答えが。しかも大手町の森は皇居に近いため条件が良いが、ほかの地域だとそうはいかないだろうともおっしゃっていました。また、自然の「コピー&ペースト」は問題かもしれない、という話題もありました。都市の緑に「自然種」を使いなさいという勧告があっても、造園業者の中ではあまり出回っていないため、里山から伐採してくるということになってしまう。都市の自然のために、里山の自然を損なってしまうことの是非は今後の議論が必要そうです。

今回のUTalkは、会の終了後も多くの参加者の方が質問をされていて、とても話が盛り上がっていました。身近にある植物の見方が変わっていくお話に引き込まれた方も多かったことでしょう。横張さん、参加者のみなさま、ありがとうございました。

[アシスタント:杉山昂平]

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