UTalk Report

小林彰子

農学生命科学研究科・准教授

ポリフェノールの効き方

U-Talk Report U-Talk Report

概要

なんだか身体によさそうな気がする機能性食品ポリフェノール。お腹の中でどう取り込まれ、人の身体にどう働きかけているのでしょうか。10月のUTalkでは、環境と食の新しい研究分野を拓く小林彰子さん(農学生命科学研究科・准教授)をゲストにお迎えし、栄養・食品成分と身体との関わりについて考えます。

2014年10月11日のUTalkは小林彰子さん(ご所属:農学生命科学研究科)をお招きして行われました。

小林さんは、ポリフェノールについての研究をされています。ポリフェノールといえば、私達はなんとなく身体に良い物質としてのイメージを持っているかもしれません。小林さんはまず、ポリフェノールがなぜ注目されてきたのかについて紹介しました。1990年頃にいわゆる「フレンチ・パラドクス」が話題になりました。このパラドクスは、フランス人が脂肪分の多い食べ物を食べているのに、動脈硬化などの病気の発生率が低くなっているというものです。この現象を説明するために注目されたのが、赤ワインです。赤ワインを飲んでいるからフランス人はそれらの病気にかかりにくいとされました。この赤ワインに含まれるのがポリフェノールの一種であるレスベラトロールでした。続いて、このレスベラトロールが長寿と関係があるとの結果が、Nature誌に発表され、ポリフェノールへの注目はますます高まりました。ただ、「なぜポリフェノールが健康・長寿につながるのか」あるいは「本当につながっているのか」についてはこれまで多くの研究者が研究していますが、その因果関係はよくわかっていないそうです。

小林さんの研究テーマは、ポリフェノールの腸管への作用です。多くの研究者はポリフェノールの直接的な作用をみるために、肝臓や、脂肪細胞や、筋肉などへの作用について研究をしてきましたが、小林さんは食事から摂取したポリフェノールが腸管に多く到達することに着目し、腸管への作用を調べています。その中で小林さんが行った実験に、コレステロールの腸管吸収阻害取り込み実験があります。この実験は、34種類の異なるポリフェノールを投与した細胞の中で、どのポリフェノールを投与すると小腸におけるコレステロールの吸収を大きく阻害できるかを明らかにした実験です。その結果、ケルセチン・ルテオリンという2種のポリフェノールが最もよく吸収を阻害することがわかったそうです。この結果を受けて、この2種類のポリフェノールをラットなどの動物に投与し、実際の食事での効果について研究を進めているとのことです。

小林さんは、ポリフェノールの実験結果の実用化は簡単にはいかないと言います。小林さんが実験結果を公表した際には、いくつかのマスメディアからの取材があったそうですが、マスメディアは応用化の時期を早めに見積もって報道しているように感じるそうです。実際に効果が認められた最初の実験から実用化に至るまでには、多くのハードルがあり、なかなかすぐには実用化の段階にはならないとか。そのことを多くの人に理解してもらいたいそうです。

ポリフェノールの他に、小林さんはアルツハイマーに関する研究にも取り組んでいます。小林さんと共同研究している金沢大学の研究グループが、ある地域の住民の食事を調査し、アルツハイマーになりにくい人ほど普段緑茶を飲んでいることがわかったそうです。しかし、だからといって緑茶を飲めばアルツハイマーになりにくいのか、という結論にはならないそうです。なぜなら、普段から緑茶を飲んでいる人がどういう人たちなのかがよくわからなければ、本当に緑茶が効果を持つのかどうかはわからないからです。今後は、長期的な調査を行うことによって、効果のほどを検証していく予定とのことです。

参加者の方からは、フレンチ・パラドクスはそもそも怪しいのではないのか、という質問が出ました。つまり、フランス人がワインを飲むから動脈硬化になりにくいという前提自体が怪しいのではないか、というものです。これに対して小林さんは、その後のアメリカの長期間にわたる実験では、ワインのレスベラトロールは動脈硬化に影響を与えないという結果が出ていることを紹介し、質問者の方が言うように赤ワインが健康に良いという前提も一部疑問視されてきていると答えていました。

何が健康に良くて、何を食べたり飲んだりすればよいのか、ということは誰しもが一度は考えることかと思います。ただ、健康に良いからといって、食べ過ぎると健康に良くないことは往々にしてあるもの。小林さんはとにかく、食事の際には多くの食品を取り入れ、バランスよく何でも食べることが結局は良いのではないかと言っていました。グラフや図を交えながら視覚的にもわかりやすく説明をして下さった小林さん、率直な質問をぶつけて下さった参加者の皆様、ありがとうございました。

[アシスタント:中野啓太]

Report

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008

Copyright (C) The University of Tokyo. All Rights Reserved.
The University Tokyo