UTalk Report

関岡裕之

総合研究博物館 特任准教授

ミュージアム・デザイン

東大博物館の表現

概要

東京大学に収蔵されてきた学術資料を新たな視点でみせてくれる「インターメディアテク」。展示デザインを手がけた関岡裕之さん(総合研究博物館 特任准教授)に展示開発についてお話をきき、ミュージアムの空間づくりについて考えます。

2014年5月10日のUTalkは、関岡裕之さん(ご所属:総合研究博物館)をお迎えして行われました。
関岡さんは、東京駅にあるJPタワー内インターメディアテク(IMT)で研究をされています。

お話はIMT設立の経緯から始まりました。IMTで展示しているのは、東京大学に所蔵されている学術標本です。大学で捨てられそうになっていた学術標本を集めて、展示しているそうです。学術標本は明治期から使われているようなものもあり、それぞれの標本がたどってきた固有のヒストリーがあります。しかし、IMTではあえてその歴史を知識として積極的に提示するのではなく、新しいデザインとして人々の感性に訴えかけることを重視しているのだと関岡さんは言います。IMTは、従来のミュージアムとは全く違う意図で展示に取り組もうとしてできたミュージアムなのだそうです。

関岡さんは展示をどのようにして美的にみせるのかというテーマで研究されており、IMTでは空間デザインを意識して展示を行っているとのこと。では、空間デザインによって感性に訴えかける展示とはどのようなものなのでしょうか。関岡さんはキャプションの話を例に出しました。多くのミュージアムでは、展示物のそばにはその展示の背景や歴史を伝えるキャプションがついています。しかし、IMTでは、キャプションはつけているものの、文字も小さく情報も少なくしているそうです。キャプションをみるとその展示物についての知識を得ることができますが、その展示物が記憶に残るかというとあいまいなものです。IMTでは感性で感じ取って展示物を記憶に残してほしいという意図から、あえてそのようなキャプションをつけているそうです。

実際にIMTに行った参加者からの方からは、キャプションが作品の反対側についていてわかりづらかったが、意図的なものなのかという質問が出ました。関岡さんによれば、キャプションをつける時には天井の高さや周囲のスペースを360°みて、どの位置につけるのが最も空間としてよいのかを検討するそうです。まさに空間に関するデザインですね。

関岡さんがデザインをするにあたっての考え方の一つに「リデザイン」というものがあるそうです。昨今の美術館や博物館の改築や改装には多額の費用をかけていることもあります。しかし、そういうスクラップ&ビルドの発想ではなく、既にあるものを利用してデザインしていく、その営みが「リデザイン」であるそうです。実はリデザインの発想で、あるものを活かしてデザインしていく場合でも費用は大規模なリニューアルする場合とあまり変わらないこともあるそうです。それでも、既にあるものを活かし、資源を再利用していくことが本質的な文化のあり方に近いのではないかと関岡さんは問いかけました。

先述のように学術標本を展示しているIMTですが、参加者からはどのような基準で展示物を選んでいるのかという質問が出ました。それに対して関岡さんは、誰もが美しいと評価しなかったものを展示していると答えました。そんな「美」とは無縁であった資料を空間を含めてデザインすることで、歴史を知らなくてもなぜか美しいと体感することができる、関岡さんはそんな展示をしたいと考えていて、それがIMTのテーマの1つにもなっているそうです。

IMTに訪れた人の中には「ここに来るとなぜかほっとする」「ノスタルジーを感じる」といったような感想を持つ人がいるそうです。関岡さんは今後の研究の展望として、展示をみてほっとしたりノスタルジーの感情を持ったりする人間そのものの探求を深めていきたいと語りました。

当日はIMTの展示を既にみた参加者の方も多く、展示の意図やIMTの役割について関岡さんと参加者の間で活発なやりとりが行われていました。IMTにはまだ足を運んだことのない筆者ですが、白熱した議論を通じて、IMTの展示が人に強い印象を残していることを感じることができました。参加者の質問に丁寧に応答下さった関岡さん、会を盛り上げて下さった参加者の皆様、ありがとうございました。

[アシスタント:中野啓太]

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