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吉田慎一郎

広域システム科学系・宇宙地球科学教室 助教

時空の振動で星をみる

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概要

9月のUTalkでは、一般相対論的天体の振動と安定性をご専門にされている吉田慎一郎さん(広域システム科学系・宇宙地球科学教室)をゲストにお招きし、時空の振動である重力波からブラックホールの性質や星の内部構造を探っていきます。

2013年9月14日のUTalkは、吉田慎一郎さん(ご所属:総合文化研究科)をお迎えして行われました。吉田さんのご専門は天体物理学で、天体を振動で理論的に研究をされています。高校生のころに漠然と物理や天文に興味を抱いた吉田さんは、大学に入ってしばらくは専門をしぼらずに物理・天文分野の勉強を続け、徐々に今の研究をするようになっていったそうです。


吉田さんが研究対象にされている天体は、中性子星やブラックホールとよばれる天体です。中性子星とは、太陽を半径10kmくらいの大きさにしたような非常に高い密度の天体です。吉田さんによれば、スプーン1杯でなんと高尾山1つ分くらいの重さだとか。実は星というのはその重さでその運命が決まっています。星というのはある重さに達することで恒星になりますが、その恒星の中でも重さによって3つのタイプに分けることができます。まず、太陽以下の重さの恒星は寿命に達すると白色矮星という地球くらいの大きさの天体になります。次に、太陽の数倍程度の重さの惑星は、中性子星になります。そして、太陽の数倍よりさらに重い天体はブラックホールになります。この太陽よりもかなり重い天体が吉田さんの研究対象です。


では、恒星はどのように寿命を迎えるのでしょうか。恒星は核融合反応を起こすことで活動しています。核融合反応は水素やヘリウムといった軽い元素を鉄などの重い元素に変換することでエネルギーを生み出していますが、一番安定した元素である鉄は核融合反応を起こさないため、鉄が増加することで核融合反応が弱まっていきます。その結果、エネルギーを発生させられなくなった恒星は、星自体の重さの圧力に耐えられなくなり、寿命を迎えるそうです。


中性子星やブラックホールの内部を直接観測することはできないそうです。そこで吉田さんが注目しているのは、天体の振動の観測です。中性子星は磁場が地球の100億倍くらいあるそうで、天体が回転すると周期的に電波(X線)パルサーとよばれる変光が観測されます。また、ブラックホールにも物質が入ると出られなくなる境界面があり、その周辺でX線を放射しているそうです。
ところで、私たちは振動によって、ものの内部の構造を知ることができます。吉田さんが例にあげたのは、スイカと地球。八百屋でスイカの中身がどうなっているかを知るためにスイカを叩いて音を聞くように、私たちは地震の震動を世界各地で観測するよって地球内部の構造を研究してきました。同じように天体の震動を測定することは、その天体の内部構造を知るために大きな助けとなることから、星震学という学問分野もあるそうです。


吉田さんは、中性子星やブラックホールの振動から発生する重力波によって、それらの天体の構造を推定する研究をしています。これらの天体の振動は、その元となる天体が衝突したり誕生したりするときに発生しますが、その時間はとても短いようです。たとえば、太陽の10倍ほどの重さのブラックホールの衝突では、測定する震動は1秒の1000分の1ほどの時間の間に起こるとのこと。この震動を測定する施設は現在日本の神岡周辺に作られているとのことでした。


吉田さんによるレクチャートークはここまで。残り時間は質疑応答に移りました。質問の中でも比較的多かったのが、ブラックホールに関する質問です。ブラックホールは物質が入ると出てこられなくなるということは宇宙全体の質量が減っているのか、という質問が出ました。吉田さんによれば、ブラックホールは物質を吸い込むと、それによって質量や回転の速さが変わると考えられていますが、吸い込んだ物質の分だけ変化があるので全体としてはこれらの量は保存しているそうです。また、量子力学の知見では、ブラックホールから粒子が出ているとされているそうで、ブラックホールは本当に一方通行の天体なのか、ということもまだ不明な点が残されているそうです。


宇宙の研究は、1つわかるともっと多くのわからないことが出てくると話す吉田さんですが、わかったことを参加者の方々にもわかりやすいように、丁寧にお話をされているのが印象的でした。お話いただいた吉田さん、足を運んで下さった参加者の皆様、ありがとうございました。


[アシスタント:中野啓太]

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