UTalk Report

菊池康紀

東京大学「プラチナ社会」総括寄付講座特任講師

課題解決の方法としての「見える化」

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概要

UTalkは、様々な領域で活躍している東京大学の研究者をゲストとして招き、毎月開催するイベントです。カフェならではの雰囲気、空気感を大切にし、気軽にお茶をする感覚のまま、ゲストとの会話をお楽しみいただける場となっています。 4月のUTalkでは、「『プラチナ社会』総括寄付講座」で特任講師をされている菊池康紀さんにお越しいただきます。この寄付講座は、環境・エネルギー、高齢化社会、成長と雇用等、現代社会が抱える課題の解決を目的として、2012年4月総長室に設置されたものです。今回はエネルギー問題に関する事例を中心として、学際的な取り組みと今後の展望についてお話いただきます。 皆様のご参加をお待ちしております。

2013年4月13日のUTalkは、「プラチナ社会」寄付講座の菊池康紀さんをお迎えして行われました。

 「プラチナ社会」寄付講座は東京大学の総長室に直属し、産学官の連携のうち学の部分を担うものとして研究を進めています。
 「プラチナ社会」寄付講座の研究活動の特徴は、対象を社会の課題にまで「広げる」ことだそうです。普通の研究は問いを「狭める」ことで課題をはっきりさせないと研究として認めてもらえません。ですが問いを狭めることは、ある問題を特定の側面でしか眺めないことにもなります。現代の社会問題は一つの側面だけを取り上げても解決にはつながりません。例えば原子力問題は、エネルギーだけでなく経済学の観点や、「豊かさとは何か?」という哲学的な問いからも議論する必要があります。特定の研究領域にとらわれず、対象を「広げる」ことで新たな問題解決の道筋を探ることができます。
  菊池さんは、今ある知識をどう活用するのかというマネジメントの方法がこれまで研究されてこなかったとも言います。新しい技術や知識を生み出すために研究するのも良いが、そもそも今ある技術や知識を有効活用できていない。広く課題を扱う方法を探るだけでなく、既存の知識を構造化することも、「プラチナ社会」寄付講座の研究目的です。

  具体的な課題解決の方法として挙げられたのが「見える化」です。菊池さんは、震災後の自粛ムードの際に、実際には意味のない節電が行われていたこと、それが起きた理由として「電力と電力量の違い・省エネと節電の違い」の社会における混同があることを指摘されました。この違いは知識としてはすでに存在するものですが、社会の常識にはなっていなかったために、課題解決の役に立っていない。だから、まずそのような既存の知識を「見える化」することこそが、課題解決の第一歩になるのです。
  しかし、「見える化」しただけでは不十分です。東京電力の「電気予報」のように、見えるようになっても、それを見てもらわなければ意味がありません。その点で「見える化」の次には、「見せる化」が求められます。見てもらって、行動を変えてもらう。その先に課題解決が見えてくるのです。
  「見える化」の先にある課題解決を、菊池さんは「知識の構造化・実装化サイクル」として示されました。「計測→可視化→体系化→標準化→情報化→実践」というプロセスを繰り返すことで、課題解決を進めていけるはずです。もちろん各プロセスは簡単にこなせるようなものではありません。しかし、次に何を行うのかを意識しなければ、今本当にやるべきこともわかりません。10年後20年後の課題解決を見据えて「見える化」すべきものを決めていく。そのような姿勢が必要だと菊池さんはおっしゃいました。

  参加者の方からは知識構造化・実践化サイクル」のうち「情報化」に対して質問が出ました。菊池さんのお話では、本や論文よりもネットで知識を利用できるようにすることが「情報化」でした。しかし質問では、ネットを使ってもやはり問題の一側面を見ることしかできないのではないか、検索したものしか見られないのでは同じことではないか、という指摘がされました。菊池さんは指摘をその通りだと認めた上で、だからこそ教育が必要になるとおっしゃいました。特定の立場に限定された「ムラ」にいることは、誰もが避けられないことだが、自らが「ムラ」にいることを意識しなければならない。自分の見方が限定的なものだと理解するためには、教育の力が求められる、それが菊池さんのお答えでした。

  何事にも守備範囲や限界があるからこそ、それを「見える化」して協力しなければ課題解決にはつながらない。非常に示唆的な内容でした。4月にしては肌寒い日でしたが、お越しいただいた参加者のみなさま、菊池さん、ありがとうございました。

[アシスタント:杉山昴平]

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