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辻田 眸

情報学環暦本研究室・日本学術振興会特別研究員PD

未来の日用品

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概要

遠距離恋愛を応援してくれるゴミ箱?笑わないと開かない冷蔵庫?3月のUTalkでは、一人の女の子のお母さんでもある辻田眸さん(情報学環)が生み出す不思議な日用品のお話を伺います。近い将来、どこにでもコンピューターが埋め込まれていることが当たり前になっているかもしれません。日用品のインターフェイスデザインは私たちの生活スタイルや健康をどのように変えるのでしょうか。

2013年3月9日のUTalkは辻田眸さん(情報学環)をお迎えして行われました。一児の母でもある辻田さんが生み出す未来の日用品について、実物を見ながらお話していただきました。

辻田さんの研究分野はヒューマン・コンピュータ・インタラクションと呼ばれる、人とコンピュータの関わり合いを研究する領域です。辻田さんは特に、ユーザー・インターフェイスのデザインを行ってらっしゃいます。これからの社会は、身の回りのあらゆるものに、コンピュータが埋め込まれていくことが予想されます。そこでは人とコンピュータの関わり合いが日常的に行われるようになり、そのためにコンピュータのユーザー・インターフェイスは誰にでも使いやすいデザインであることが求められます。辻田さんの研究は、そのデザインにあるのです。辻田さんは、使いやすいデザインを考えるために、つまみとバーナーの位置が異なる2つのガスコンロのイラストを掲げて、参加者の方々にどちらが使いやすいデザインかを質問されました。辻田さんがここで使いやすいデザインの要素として挙げたのは、つまみとバーナーの対応関係が直感的に分かるということでした。誰もがコンピュータに触れる機会が増えるからこそ、誰もが直感的に操作できるユーザー・インターフェイスのデザインが重要になるのです。
   
辻田さんはこれまで、コンピュータが埋め込まれた、ユニークな「もの」をデザインされてきました。学生時代にはご自身の経験をもとに「遠距離恋愛支援システム」をデザインされました。これはカップルのそれぞれの家をつなぎ、どちらかがランプやゴミ箱、テレビを操作すると、相手の家の家具もそれに対応して動くというシステムです。相手のさりげない存在感を伝えるこのシステムは、実際に3組の遠距離恋愛中のカップルに3ヶ月間使ってもらったそうです。もともとはアロマポットの使用も考えられていたそうですが、実験するとほとんど使われなかったそうで、この経験からランプやゴミ箱といった日用品の方が、特別な操作が必要なく、飽きがこなくて継続して使ってもらえることが分かったと言います。

「笑わないと開かない冷蔵庫」も、コンピュータが埋め込まれた未来の日用品の一つです。その名の通り、この冷蔵庫は扉の前で笑顔をつくらないと開くことができません。これには Happiness Counter という笑顔の度合いを測るシステムが用いられています。これは「笑顔になると自動的にシャッターを切る」という、デジタルカメラの技術を応用して作られたものです。今回は持参していただいた装置を使って、笑顔の計測を実演していただきました。冷蔵庫を使うたびに笑顔をつくらないといけないのは、一見不便なように思えるかもしれません。しかし、この冷蔵庫を使っていると、だんだん人は自然に笑顔をつくることができるようになります。私たちは子どもの頃は1日に300回笑うのに対し、大人になると1日に17回、70代の老人になると1日にわずか3回しか笑わないと言います。人は「楽しいから笑う」のではなく「笑うから楽しい」のだとする科学的知見(表情フィードバック仮説)もあります。いつでも・誰でも使う日用品が、私たちに笑顔を促してくれたら、それだけで楽しい生活を送れるようになるかもしれません。

参加者の方からは「辻田さんのアイデアを出すコツは?」という質問が出ました。それに対する答えは「専門家だけでなく色んな人に自分のやっていることを話してみること」でした。実際に今回のUTalkでは、辻田さんの話を聞いていた参加者からも「こんなものはどうか」というアイデアがたくさん出ました。例えば自分の表情が分かるメガネや、笑顔になると割引になるクーポン、といったアイデアには、その場全体が「面白い!」と盛り上がりました。1人で考え込むのではなく、他人に話すことによってアイデアが生まれてくるという辻田さんの発想法は、示唆に富んだものだと感じられます。

辻田さんのお話をうかがって、わくわくするような未来の生活が垣間見えました。4月のような暖かさの中、楽しい時間を一緒に過ごさせていただいた辻田さん、参加者の皆様、ありがとうございました。


[アシスタント:杉山昴平]

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