医学教育国際協力研究センター講師
第54回
9月のUTalkでは 、市民と医療者がフラットに対話できる場「みんくるカフェ」を主催されている孫大輔さん(東京大学医学教育国際協力研究センター講師)をお招きします。孫さんはご自身の総合医としての経験を通じ、どのような経緯でカフェ型ヘルスコミュニケーションの企画に至ったのでしょうか。カフェ実践の内容や今後の展望などについてもお話いただく予定です。
2012年9月18日のUTalkはゲストに東京大学医学教育国際協力研究センターの孫大輔さんをお迎えして行われました。
孫さんは元は腎臓の専門医師でしたが、5年前より家庭医として務められています。家庭医となられてすぐ、専門医時代には感じなかった地域医療に対する思いを感じたそうです。
所謂「患者さん」は普段着の医師と出会う機会は無く、医師に本音を伝えることがなかなか出来ない、逆に医師は患者の生の声を捉えることが出来ない。双方にあるその不満をなんとか解決していけないか、孫さんの関心はそこに止まりました。医療従事者と一般の方の間にある高い壁を取り払えないか、白衣を脱いだ状態でなんとかコミュニケーションをとることが出来ないか、先生と生徒(患者)ではなく、良きパートナーになれないか、...そんな思いから医療従事者も一般の方も垣根を越えて、カフェスタイルで対話出来る空間『みんくるカフェ』を作ったのがはじまりです。
医療従事者をなるべく"先生"と呼ばせない、病院の外に作るフラットな場としてのみんくるカフェは毎月1回必ず行われています。孫さんの狙い通り、一般の方の不満を医師が聞けるだけでなく、医師がどのような気持ちで働いているかの心境を伝えられる良い機会にもなっています。みんくるカフェ自体は毎回小規模ですが、今までで延べ600人が参加しており、積極的にSNSを使っての勧誘活動、感想の共有や議論、オンラインを上手く使っている事が特徴のひとつとも言えます。
参加者の方からはみんくるカフェ、また医療系のカフェイベントやワークショップが今後どのように進展していくのかというところに質問が集まりました。孫さん自身はまだまだどのような可能性が秘められているのか未知数だと考えているのと同時に、医療従事者と一般の方々の垣根を払うだけでなく、ご身が専門医であった経験を元に、医療従事者同士、
医療専門職間の隙間をどう埋めていけるかという点に着目しているそうです。
今回のUTalkは参加者の方々にも医療従事者やまた医療関係の方が多く、質問などもいつもより少し専門色が濃かったように思います。それは、これからの医療へ注目されている方々が多いことの現れとも言えるのではないでしょうか。
興味深いお話をしてくださった孫大輔さん、お越し下さった参加者の皆様、どうもありがとうございました。
【アシスタント:猫田耳子】