理学系研究科・准教授
第18回
東京大学理学部は、科学と社会をつなぐ科学コミュニケーションを教育として行い、アウトリーチ活動にも力をいれています。 8月のUTalkでは科学コミュニケーションを専門にする横山広美さん(理学系研究科・准教授)にお越しいただきます。
今回のUTalkでは理学系研究科准教授の横山広美さんをゲストにお迎えし、科学に関心をもったきっかけや、今まで創られた作品とともに横山さんのクリエイティブなお仕事の様子をお話しいただきました。
まずは生い立ちをお話ししてくださいました。
現在は科学コミュニケーションの専門家でいらっしゃる横山さんですが、小学校卒業時には童話作家を目指していたとのこと。ファンタジーの世界から科学に関心が移るきっかけとなったのは科学雑誌"Newton"との出会いでした。
カトリック教育を受けられた横山さんは「私」という存在の証明に頭を悩ませていました。そのような中学時代、知り合いのお母さまに薦められた科学雑誌で、宇宙が理論的に予測可能だという事実に触れます。科学の世界の魅力に心惹かれたのです。
横山さんは科学者を目指そうとは思わず、"Newton"から得た科学の知識をノートにまとめる楽しさを覚えたとおっしゃいました。ここで中学2年生のころ書かれた科学の自学ノートを回覧してくださいました。「今とは筆跡が違う」と笑っておいででしたが、シャープペンシルで丁寧にまとめられたページからは14歳の横山少女の科学への知的興奮が溢れ伝わってくるようでした。
次にwebページを開きながらK2Kグループという、宇宙の誕生や、物質とはなにかを探る科学者のプロジェクトでの経験を話してくださいました。世界中に研究者のネットワークを作ることができたと同時に、研究の根性も身についたとおっしゃいました。
同じくweb上で横山さんの作品を鑑賞しました。社会と科学の接点を調査し、大学に還元するという横山さんとNikonのコラボレーション企画です。5章からなる「光と人の物語」のなかから5章「みることと恋」という大人気作品を解説していただきました。これは、万葉集を導入に、人類の祖先の哺乳類は 目の遺伝子をどう進化させてきたのかに迫る作品です。参加者は画面に食い入るように横山さんの作品の世界を楽しんでいる様子でした。
最後に横山さんは、研究の今後の夢として「広報と科学コミュニケ―ション」をあげられました。科学というと難しい、苦手という印象をもつ人も少なくないでしょうが、横山さんの挑戦はイメージ化の難しい科学をより楽しくわかりやすく伝えるとのことです。
参加者の皆さんからは、「自分の好きなことをやり続けることで経済的不安はありませんでしたか」などたくさんの疑問の声が上がりました。
就職とやりたい研究を天秤に掛けた時、持ち前の頑固さで研究の道を突き進み、仕事を手にしてきたと笑顔で答える横山さん。
「やるべきことを山のようにこなすと不安は減り、いつのまにか仕事はついてくる」と力強く語る横山さんは参加者のみなさんにも勇気を与えたようです。
イベント終了後もUTカフェの店内では横山さんと参加者の交流が続いていました。
横山さん、素敵なひとときをありがとうございました。そして参加者のみなさま、お越しくださいましてありがとうございました。
[アシスタント:帯刀菜奈]