柏の葉アーバンデザインセンター・ディレクター
第17回
いわゆる「工学部」の中でも、「建築学」とか「都市工学」という分野はアートの要素を多く含んでいます。とりわけ、その「デザイン」という仕事は、芸術的 な側面とものづくりの側面の接点ともなっていますが、「建築デザイン」と「都市デザイン」は近そうに見えて、実際には異なる面も多く、大学における設計教 育の方法、デザインに対する姿勢や考え方にも違いがあるのだそうです。 7月のUTalkでは、この「建築のデザイン」と「都市のデザイン」の間を越境した活動をしておられる、丹羽由佳理さん(柏の葉アーバンデザインセンター・ディレクター)に、それぞれのデザインの似ている面と異なる面をめぐるお話をしていただきます。
7月のUTalkには、柏の葉アーバンデザインセンターディレクターの丹羽由佳理さんにお越しいただきました。丹波さんは建築分野のご出身で、 後に都市工学分野に移られた方です。今回は「都市計画と建築におけるデザインに対する姿勢や考え方の違い」や実際に取り組んでいらっしゃる事例についてお話しいただきました。
まず、建築と都市計画の違いについて、お話をいただきました。建築は、個人のオリジナリティを重視する。それに対して、都市計画では、シンプルなアイデアを数人で共有する、妥当なラインを探っていく、という違いがあるということでした。そのために、基礎調査を重視しているとのこと。都市計画では、多くの人と密に連絡を取る必要があり、メールやミーティングも多い。丹羽さんが、都市計画に移られて一番最初に驚いたのはそのメールの量だったそうです。
ここで参加者から「日本に都市計画は存在しているのか」「都市デザイナーと住民との交流がもっと必要ではないか」、といった意見・質問が飛び出しました。それを受けて、都市工学分野が建築や土木と比べて、日本では歴史が浅いことや、「まちを市民がデザインする」という市民講座の取り組みなどについて教えていただきました。
対象となる都市の規模へと話は移っていきました。「都市計画」と一言で言っても、対象となる都市の規模は様々です。丹羽さんが実際に関わっていらっ しゃるところでも、横浜の港湾地区のような大規模なところを数十年単位で計画していくこともあれば、福島県田町市のような比較的小規模の都市を手掛けるこ ともあるとのことでした。後者では、冊子を作っていろいろな人に知ってもらったり、タウントレイルのマップを作りイベントを行うなど、「まちおこし」にも 似た取り組みをされているそうです。
やはり参加者も「都市計画と建築」「使い勝手とデザイン」の違いやバランスに興味がある様子で、最後はそういった話で盛り上がりを見せました。ヒア リング、過去の調査やワークショップなどのレビューといった調査を丹念に行っても、なかなか住民の意見を反映していくのが難しい現状についてお話をいただ きました。
普段表に出ることの少ない、都市計画に携わる方がどのようなことを考えていらっしゃるのか知る機会となりました。本日は貴重な時間を作ってくださった丹羽さん、参加者のみなさま、本当にありがとうございました。
[アシスタント:神足祐太郎]