Facebookのユーザー数は8億5千万人を超えている。人とつながることが当たり前になり、感覚が麻痺してしまっているが、この数は今でも増え続けており、将来的にあらゆる人類がつながることが考えられる。
人間の通常のつながりの範囲は、「150名」と言われてきたが、ソーシャルメディアが登場したことで、この「150」という数を超えて人がつながる見込みが生まれている。それにより、今までない学習の可能性が広がるだろう。
このセミナーでは、ソーシャルラーニングを新しい人とのつながりによる学習ととらえて議論を進めていきたい。今までにつながらなかった人、異質な人がつながることにより、社会的な学習を起こすことができる。
ソーシャルメディアの出現により、学習だけが変化しているかといえばそうではない。新たな産業が次々と生まれ、働き方も今後変化していき、求められる人材も変わりつつある。つまり、社会における学習観も変化していくということだ。
「今年小学校に入学する子どもたちの65%が現在存在しない職業につく」という予測がある。こういう状況では、医者や弁護士などの「固い専門職」を除き、安定的・専門的な職業は失われてきており、これまで聞いたことがないような職種が次々と登場している。現在の小中高大の教育システムは、安定した職業に就く、働くことが安定しているというアウトプットの前提に基づきできあがっているが、その前提そのものが崩れてきており、職業と学業の体系的な接続が難しくなってきているのだ。1990年代にインターネットが出現し、人は時間や空間を越えてつながるようになった。これを私は産業革命以来の大きな変化だと考えている。産業や社会構造が大きく変化している中、工業化によって生まれた教育システムにも変革が求められている。
ソーシャルラーニングにおいては、学習の方法を考えることも重要だが、「何のために学ぶ」のか、そのネットワークを利用し「何を学ぶのか」ということを意識しなければならない。そこで、今回は次の三層の学習を対象として取り扱う。
対象となる三層の学習
現代の数学教育の課題:数学の学力低下、数学に苦手意識を持つ生徒の増加(芳沢, 2006)や、日常における数学的思考と学校教育における数学スキルとの間の乖離(Devlin, 2007)に対応して、日常生活と関連付けた形で数学スキルを実践できる環境を提供する必要性があると考えた。
数学教育へのゲーム利用は、珍しい話ではなく、コンピュータが登場した当初から存在し、開発も継続的に取り組まれているが、今回の研究では、「ゲームの外の『他者とのつながり』をゲームに組み込む」、「プレイ状況のログを収集してデータとして活用する」といった、学習ゲームのソーシャル化の可能性に着目した。
日常の娯楽的活動における数学的な思考の実践機会を増やすことで、間接的に数学的思考への親和性を高める。
対象者 | 数学に苦手意識を持つ学習者層(主に高校生) |
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用途 | 自宅学習の合間などの短い時間で気軽に楽しんで利用する |
テーマ | 海洋探索、船を座標上で操作して、制限時間内に宝を手に入れる |
学習内容 | 平面座標とベクトルの知識 ベクトルの力の働きのシミュレーション+関連数学知識をクイズ化 |
海洋探索ゲーム:風向き・強さ・進む方向を考えながら、タイミングよくクリックし、船を目的地まで進める。ゴールではベクトル・平面座標に関連した数学学習の問題が出題される。
プレイ結果はFacebookのウォールに投稿される。それをクリックすると、そのプレイヤーのプレイログと対戦できる。
プロトタイプは、Facebookアプリケーションとして開発し、HTML5 Canvas+JavaScriptによって実装した。メインのゲームの開発とともに、ソーシャル要素(ウォール投稿、ゴースト対戦)、学習要素(クイズ)、ステージエディタの機能を導入した。昨年11月から開発を進めている。今後、Facebook上で形成的評価を実施し、事前・事後テストで数学学習に対する意識、プレイ状況、プレイ後の反応を収集、分析ののち、ユーザーのフィードバックを参考に機能の修正・追加を進めていく。
「スケジュール通りに進まなくても雑談でいいから顔を出してね!」と指示
月日 | 内容 | Facebookでの活動 | |
活動スタート | 2/19 | 説明会…対面+オンライン *会場に来られない学習者は、オンラインで自宅から参加、もしくは、非同期で参加。 |
投稿練習 |
Step0 練習 | 2/19-26 | 練習用ミッション | グループ名を決める 投稿練習 |
Step1 課題を理解する | 2/27-28 | 設問を読み取る 資料を読み取る |
教材を読み取ってグループで話しあう |
Step2 知識を得る | 2/29-3/1 3/2-4 |
構想を練る (書くための調査) |
主張を支えるデータを探し、報告しあう |
Step3 知識を整理する | 3/5-6 3/7-8 |
調べた情報を整理する | 情報を取捨選択したり、考えを深め合う |
Step4 アウトライン作成 | 3/9-10 | 構成を考える | 文章の構造や論理的つながりをお互いにチェック |
Step5 小論文作成 | 3/11-12 | 小論文作成 | 提出前にお互いにチェック |
小論文提出 アンケート提出 |
3/14〆切 3/14-16 |
清書して郵送 |
少子化の原因と対策を考える上で重要と思われる項目を取り上げ、なぜ?いつから?どのように?など、複数の観点からツッコミをいれる(問いの絞り込みと深化)。
学習者A「(どうやって複数の観点からツッコミを入れるのか)全然進む事ができないのですが、みなさんはどうやって進めることができたのでしょうか?アドバイスなどお聞かせください!!」
学習者B「私もまだミッションが終えられなくて悩んでいます。だれか助けて!」
学習者C「調べているときは理由も何も考えずに納得していた内容があって、そういえばどういう関連があるんだろう?というものをツッコミにして答えました。例えば、私の場合は、“労働時間短縮
→出生率UP!”という内容があったので、『何で労働時間を短縮すると出生率があがるんだ?』→『仕事と家事育児の両立がしやすくなるから』などとしました。」
学習者B「なるほど!そういう風につっこんでいけばいいんですね。ありがとうございます。」
参加した高校生に対し、質問紙調査を実施。
Facebookグループの学習管理システムとしての機能を教育的アフォーダンス、社会的アフォーダンス、技術的アフォーダンスの観点から評価(Wang, 2011)。
→高校生は自らの学びをどのように捉えているか。
Facebookグループを活用して学習者同士をつなぎ、学習プロセスを可視化する試みは、参加者に好意的に受け止められた。
高校生 | 23名…被災地枠6名+一般枠17名 |
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ボランティアサポーター | 32名…Facebook、Twitterで一般公募 (社会人22名、大学生7名、大学院生3名) |
ファシリテーター →グループ学習をモニタリングする |
6名…教育を専攻する大学院生 |
アカデミックプラン (大学生活) | 医療系の大学における留学制度に参加して得られるものは何か? 大学の「ゼミ」とはどんなところだろう? 理系女子はどんな道に進むの? |
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キャリアプラン (職業と就職) | 文系女子はパイロットになれるのか? 舞台俳優や声優の仕事に就くために大学へ行く意味はあるのか? 諸外国の貧困問題を解決するには、外務省・国連・NGO…どこに進めばいいか? |
ライフプラン (結婚と生活) |
文学部哲学科は本当に就職が困難? 情報の先生になるまでに必要な能力は?やっておいたほうがよいことは? 結婚とやりたい事の実現の関係性 |
7月最終週 | 以下のプロジェクトテーマ(大テーマ)の中から、各自の興味に基づきテーマを選択 アカデミックプラン キャリアプラン ライフプラン |
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7月30日(土) | オリエンテーション@東京大学 「問い」「仮説」の設定 学習計画 Facebook講習 |
各自「仮説」の証明に向けて調査 | |
8月4日(木) | 中間報告@Facebook ・発表アウトライン提出 Facebook上に作られた、各チームのグループページにて報告・共有しあう |
各自、調査の集約 アウトライン修正・レポート作成 ポスター作成 |
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8月13日(土) | 最終成果報告会@東京大学 ポスター発表 ポスターで調査成果を報告。 |
学習コミュニティのイメージ図
Facebookグループでの支援者と学習者間の交流
高校生からの「公開質問」をFacebookページ、Twitterで発信し、一般からの回答を収集
質問テーマ | 対象 |
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1. 大学に進学した後で「無駄だった」「後悔している」こと | 大学生以上 |
2. 大学時代の部活・サークルについて | 大学生以上 |
3. 結婚観について | 大学生以上 |
4. 芸術系大学・デザイン系専攻のカリキュラムと卒業後のキャリアについて | 芸術系大学の大学生・卒業生 |
5. 理系と文系の大学生活の違い | 経済学部または工学部または薬学部の大学生・卒業生 |
6. 医療系学部の留学について | 医療系学部生・卒業生 |
7. 国際社会に活躍するために必要なもの | 大学生以上 |
8. 女性の結婚について | 大学生以上の女性 |
約6割が高校生からの投稿、約4割が支援者(サポーター、ファシリテーター、スタッフ)からの投稿。
進路に対する外的統制感の増大は、一見すると、他の3項目とは方向性が異なるようにも見える。しかし、これは本プロジェクトでの学びを通して、進路選択や決断には人との出会いが影響を与えるという現実を理解したことによるものと推察できる。
→Facebookを通じ活発に他者と交流した高校生ほど「将来に希望がもてる」と回答
祖父や父が歯科医師というのもあって、将来は歯科医師になりたいと考えている。しかし、現在日本はコンビニよりも歯科医院のほうが多いと言われている。そこで僕は将来、周りの人とは違った技術や豊かな人間性を身につけて、より患者さんに必要とされる歯科医師になりたいと思っている。そのために、学生の頃から医療先進国へ留学して、学ぶことが有効な手段なのではないかと考えた。
「~な人に聞きます」という呼びかけで、Facebook上の「友達」(サポーター・ファシリテーター・高校生参加者)にアンケートをとる。
→誰かの発言に別の人が意見を重ねていくので、顔を合わせていなくても、活発な議論が交わされる
→しかし、「友達」の中に医療系大学の出身者が少なく、回答が集まらない
質問と回答の選択肢を自分で作成できる機能を用いて、Facebook上の「友達」にアンケートをとる。
→選択式のアンケートなので、多数派・少数派の意見が何かを知ることができる。
質問を自由に作成でき、選択式&記述式で、ネット上で多くの人に回答してもらえるアンケートを用いた。
FacebookのSocla交流スペース上で、Googleドキュメントの存在を教えてもらい、アンケートを作成した。
サポーターやファシリテーターなどのメンバーの協力を得て、TwitterやFacebookで、自分が直接知らない人にもアンケートに回答してもらえるように拡散してもらった。
→医学生時代の留学について、賛否両論、多くの回答が集まった。(誰でも自由に回答できるので、留学経験のある医療系学生からの回答だけにとどまらない)
調査をしていく中で、Ⅰ〜Ⅲに加えて、Ⅳ、Ⅴを追加した。
以上の調査結果を踏まえて、レポートとポスターを作成し、最終日の成果発表会でポスター発表を行った。