東京大学大学院情報学環ベネッセ先端教育技術学講座(BEAT)で実施した
主要な研究プロジェクトを紹介いたします。
いま、モノが語り始める。街全体が博物館になる未来。
「モノ語り」プロジェクトでは、新しい教育向けインターフェイスを提案しています。ユーザーが、ウェアラブルディスプレイを身につけ、展示物をさわると、その把持状況に応じて、装着したディスプレイに画像や音声が流れます。BEATでは本プロジェクトの基盤技術としてRFID(無線ICタグ)を使った把持状況の認識システムの開発を行いました。
子どもたち全員がケータイを所有し、小学校に持っていくことが当たり前になったとき、日々の学習や周りの大人たちとのコミュニケーションにどんな変化が起きるのか。「Kids K-tai」プロジェクトは、少し先の子どもたちの学習環境を先取りした活用研究です。
お茶の水女子大学附属小学校の協力を得て、ケータイを授業・家庭学習のいろいろなシーンに活用し、学校内の活用にとどまらず、子どもたちの意欲や好奇心を刺激し、小学校と家庭、課外活動をつなぐケータイのあり方を探りました。
「総合的学習の時間」などのカリキュラム開発においては、リーダーシップを発揮するコーディネータの役割が重要となります。「eCC(e-Learning for Curriculum Coordinator)」プロジェクトでは、そういった「カリキュラム・コーディネータ」としての力量形成をねらいとする、教員向けe-Learningプログラムの開発を行いました。電子黒板や多地点遠隔テレビでの会議をとおして、地域的に離れた教員同士が、学校カリキュラムについて協同的に学びました。
「Skaal」プロジェクトでは、高齢化社会・生涯学習社会において重要なテーマである高齢者の学びに焦点を当て、「アクティブシニアの学びをつなぐ」をテーマに、国際交流を通して学ぶプログラムを開発しました。 今回の実証実験では、日本とノルウェーの高齢者同士が、身近なテーマをきっかけに相互にコミュニケーションを行い、学び合いました。具体的には、ビデオレター等による自己紹介の後、E-mailやテレビ会議を用いての交流を行いました。
「おやこdeサイエンス」プロジェクトでは、親子で3週間にわたって自宅でいろいろなミニ実験に取り組み、「光」の性質についてマスターする理科教材の開発および評価を行いました。
教科書+クイズだけでなく、学習状況を保護者に通知するツールとしてもケータイを活用。ミニ実験の後、子どもは結果を記録し、クイズに挑戦。その状況を保護者にメールで通知。ほめたり、一緒に考えたり、子どもの学習支援のためのきっかけを提供します。課題についての親子の理解度や、ケータイを用いることによる学習効果、親子間の信頼度の変化について、評価を進めました。
「なりきりEnglish!」プロジェクトでは、企業向けの人材育成用の英語教材の開発・評価を行いました。自分の業務に必要な英語を身につけられるよう、「CESP: (Contextualized English for Specific Purpose)」、つまり「あなたが将来耳にする英語:あなた仕様の英語」をリスニングのスキットに用いた教材です。企業の役員および人事部長に対して、事業概要や経営戦略、英語を利用する文脈等についてのヒアリング調査を行ったのち、ストーリーを作成。若手社員に内容をチェックしてもらうことで、より実務に即した教材にブラッシュアップしました。開発した教材は携帯電話(スマートフォン)で提供し、実践・評価を行いました。
「つまずきサポート」プロジェクトでは、学習者の「つまずき」解消の支援方法についての研究を行いました。
「つまずき」とは新しいことを学ぶときに、それに先だってわかっておくべき事柄に関する誤理解や理解不足のことです。大量の学習履歴データをデータマイニングや情報フィルタリングの技術によって解析し、その結果を用いることで、一人ひとりの学習者の学習状態にあった支援を行います。
このプロジェクトでは、「学習ナビ」プロジェクトの研究成果を基盤とし、主に中等教育段階にある学習者を対象とした学習支援システムを構築しました。
「Conomi+」プロジェクトでは、英字ニュース記事を用いて、人びとが気軽に英語に触れることのできるインフォーマルな学習環境の構築を行いました。協調フィルタリングの技術を用いることで、学習者の興味関心に合った英字ニュースを学習素材として提供できることが大きな特徴です。
さらに、認知的な学習支援機能と社会的な学習支援機能を実装することで、インフォーマルな学習を継続できる統合的な学習環境を実現しています。
また、一般的な協調フィルタリング技術を基盤として、学習支援に特化した独自の協調フィルタリング技術の開発も進めました。
「Socla(ソクラ)」プロジェクトでは、高校生がソーシャルメディアを活用し、高校生同士や大学生・社会人とのコミュニケーションのなかで学ぶことを支援するソーシャルラーニングプログラムをデザインしました。
「Socla」の学習プログラムは、プロジェクト学習・基礎学習の2つのステージに分かれています。プロジェクト学習では、働くことや大学進学の意味について学びます。高校生が自ら設定したテーマに基づき、ソーシャルメディアを介して大学生や社会人と協働し、新たな気づきを得ながら学習を進めるプログラムです。基礎学習では、国語・数学において基本的な学びのスキルを身につけることを目標とし、学習者同士の相互学習を通して理解を深めます。プログラムデザインのほか、協働的な学びを促す学習システムの開発も同時に行いました。