2009年に何が起きたか?
ジャーナリストの林信行さんは「iT革命」と述べた。これはiPhoneとTwitterがシンクロしながら日本で普及したことからも明らかである。ポイントは、思考、デザイン、ビジネス、学習といった生活の全てが「モバイル」と「ソーシャル」に向かうMobile Socialにある。
参考までに、私のTwitter(@taromatsumura)利用状況を取り上げたい
これらの数字から、Mobileの活用は生活の何かを犠牲にすることなく、Twitter上でのアクティビティ導入に貢献していることが明らかである。つまりMobile Socialの特徴は、今までの生活を変えることなくAdd-onできることにあるのではないかと考えている。
いくつかの具体的な例およびキーワードを挙げながら説明をしていく。
ソーシャルメディアでの「活動」が企業をブランディングし、製品やサービスを洗練しながら「一緒につくる」という空気を作るためには、「長期間の関係づくり」と「素早いフィードバック」が課題となる。
では、具体的にどのようなことから始めればよいのだろうか。いくつか鍵となる仕組みを紹介する。
ソーシャルメディアを利用して行う会話は汎用性が高いのではないかという視点から、リアルな授業と教室にTwitterを導入することで、実験的にDigital Classroomを構築した。これは、Twitterを授業のLMS(Learning Management System:学習管理システム)として機能させる試みであった。以下に詳細を示す。
対象 | 2009年に嘉悦大学で開かれた「情報メディア論」「情報共有システム論」「メディアビジネス論」の各授業 |
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準備 | 約100名の学生と教員、授業用のTwitterアカウントを作成した |
教員アカウントには授業アカウントに書き込みができる管理権限を与えた | |
授業アカウントと学生アカウントが相互にフォローし合うようにした | |
方法 | 出欠および課題は「@授業名」でつぶやくように指示をした |
次週の課題+授業中のインタラクション3回の計4ポストを義務とした |
Digital Classroomの導入後、ツイート(140文字以内のつぶやき)とレポートの関係を検討したところ、以下のような特徴が明らかになった。
授業におけるTwitterの活用は、教室以外の場所で同じ時間に授業を展開することや、Ustreamを活用しての遠隔・分散授業を可能にすると考えている。「Address Free」「Context Free」「Experience Free」、この3つの要素が自由な学びをもたらし得ると期待している。
では次に、モバイルの世界では何が起きているのだろうか。
2007年に発売されたiPhoneのように、同時期に日米で同じ端末が普及するという、5年前は思いもよらなかったことが起きている。従来の携帯からスマートフォンへと使用端末が変化する中で、何が切り替わるのだろうか。
身の回りにある携帯を思い浮かべると、機能だけでなく見た目も多種多様であるのに対し、スマートフォンは外観がすべて同じである。けれども、個々人が機能をカスタマイズすることで、使う人によって中身のまったく違う端末ができあがる。つまり、進化がハードウェアからソフトウェアに変わったというのが重要である。Webのテクノロジーやソーシャルメディアをどんどん吸収しながらイノベーションしていくことが、スマートフォンによって切り替わる“何か”であると考えている。それによって、「食う・食われる」生態系から、「協調・持続する」生態系へと移行するであろう。
スマートフォンが必携ツールとなることで、何が変わるのだろうか。いくつか具体的な例を挙げてみたい。
ノマドワーク | オフィスなどの場所や時間に縛られることなく自由に仕事をこなす新しいワークスタイル |
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大学キャンパスのインフラ | 教職員および学生がスマートフォンで学ぶ |
就職活動 | 時間勝負のセミナー予約もiPhoneで |
iTunes/OpenCourseWare | いつでもどこでも学ぶことができる |
このような仕事や学び意外の場面でも、スマートフォンの活用次第で以下のように生活の楽しみ方が変わるだろう。
体験するブランド | 単なるPRではなく、知れて楽しむPRへ |
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体験するテレビ番組 | テレビ放送と連動して、街の中で番組コンテンツを楽しむ |
新聞/雑誌記事の配信 | 紙が苦手なワカモノにとって朗報 |
雑誌の環境情報化 | 特集単位でほしい記事だけを購入し、GPSでお店までナビゲーションしてくれる雑誌の未来 |
屋内のアートイベントの ナビゲーション+コンテンツ |
会場内外で楽しめるTwitterで拡がるアプリ |
位置情報、ソーシャルメディア、ゲームを組み合わせてローカル情報を掘り起こすことや、iPhone画面の中でコラボレーションが起きることによって新しい価値提供が可能になるなど、「in Your Pocket:サービスの生活密着」が進むと考えている。
これまでの事例を見てもわかる通り、Mobile MediaとSocial Mediaの同期は必然の流れである。では、MobileとSocialのトレンドが学びに流れ込むとどうなるのだろうか。以下のような点が考えられる。
MobileとSocialを掛け合わせたLearningの在り方として、我々はiUnivを提案したい。これは、世界中に散らばっている大学の授業をポケットの中に入れるiPhoneアプリである。OpenCourseWare、YouTube EDU、iTunesにある教育コンテンツを40000件以上も探し出すことが可能で、MobileとLearningの連携を試みている。ここにSocialな役割を加え得るのが、「FUSEN」という以下のような技術である。
このような機能を付けることで、たまった「FUSEN」によるコンテンツのダイジェスト化が可能になり、振り返ることが誘発されるだろう。iUnivをひとつのかたちとして、個々人が体験の掛け合わせを考えることで、今後、学びのソーシャルメディアが発展していくのではないかと期待している。