中野:昨年は、食育基本法や食育推進基本計画など、国をあげて食育が推進された年でもある。そのような食育への関心の高まりに答えるためにテーマとした。また、「おやこdeサイエンス」のコンセプトとつながることでもあるが、食育は「やるべき」という「べき論」で語られるものになっている。しかし、家庭で実践する段階において、実践可能な活動の形で提案がされていないことから「やるべきことだができない」というストレスだけを保護者に課してしまう可能性がある。また正しい知識をもとに行われているのかという疑問もある。これらの課題に関して、弊社にはすでに食育に関する研究や取り組みを行っており知見もあるので、それを活かそうと考えた。
川上:色々な方に使っていただきたいということで、入力デバイスに携帯電話を選んだが、他にもICチップといった選択肢もある。しかし、ICチップを野菜に貼るのはコストがかかりすぎる。QRコードならプリンタで紙に印刷ができ、誰でも活用が可能である。弊社の携帯電話は5,000万台利用されているが、そのうち3,060万台でQRコードは利用できる。対して、ICチップの読み取りに対応しているのは当時で2,000万台程度だったのでQRコードを選んだ。
和気:今回の実証実験で、スーパーマーケットにおける定常コンテンツにできるという手ごたえを感じた。今回のような臨時のイベントではなく、定常のコンテンツとなることによってより広い層へリーチできるのではないかと考える。
中原:コストの問題だが、私は成立すると考えている。まず、B to Bの場合、人材育成の担当者からすれば単なる英語教材ではなく、アクションリサーチ+英語と捉えてもらえると考えている。教育産業白書によると、アクションリサーチの市場規模は5,500億円である。いくつかの企業の方からお声がかかっているが、某IT企業は37人の新人を1ヶ月インドに送っている。また某商社では10ヶ月で36回のレッスンでグローバル人材育成といったことをやっている。その費用を考えると、「なりきりEnglish」のような教材は成立するのではないかと考えている。今回では全部で400万円程度であるが、システムとコンテンツにはそれぞれ200万円しかかけていない。もちろん企業ではないので人件費は換算していない。B to Cの場合、B to Bとは違い中程度のマッチングになる。特定の企業ではなくたとえば業種や職種、コミュニケーションの相手によって教材を作り分けることになる。
山田:今のところ考えていない。大きな理由としては、企業の方だとインタラクションを取れる時間が現実的にない。また、ハードウェア的な制約から、インタラクション機能を備えると余計にレスポンスが落ちる可能性がある。ただし、ほかの学習者の進捗が気になるという意見が多かったため、その機能は盛り込もうと考えている。
中原:システム的に組み込むことはできるが、可処分時間がたった20分から40分で、そのような機能があって「みなさん本当に使いますか?」というのが率直な意見である。しかし、インタラクション部分は必要なのでワークショップでやろうと考えている。
中原:たとえば、小学校で英語を教えようとする場合、単なる英語ではなくて、小学生に対して使えるレトリックを含んだ英語を身につけなくてはならない。これは「なりきりEnglish」で十分可能であると考える。また、現場の先生に、教材のCD-ROMを渡して家でやってもらうというのは経験上不可能であると考えている。そのような現状を考えると「なりきりEnglish」は適していると言える。
松河:「学習ナビ」にはポストフィルターが備わっており、偏差値で言うと65以上の学習者に対しては、「あなたは大変成績がよいですが、他の成績のよい学習者は次のような方略をとっている…」といった別バージョンのメッセージを表示するようになっている。
宮下:今回はコストの関係で同じアニメーションを全教科に用いているため、毎回操作や表示の説明が入っているため余計に長く感じているようだ。現在公開されている新しいバージョンでは、説明部分を別におくことによって1教科ごとのアニメーションを短くしている。
北村:やりたいと考えている。成績への影響を見るには、長期間にわたって何度も学力テストを行ってもらわなくてはならない。しかし、そのデータをもとに学習方略指導のエンジンを改善することによって、システムの改善も同時に行なえると考えている。
山内:現状で用いているのはある1時点のデータであって、できれば精度を上げるために何時点かで成績と学習方略の関係をとりたいと考えている。現状でもある方略をとると何点点数が向上するという予想値はあるが、精度の問題で出してはないが、精度が上がれば具体的な点数も提示したい。
北村:「学習ナビ」は、最初はデータ分析から始めたのが2年前で、おおよそのデータが出てきたのが1年前である。その後、具体的なコンテンツの開発に1年ほどかけている。
中原:「なりきりEnglish」制作チームは、英語、システム、シナリオ、撮影・編集、ワークショップ、冊子というチームに分かれている。ほとんどは大学のメンバーで行っているが、システムと撮影・編集にはプロの方にも入ってもらっている。シナリオチームは私と長岡先生という方が、ベネッセの役員と人材育成の部長にお会いして、事業計画や英語を使うニーズについて調査した。それをもとに私がシナリオを書いた。そのシナリオをもとに制作会社の方に台本を書いていただき、それをもとに英語チームが学習目標を設定しシラバスを作成した。アイデアを練るのは3ヶ月ほどかけたが、インタビューが1ヶ月半、シラバスができてコンテンツの制作には1ヶ月半ほどである。これらをXML化してシステムに組み込むのに2ヶ月ほどかけ、ユーザビリティの調整を行った。その後の評価のためのデータをとるために1ヶ月ほどかかった。
中野:「おやこde食育」はイベントの企画が1ヶ月、何を問題にするのか、何を提示するのかを落とし込む作業が1ヶ月、演出も合わせて携帯に載せるコンテンツを作るのに1ヶ月、PCのサイト制作と会場の手配などで1ヶ月半くらいである。コンテンツに関しては、弊社内の食育研究所の監修と、イベントの開催のノウハウと会場の手配については地域営業を担当する部門の協力を得ている。イベントとしては会場が変わっても使えるパッケージを一つ作ることができたので、希望があればひろく展開をしていきたい。