アメリカでは社会現象ともなっている子どものネットコミュニティ参加。日本では、どのような状況なのでしょうか。今回のセミナーでは、その現状、ネットコミュニティに潜む問題、さらにはその可能性について、議論されました。
ソーシャルネットワーキング・サービス(SNS)は、利用者・利用時間ともに増加しており、インターネットコンテンツの中で一定の位置を占めつつある。また、もともとはPCが中心であったが、携帯電話への対応も進んでいて、まだまだ成長する傾向が続きそうである。
ネットレイティングスの調べによると、mixiは総利用時間・総ページビューともにYahoo!と楽天に次いで「3位」である。平均月間利用時間は「4時間28分」になる。
また、インターネット白書によると、利用者が登録しているSNSサービスは、「8割」以上の人がmixiに登録しており、2位以降は「2割」以下である。また、登録しているSNSの数は「1つ」と答えた人が57%で、「2つ」以下の人が約75%である。これは、実際的には「使い分け」が難しいことを示している。
mixiで公表されているデータを元に、mixiの現況について見てみる。ただし、このデータは自己申告制のため、正確ではない可能性がある。
mixiのサービスが始まったのは2004年の3月である。2007年1月現在では、「775万人」が登録している。年齢構成を見てみると、会員数が増えるにしたがって、「18歳から19歳」の比率が増加している。コアは62%を占める「20代」である。性別は、100万人時代では「過半数が男性」だったが、メンバーが増えるにしたがって「半々」になってきている。コミュニティは現在「126万」という数が存在している。
回答者はSNSユーザー546人の自発的回答者で、mixi内、GREE内、調査者のサイトでの呼びかけに応じてくれた人である。調査期間は2005年2月28日から15日間である。当時はmixiもGREEも利用者が40万人程度であった。しかしながら、「もっとも利用するSNS」としてmixiを挙げた人が515名であったため、分析対象をmixiユーザーとした。平均年齢は32.2(±8.6)歳で、男性は322名、女性は193名である。
ネット利用の性差に注目すると、これまでの調査や研究から、男性の情報志向、女性の社交志向が言われている。こうした志向の違いが個々のサービス利用形態に影響を及ぼすと考えられるので、そのことを頭に入れておいていただきたい。
さて、今回の調査結果を見ていこう。利用頻度に関して、「一日数回以上」という人が「71%」を超えており、今回のサンプルではヘビーユーザーが多いことが伺える。「1,2回程度」と答えた人は「23%」である。
毎日利用する人は「94%」、一週間あたり利用時間の中央値は「5時間」であった。
「日記」と「コミュニティ」がmixiの2大機能である。利用の多い機能を順に並べると、「日記を読む」「日記を書く」「日記にコメントをつける」「足あとをチェックする」「コミュニティのトピックを読む」「コミュニティのトピックに発言する」となる。
典型的なのは以下の4パターンである。
訪問者確認が1と3の両方に登場しているが、これは、この機能の二重性を示している。つまり、1では「誰が自分の日記を読んでいるかを調べる」ため、3では「足あとの残っている人が自分の知り合いかどうかを調べる」ため、という2種類の機能を担っている。
氏名も顔写真も「公開」している人は「19%」、氏名も顔写真も「非公開」の人は「38%」である。双方とも公開している典型的な理由は、サイトに対する信頼と安心感である。双方とも非公開にしている典型的な理由は、サイトはどうあれネットに対するセキュリティ不安、プライバシーの保護、別人格の形成である。
「日記」と「コミュニティ」のうち、どちらの利用が中心かをたずねたところ、8割が「日記」と答えた。コミュニティは情報交換の場という性格に加え、プロフィールページで入っているコミュニティがアイコン付きで表示されるため、自己紹介の役割もしている。
日記の内容については、9割の人が「個人的内容」で、残り1割の人が「社会的内容」を記述していると答えた。記述様式については、「事実中心」が5割で、「意見・感想・感情中心」が5割であった。
更新頻度と被コメント数には有意な相関がある。これはコメントが励みになっていると考えられる。
mixi内での交友関係を表す「マイミク」数の中央値は「21人」であった。同時期の全数調査によれば、中央値は「9人」だったため、今回のサンプルはヘビーユーザーが多いと言える。「マイミク」の構成は、現実世界の知り合いが多い人が「6割」、ネットでの知り合いが多い人が「4割」となっている。
登録パターンを因子分析したところ、学校や仕事などの「公的契機によるつながり」、趣味などの「私的契機によるつながり」、地域や年齢などの「デモグラフィック属性によるつながり」の3因子が抽出された。
コミュニティの参加理由は、「情報交換・入手」が70%、「知り合いを増やしたい」が30%、「自己紹介の手段」が25%、「現在の人間関係の深化」が20%であった。
mixiの位置づけは、
というパターンの3つがあげられる。
mixi内の経験に対する回答を整理したところ、
の3つが得られた。
mixiの利用時間を規定する要因を決定木分析で洗い出した(mixiの1週間あたりの利用時間の平均は「10.4時間」、標準偏差が「14.7」、中央値が「5.0時間」であった)。
利用時間をもっとも左右する要因は「mixiの位置づけ」で、「自分の居場所」であると答えた67人の平均利用時間が「22.3時間」であるのに対し、「自分の居場所」ではないと答えた449人は「8.6時間」であった。利用時間の最も多い枝は「mixiは自分の居場所」であって、「日記の更新頻度」が1日1回以上の「41人」で、平均利用時間は「27.6時間」になる。
他方、利用時間の最も少ない枝は、「mixiは自分の居場所」ではない、「マイミク」が45人以下、「登録コミュニティ」が「69個」以下、「mixiは気に入って」いない133人で、平均利用時間は「4.1時間」になる。
mixi利用のキー要因を日記とコミュニティに分けて見てみると
となる。
社会空間としてのmixiの特徴をまとめてみよう。mixiは個人情報の内容や公開度を操作でき、それによって、非「不特定多数」、つまり特定可能な多数からなる社会空間を形成している。参加者が内容を自分たちで作ることができるが、カスタマイズ性が低い。これらのことは。利用者に特別な技術スキルを要求しないことと、つまり高アフォーダンス性を実現しており、結果的に内容本位の利用が可能になる。
回答者はアメリカ全国サンプルの12歳から17歳の「935名」、調査期間は2006年10月23日から28日間、調査方法は電話調査である。
調査は、「プロフィールの公開の実態はどのようなものか」「個人的なネットワークがどのように形成にされるか」「爆発的成長のメカニズムはどのようなものか」といった問題意識で行われた。
回答者の「55%」がMySpaceやFacebookなど、何らかのSNSを利用している。そのうち86%がMySpaceの利用者で、したがって調査結果はほぼMySpaceに関するものとみなせよう。
SNS利用者の「66%」はプロフィールを公開していない。この数値には、日本のSNSと違って、MySpaceでは登録者以外でも閲覧できるようになっているためと考えられる。毎日利用する人は「48%」である。プロフィールの公開は、「女子」が49%、「男子」が31%である。
回答者が、SNSを利用する際の主な目的は以下の通りである。
新しい友人を作りたいと答えている人は男子の方が有意に多い。
SNSは過半数の「10代」に利用されている。利用には性差が見られ、女子は「既知の友人優先」で、男子は「未知の友人優先」であって、それによってプロフィールの意味合いが異なってくると考えられる。
ネット空間におけるSNSの評価は、非匿名性(=特定可能性)が実現されているか、招待制によって安全性の担保がなされているか、「安心」して「つながりたい」が実現されているか、である。今日、名簿などなど個人情報の扱いが難しくなるため、個人情報保護法がSNS利用の追い風になっているふしも見られる。
「魔法のiらんど」は携帯電話やPCから、無料で簡単にWEBサイトを作成できるコミュニティサイトである。モバイルでは最大級である。iモード創成期の1999年末から7年間安定稼働している。口コミだけで拡大していて累計登録IDは「500万」、月間PVは「14.5億」に達する。そのうち12から13億がモバイルからのアクセスである。利用者の「65%以上が10代から20代前半」で、ピーク年齢は「18歳」である。若年齢層への携帯電話の普及が進んでいるので、10代前半が今後は伸びてくると考えられる。男女比は「4:6」である。健全な運営のために24時間365日「アイポリス」が監視をしている。
また、「魔法のiらんど」ではBOOK(小説執筆)機能があり、それを利用して小説を発表できる。ユーザーが発信、受信、交流、口コミといったCGMメディアとしての特性がフルに活かされ、大手出版社より書籍化され、100万部以上売り上げる人気作家が登場している。なお、BOOK機能の利用者(ID数)は(機能を設置しただけで、執筆していないユーザーも含め)約70万人である。
利用者の増加と共に、「コミュニティ」から不特定多数を対象とする「マスメディア」へと中心が移っている。また、増加に伴い、若年化と初心者の台頭が見られる。情報の内容はCGM(消費者生成メディア)化が進んでいる。
数年前のWEBの利用は、メーカーのサイトで商品の情報を見るといったことが中心であったが、今はSNSで自ら情報を発信してコミュニケーションをするというのが近年の特徴である。中学生を対象にした調査では、PCによるWEBの利用に次いで携帯電話による利用が伸びており、また閲覧するコンテンツも、掲示板、BLOG、チャット、メル友探しといったコミュニケーションのためのものが増えている。
個人情報の扱いについて、企業では情報漏洩が話題になるが、ネットコミュニティではプロフィールやメールアドレスの不用意な公開が問題となっている。それにより、いたずら電話やメールなどのトラブルが多発している。
コミュニティの運用では誹謗中傷や、コミュニケーションの取り方が問題となっている。また、WEBサイトを作成することについては、著作権を気がつかない間に侵害していることがある。キャラクターや楽曲歌詞の無断使用が挙げられる。たとえば人気ケータイ小説の作者のページは1000万以上の読者のアクセスを数えており、深刻なトラブルが発生することが多くなる。
コミュニケーションサイトでは、当然ながら「コミュニケーション能力」と「モラル」が必要になる。次に必要なのが「メディアであるという自覚」である。段階的経験がないままに、不特定多数を対象にしたコミュニケーションが可能な社会に放り込まれるという自覚が必要である。そして、そのようなメディアを運用する知識・能力が必要になってくる。WEBサイトの構成や公開方法を判断しなくてはならない。
そして最後に必要なのが「そのサイトに訪れるユーザーをコントロールする能力」である。掲示板での誹謗中傷などに対応できなくてはならない。
企業がmixiなどのCGMサービスの中で、プロモーションを行っている例が増えている。さらに最近では、CGMサービス自体を自社で行いたいという企業が急増している。掲示板の設置や開発者BLOGといった限定的なものから、大きな収益を得るためにSNSに広げたいという要望まである。しかし、ネット・コミュニティに対する理解が不足している状態である。実際に人権侵害や「炎上」といったトラブルが多発して社会問題になることもある。また、ユーザー教育も欠如している。そこで「魔法のiらんど」では「アイポリス」という仕組みを設けている。
「アイポリス」は、「魔法のiらんど」内のコミュニティを監視・巡回し、正しくサービスを利用してもらうために啓蒙、警告、削除を行う一連の仕組みである。
ユーザーが増えるにしたがって、心ない書き込みや公序良俗に反するサイトが多数発生している。「魔法のiらんど」では年齢制限を設けていないため、青少年が安心して楽しめる健全性が必要ある。その健全性を確保する仕組みを確立するという創業者の意志によって「アイポリス」が生まれた。
「アイポリス」では、安心できるコミュニティを維持するために「システムによる禁止語句の自動チェック」と「専任スタッフによる目視のチェック」を行っていることに特徴がある。
まず、利用者の書き込みなどに関してシステムによる禁止語句の自動チェックが行われる。禁止語句は約3,000語で調査によって随時更新される。続いて専任スタッフによる目視のチェックが行われる。公序良俗やサイトポリシーに反している内容で、悪意のあるものには警告や削除が行われる。悪意のない著作物の不正使用や書き込みについては指導・教育が行われる。このような啓蒙活動の結果、ユーザーとの信頼関係が築かれ、「アイポリス」は「魔法のiらんど」の文化となり、ユーザーからの自発的な指摘や通報もあり、それにスタッフが迅速に対応している。安心できるコミュニティということで、口コミによって新しいユーザーの参加が促されている。
アイポリスの最も重要な役割は、悪質なサイトや書き込みを排除することではなく、指導・教育によって正しい魔法のiらんどの楽しみ方を知ってもらうことである。「アイポリス巡回中」と記載されているだけで、コミュニティに不適当な書き込みが減少したり、悪質なサイトの作成の抑制につながっている。アイポリスの存在によって、ユーザーが自発的な協力者となって、弊社専任スタッフとの連携が強化され、そのことがさらに安心安全なサービスという印象が強まっている。アイポリスは1999年の魔法のiらんどスタート以来7年に及ぶノウハウの蓄積から、総務省主催の「安全・安心インターネット推進協議会」および同省が進める「コンテンツアドバイスマーク推進協議会(仮称)」の正会員として、健全なサイトの運営の普及に努めている。
「トイスタ」とは、サイト上でキャラクターが描かれたカードで、カードバトルを通してコミュニケーションをするSNSである。18歳未満は入会できないSNSが多い中、「トイスタ」は逆に18歳未満を対象とした子ども向けSNSである。
まずあげられる特徴は、多くのSNSには搭載されているメッセージ機能がないということである。これは1体1でやりとりできる機能が、悪口などネガティブなコミュニケーションの温床となる可能性を持つからある。メッセージ機能に変わって、「トイスタ」でのコミュニケーションは主に日記で行われることになる。学校での出来事などを日記に書いて、コメント欄を通してコミュニケーションをする。
日記の他のコミュニケーション機能としては、「チーム」と呼ばれる掲 示板機能がある。これはmixiでのコミュニティと近い機能であるが、mixiは自分の趣味を表すためにコミュニティに参加する傾向があるが、トイスタでは子どもは趣味が大人程には多様化していないといった点に配慮して、「メイン」のチームを設定してそこでコミュニケーションを促進させようとしている。利用者は、思い思いにチームを作っているが、小学生らしいチームとして「交換日記チーム」といった単位のコミュニティを形成させている。
保護者にとって、子どものSNS参加については様々な心配事があるが、「トイスタ」は親の同意無しでは入会できないようになっている。
また、子どもの書き込みの中に禁止語句が含まれている場合、禁止語句部分は伏せ字で投稿されると同時に、伏せ字になっていない文面が保護者に送信される仕組みになっている。禁止語句を書き込んだ子どもへの対応は、SNSではなく、保護者に任されている。
さらに、保護者専用のインタフェースが用意されており、保護者はそこを通して、自分の子どもがどのような相手とどのようなやり取りをしているかがわかるようになっている。このような仕組みによって保護者に安心を提供して信頼を得ている。
ある家庭では、リビングにPCがあり、保護者と子どもが共に「トイスタ」を楽しんでいる。食事の時などにSNSの話題などが出ることによって、ネットリテラシーが向上していくと考えられる。現実世界では保護者が地域パトロールにあたることによって犯罪率が実際に低下することがあるが、SNSの世界も同じで、保護者がスクラムを組むことによって、より安全なコミュニケーションができるのではないかと考えている。
インターネットは情報をたくさん取り出せたり、遠くの人とコミュニケーションができたりすることが、楽しみとなっている。インターネット以外のメディアから流れてくる情報はある程度の選別がなされたものであるが、インターネットの情報の中には嘘や有害なものも含まれている。それを判断する能力を、子どもに持たせる必要がある。
インターネットは顔が見えないので誹謗中傷が簡単にできてしまうが、そこで必要なモラルは現実世界と一緒である。子どもがインターネットを利用するためには様々な課題があるが、ローハイドでは「愛と勇気と正義」を持ってこの課題に取り組んでいきたいと考えている。
横浜:トイスタの場合は子ども達のコンテンツと言うことで、運営側から誘導を行う。例えば学校の給食自慢や、英語でしりとりといったお題を提供することによって、飽きずに純粋に楽しんでいるようだ。
草野:「魔法のiらんど」では、7年間基本的な仕組みが変わっていない。日記、掲示板といったベーシックな機能とBOOK機能である。確かにマンネリといえばマンネリ化もしれないが、サービスを提供する側としてはこれらを安定的に提供するのが仕事であると考えている。新たな試みとしては趣味が近い人を見つけたり、秀逸なサイトの紹介、自己サイトのPRコーナーを設けたりしている。BOOK機能のように、こちらの意図に乗せることではなく、ユーザー自身が新たなコンテンツを作っていくのがCGMと考えていて、そのためのベーシックな機能を提供しているのが「魔法のiらんど」であると考えている。
川浦:SNSが提供している機能は人間同士のつながりなので、ひとりでぽつりとどこかのSNSにいても何も意味をなさない。先発のGREEに対して、mixiが飛躍的に会員数を伸ばせたのは、ひとえに日記機能の有無であると考えられる。SNSの本領は個人同士の、しかも知り合い同士のつながりであり、コミュニティと比べて個人的な内容を自由にやりとりできる日記機能は重要な機能である。
草野:「魔法のiらんど」では口コミのみなので決定的な理由はわからないが、「アイポリス」によって他人に安心して勧められるサービスとして評価されたと考えられる。mixiの招待制による安心感も同じではないだろうか。
横浜:ネット上のサービスとして、安全であるということが必要条件になってくると考えられる。トイスタもまだ初めて4ヶ月程度であるが、口コミで会員数が増えているようである。大切なのは調査で、ユーザーが求めているものを「楽しい」といったレベルではなく、「必要である」といったレベルで探り出し、サービスとして提供する必要があると考えている。
草野:「魔法のiらんど」のSNSで広告収入を得ている他に、着うたや着メロの公式サイトを運営しての収益を得ている。あとは先程出てきたBOOKのようなCGMで収益を得る仕組みを作ろうとしている。まだまだ規模は小さいが今後は大きな柱となると考えられる。
横浜:弊社はベンチャーとして設立されてまだ数ヶ月で、具体的な数字を公表はできないが正直SNSに移動としては儲かってはいない。他にはSNSを簡単に運営できるキットの開発を行っていて、B to Bで収益を上げている。
川浦:そのような差を意識しないで済んだり、ワールドワイドで交流できるのがネットワークの特性として謳われてきたが、実際に盛り上がるのは非常にローカルな話題や、マニアックな話題であったりする。グローバルな話題は当たり障りのない話題になりがちで、盛り上がりに欠けるため続かないためと考えられる。そのコミュニティに関心があるかないかの背景には、文化差や階層差も結果として反映する。ただ、ある一点で共通点があればコミュニケーションは可能なので、それらの差を超える可能性はある。ネット利用者の増加で、ネットワーク上のコミュニティも実社会のコミュニティと近くなってきているようすはSNSやBLOGの利用に現れている。
草野:アイポリスという仕組みの中で、啓蒙的な役割を果たしていることを紹介したが、開始当時は啓蒙と言うことをあまり意識していなかった。しかし、活動を通して文化が結果的に醸成されていった。国で取り組んで欲しいという気持ちもあるが、仕組みが日々変わるインターネットに細かく対応しきれないのではないだろうか。
横浜:実はこのことに関しては特許申請中で詳しいことは述べられないが、安全をサービスではなく、インフラとして組み込もうとしている。
川浦:ネットコミュニティを見ていると、人間はコミュニケーションをするのが大変好きな生き物だなと実感する。人間が持っているものの中で他者とのコミュニケーションの重要度がますます高まっていて、その象徴的な現象がSNSではないだろうか。自分の話を聞いて欲しい、聞いてもらって何かの役立っていることを実感したい、という欲求はあるが、現実的には時間も限られていて難しかったりする。そこを埋めてくれるのがネットコミュニティかもしれない。
草野:「魔法のiらんど」では、BOOK機能により創作物を作ることや見せることが飛躍的にやりやすくなった。また、日記機能では悩みなどを書くと、知り合いでない人から励ましにメッセージをもらえたりするといったコミュニケーションが発生している。「魔法のiらんど」では、このような「夢と感動」を実現しようとしている。
横浜:動機は自分自身がインターネット好きだからというのが一番大きい。インターネットにはあらゆる可能性を感じており、インターネット上でコミュニティーが発達し、徐々に確立されつつあるネット社会は、まるで人類が新しい大陸を発見したことと似ているような気がする。そのような新たな可能性とリスクを感じ、「愛と勇気と正義」でベンチャーらしくドンドンチャレンジしていくつもりだ。
山内:リアルなコミュニティとネットのコミュニティに共通して、コミュニティ自体をどう維持し活性化していけばよいか、ということが課題になっています。今回のみなさんのおはなしから、やはりメリットがあるコミュニティの方がダイナミックな動きがあって、社会に対しても影響力のあるものになると思いました。ただ、そのメリットというのがお金ではなく、川浦先生のお話にあったように、日記につくコメントだったりする、つまりコミュニケーション自体が報酬になり得るということが印象に残りました。デカルトの「我思う、故に我あり」という言葉をもじった、「我コミュニケーションする、故に我あり」という言葉がコミュニケーションを研究している人の間で流行っているのですが、今回はそれが再確認できるよい機会でした。
本日のテーマは「子どもとネットコミュニティ」でした。最近のメディアではネットの危険性ばかりが報じられています。一方で、都会暮らしや核家族化、遊び場の減少で子ども同士、または子どもと近所の大人とのコミュニケーションが希薄になっている問題も指摘されています。本日のお話で、安全な子どものネットコミュニティへの参加の可能性を感じることができました。子どものネットコミュニティへの参加は、希薄になったコミュニケーションを活性化できる手段として今後ますます注目されてくるだろうと感じました。