UTalk / あそびのつくりかた

阪口紗季

情報学環 特任研究員

第134回

あそびのつくりかた

5月のUTalkは、情報学を専門とされている阪口紗季さん(東京大学大学院情報学環 特任研究員)をお迎えします。これまで阪口さんは影遊びをコンピュータで面白くするという「あそびをつくるための技術」の研究をしてこられ、現在では中山未来ファクトリープロジェクトにおいて「あそびをつくる人のための空間」を運営されています。デジタルコンテンツクリエーションやエンタテイメントコンピューティングといった分野に携わるなかで、阪口さんはどのように「あそびのつくりかた」を考えてきたのでしょうか。みなさまのご参加を待ちしています。

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2019年5月のUTalkでは、阪口紗季さん(情報学環 特任研究員)をゲストにお招きしました。阪口さんは「あそび」について研究されていて、情報学環オープンスタジオでは子どもや大学生があそびをつくるためのワークショップを企画・運営されています。

会の前半では、阪口さんが学生時代に研究されていた内容、それから東京大学に移られてからの研究内容をお話しくださいました。学生時代には、阪口さんが得意な切り絵が影絵に似ていることがきっかけで、影絵とコンピュータを組み合わせたあそびの開発をされていました。例えば赤外線や偏光板とコンピュータを使って、スクリーンに投影される影や模様を変化させるシステムを開発したそうです。お話の途中には実際にPCとフィルターや偏光板を使って仕組みを説明してくださいました。

博士課程を終えて東京大学に移られてからは、あそびをつくる側から他の人に「つくってもらう」側に立場を変えて研究・活動をされています。小学生が対象の、あそびながら簡単なプログラミングを体験できるワークショップや、大学生に2週間で次世代のあそびを開発してもらう「あそびの未来ファクトリー」を開催されてきました。ワークショップづくりのような活動を研究者として論文に落とし込むところにはまだ難しさがあるそうですが、教育など他の分野と連携して研究も進めていきたい、とおっしゃっていました。

会の後半、参加者とゲストの間では大きく3つのトピックを中心にやり取りがありました。1つ目はあそびやゲームの可能性、2つ目はあそびを考える上での大人の子どもの違い、そして3つ目はUTalkという場自体についてです。

1つ目のあそびやゲームの可能性については、例えばあそびと学びはどんな関係にあるのかという質問がありました。阪口さんは、あくまでもあそびが先にあって、その中に学びも包摂されているというスタンスで研究・活動をしているそうです。またポケモンGOで遊ぶために外出することが増えた人がいる例などを挙げて、ゲームが社会に与える影響についてもやり取りがありました。

2つ目の大人と子どもの違いについては、ワークショップでの小学生と大学生の作品の共通点・違いなどをヒントに話が盛り上がりました。場でのやり取りを聴いていて、子どもはどんな材料でもそれを使ったあそび方を考えることができる一方で、大人はより高度なあそびの材料をつくることはできても、それを使ったあそび方を考えるのは苦手、と言うことができそうだと感じました。

3つ目のUTalk自体についてのやり取りは、サイエンスカフェ的な場そのものに興味を持った参加者が何人かいたことで生じたものでした。お互いに接する機会が少ない研究者といわゆる普通の人が接する場の意味や、何度もUTalkに参加される方がどこに面白さを感じているのかなどについて話が及び、場の中で場そのものを俯瞰している面白い状況でした。

会の中で話し合われるトピックはお招きするゲストに大きく影響されますが、参加者の興味関心によって会のテーマを越えて議論ができることを実感しました。阪口さん、参加者のみなさん、ありがとうございました。

[アシスタント:石井秀昌]