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桝屋友子

東洋文化研究所 教授

イスラーム・タイルの世界

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概要

桝屋友子さん(東洋文化研究所 教授)はイスラーム地域の美術を研究されています。イスラーム建築を彩るモザイク模様を前にして、思わず息をのんだことはありませんか。荘厳な宮殿やモスク等に使用されるタイルは何百年経っても鮮やかな色合いを失わない、永遠性を感じさせる装飾です。豊富な写真やタイルの複製に触れながら、幾何学模様、植物、文字などをモチーフとしたタイルの伝統や技法、地域ごとの特色についてお話を伺います。

2015年7月11日のUTalkは、桝屋友子さん(東洋文化研究所 教授)をお迎えして行われました。桝屋さんのご専門はイスラム美術史で、イスラーム・タイルを主な研究対象の一つとされています。写本絵画を中心としたイスラーム美術史の研究を志して渡米され、イランを支配していたモンゴルの王朝時代の美術について研究された際にタイルの美に魅せられたそうです。その後も、地域・時代・メディア共に広範囲なイスラーム美術史の研究を続けられています。

タイルは、みなさんもご存知のように、イスラームの建築を特徴づける装飾法の一つで、宮殿や祈りの場、お墓などに用いられています。釉薬(うわぐすり)の使用によって建築に色彩を与える装飾には建築用材の役割も果たす施釉煉瓦もありますが、タイルは建築の表面に張られる、装飾だけのための陶器です。そして、タイルの彩画技法にも多様な種類があります。特に、釉薬の使い方に特徴があります。一色でベタ塗りの単色釉、複数の色をつかった多色釉、部分的に使われた部分釉などがあるそうです。また、タイルへ絵の具で図柄を描いたあとに、透明の釉薬をかける釉下彩や、釉薬に絵の具を染み込ませて描く方法、不透明な釉薬をかけて一旦焼いた後、その表面に絵を描く方法もあります。モンゴルが支配した時代のタイルには、鳳凰や龍の絵などが描かれていることもあり、中国の影響が見受けられるそうです。当日は、桝屋さんが持ってきてくださっていた現代のタイルを実際に回覧し、技法をみることができました。

モスクの天井の装飾には、円形の窪みが複雑な層になって上部の構造がつくられるムカルナスという方法がみられます。これは建築としての機能ではなく、美しさを追求した立体的な装飾方法です。そのムカルナスの表面は、単色の釉薬でつくられたタイルを切り抜いて、パズルのように様々なタイルを組み合わせるタイルモザイクという方法で装飾されています。ムカルナスは、様々なかたちと色のタイルが組み合わされているのにもかかわらず、整然とした美しさを感じさせる装飾で、是非生で見にいきたいと思いました。このように、大量のタイルを切り抜き組み合わせて、美しい装飾を設計することは大変な時間がかかります。これは、タイル自体は単色釉でつくられていますが、設計し建築することが難しい事例です。

一方、タイルをつくることが難しい事例として、多色釉をつかったものがあります。多色釉のタイルは、特殊な物質による黒い縁を用いることで複数の色が混じり合わないように区分していますが、色によって適切な焼成温度が異なるため、タイルの焼き加減が難しいそうです。

当日は、イランやトルコ、スペインなど、たくさんの事例の写真をみせていただきました。タイルは、イスラーム文化の特徴ではありますが、時代や地域によっても様々な種類があるのですね。

イスラームの美術といえば、幾何学模様が印象にあるかと思います。参加者の方からも、模様や設計についての質問がありました。このような数学や幾何学は、ギリシアの幾何学からきているようです。数学は神へと近づける学問として王朝が奨励することもあったそうです。他にも、タイル装飾の特徴によって、使い分けがあるのか?といった質問もありました。建物や宮殿の入り口などの目につくところには凝った装飾が多く、室内ですと、室内の照明によく輝くよう金色などがあしらわれていることもあるそうです。また、動物の絵が描かれているものは世俗向けのタイル、コーランの一部がタイルの中の銘文に記述されているものは、宗教的な用途の建物用です。

タイルは、絵画やガラスと違って色の鮮やかさが残るので、他の美術作品とはまた違った時の流れを感じさせてくれます。改めて、オリエント美術の魅力を感じることができるお話だったのではないでしょうか。今度イスラーム美術を見る際には、タイルに着目してみてみたいと思います。桝屋さん、参加者のみなさん、ありがとうございました。

[アシスタント:青木翔子]

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