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杉本 茂樹

数物連携宇宙研究機構・特任教授

宇宙をひもとく「超ひも理論」

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概要

リンゴが地面に落ちるのも、月が地球を回るのも、実は同じ重力に支配されています。そんな風に、すぐには見えてこないけど、何かシンプルな法則が宇 宙を支配しているのでは? 8月のTalkのゲストは、理論物理学者の杉本茂樹さん(数物連携宇宙研究機構・特任教授)。究極の理論と呼ばれる「超ひも理 論」では宇宙はどのように描かれるのでしょうか。

 8月のUTalkでは、数物連携宇宙研究機構で特任教授を務めいらっしゃる杉本茂樹さんをお迎えしました。今回も夏場のため涼しい店内での開催です。
杉本さんの研究されている「超ひも理論」は、身近な物質の構造から宇宙の謎までを解き明かす可能性のあるそうです。そんな小さいようで壮大なお話を今回していただきました。
 
 みなさんは中学校の頃、「あらゆる物質は原子からできている」と習ったと思います。しかしその原子も陽子・中性子・電子といったさらに小さい物質からできています。そのようにさらに細かく見ていくと、物質を構成する最小の単位、つまりこれ以上分けられないというものが「素粒子」と呼ばれるものとされています。素粒子は今わかっているだけで10種類以上あり、原子を構成するものはもちろん、光を伝える粒子などもあるそうです。また、数年前に小柴昌俊さんがノーベル賞を取って一躍有名になった「ニュートリノ」なども素粒子の一種なのだそうです。
 
 では、この素粒子は何でできているのか?それを解き明かそうとする理論が、「超ひも理論」です。これまで素粒子は内部構造を持たない「点」であると考えられてきたそうです。しかし、素粒子が点であると計算が破綻することがあるそうです。重力もその一つです。素粒子が点だと、確率が無限大になるためいろんな計算が発散してしまい、重力の働きが説明できなくなってしまうのだそうです。しかし、素粒子が「ひも」であると考えると、計算が可能になって重力の説明がつくのだそうです。  ただし、「ひも」はまだ理論上の仮説であり、観測されていないと杉本さんは語ります。というより、現在の技術では観測不可能なのだそうです。人が何かの物を「見る(観測する)」という行為は、物にあたった光を目が受容することで成り立っています。それと似た原理で、よく聞く電子顕微鏡は物質を電子にぶつけて、その反射によって微小な物質を「見る」ことができるのだそうです。しかし、「ひも」は電子顕微鏡でも観測できません。細かい構造を見ようとすると、それだけ高いエネルギーをぶつける必要があるからです。数年前に話題になったLHC(大型ハドロン衝突型加速器)もまだ見つかっていない素粒子を発見するための装置でしたが、それでも素粒子が「ひも」でできているかどうかは分からないのだそうです。  では、なぜこのようなとても小さな物の研究が宇宙というとても大きなものを読み解くことにつながるのでしょうか。それは、宇宙の初期がとても小さかったことに由来するそうです。宇宙は今も膨張し続けていると言われていますが、その始まりはミクロな世界だったそうです。その始まりはミクロな世界だったそうです。非常に小さいミクロな世界を読み解くためには、従来の素粒子論(内部構造が「点」だとする理論)では破綻して説明がうまくいかず限界を迎えていて、超ひも理論だけが唯一うまく説明ができそうな理論となるのだそうです。
 
 ここで参加者から本質をつく鋭い質問が。
 「『ひも』とは一体なんなのか?」
 
 これに対し杉本さんは「『ひも』は『ひも』で、これ以上内部構造が無い物質」と答えます。そもそも最初から「ひも」という発想があったわけではなく、素粒子間で働く「強い力」という相互作用の説明をするために数式を物理的に解いていった結果として生まれた理論なのだそうです。そしてこの「ひも」が重力を説明しうる理論として着目されたのだそうです。
 
 「研究してわかったことは何か?」という質問に対しては、「よくわかっていない部分が多いということがわかった」と杉本さんは答えました。現在宇宙にある物質のうち、判明しているのはたったの4%しかないそうです。それ以外は「ダークマター」や「ダークエネルギー」と呼ばれる物でできているとされています。超ひも理論が正しければダークマターも「ひも」によって構成されていることになるのだそうです。  また、光も粒子であるという先ほどの話に関連して「一般的な感覚からすると『物』と『光』は違う感覚がある」という参加者の感想について杉本さんが答えました。素粒子には色々な種類がありそれぞれ性質は異なるものの、「大きさのない点状のもの」という意味では一緒であり、大きく分けると「物質構成する素粒子」と「力を伝達する素粒子」に分けられるのだそうです。「光」とは電気の力を媒介する素粒子で、原子の中で電子と陽子がひきあうのはこの光の素粒子が媒介しているからなのだそうです。
 
 杉本さんもお話足りないほどあっという間に時間が過ぎていきました。参加者のみなさまも興味が尽きず、時間が終わってからもカフェの外で「延長戦」が続きました。また今回は夏休み中ということもあり、中高生の参加者もいらっしゃいました。学校で学ぶより格段難しい話ではあったかもしれませんが、わからない点についてはその都度再び杉本さんがわかりやすいように言い換えて話してくださったのが印象的でした。  理論物理学者といえばアインシュタインが有名ですが、小さな机上から宇宙の法則を見出そうとする研究は超ひも理論と同じように「小さいようで壮大なお話」なのだと、杉本さんのお話を伺って感じました。文系の私にとっても大変興味深い内容でした。杉本さん、お集まりいただいたみなさま、ありがとうございました。

[アシスタント:市原大輝]

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