UTalk Report

大路 樹生

理学系研究科・准教授

化石から進化を探る

概要

4月のUTalkのゲストは、「生きている化石」として有名なウミユリについて研究されている大路樹生さん(理学系研究科・准教授)です。動物学と古生物学、その両側面からアプローチし、進化の歴史を探索していく自然科学史の面白さについてお話いただきます。

 4 月のUTalkでは理学系研究科准教授の大路樹生さんをゲストにお迎えし、「生きている化石」として有名なウミユリを題材に、進化の歴史を探索していく自然科学史の面白さについてお話いただきました。

 「ウミユリ」といきなり言われてもピンとこない人も多いのではないでしょうか?ウミユリとは棘皮動物の一群で、「ユリ」の名前がついているために植 物のような印象をうけるかもしれませんが、ヒトデやウニと同じ棘皮動物の仲間です。ただ、普段はあまり動くわけではなく、海藻のようにじっとしていて動か ないようです。
 ウミユリの特徴として、「生きている化石」として呼ばれているということが挙げられるそうです。太古の昔には浅い海にも深海にもいたはずのウミユリは、あ る時から浅い海では姿を見ることができなくなり、現在では深海を中心に生息しているのだそうです。その理由として、一般的には気温などの海の状況の変化が 挙げられていますが、大路さんはそうではないと説明してくださいました。「海の状況の変化であれば、ウミユリは腕を根元から落とす。一方で、この時期の浅 瀬のウミユリは腕を途中から失っている。時期的に見ても、おそらくは魚などの外的要因だろう。」そのように、非常に論理的に説明してくださいました。
 また、ウミユリについては腕を海流に流される方に向けていても、海流に乱流を生じさせることでエサの摂取には問題が無いといったことや、海水の圧力をうまくコントロールする機能があるなど非常に詳しく説明してくださいました。

 ところで、大路さんは実際にウミユリを捕まえてきて、飼っているそうです。これは世界でもなかなか珍しい例だそうです。特に、温度の調節や光の加減 など買うのが難しいそうです。また、エサとして乾燥ミジンコなどのプランクトンを与えても、なかなか完全に飼うことは難しく、2年程度で死んでしまうのだ そうです。
 また、ウミユリについて最も印象的だったのは、ウミユリが「走る」という話が出たことです。参加者の方の一人がそのことについて話題を提供すると、モデ レーターがすかさずiphoneで映像を見つけ、参加者皆で見ました。私も拝見したのですが、普段は海藻のようにじっとしているウミユリが確かに走ってお り、非常に驚きました。
 次第に話はウミユリから移り、海外研究そのものの話へとなっていきました。5億4000万年前、古生代が始まり、生物の進化が爆発的に増えたと言わ れています。その古生代の中でも「始まり」があったとされているカナダのニューファンドランドと中国の二箇所で研究をされているそうです。研究は、ただ、 「海の底」を示す化石にのっとるだけではなく、海中にも現代と同じように食物連鎖があったはずだという仮説のもとに進められ、実際に成果も出ているそうで す。大路さんによれば、モデルをたて、現在の食物連鎖で当てはまっていることを確認し、それを過去に応用していくという手法をとるそうです。

 大路さんが研究についての話を終えると、質疑応答の時間へと移りました。古代へ想いをはせるという非常に興味深い話題だったため、質疑応答は非常に 白熱しました。例えば、ウミユリにとって、隕石の衝突(恐竜を絶滅に導くきっかけとなった)の影響はどのようなものだったのか?といった質問や「ミメタスター」についての文献を持ってきての質問などがありました。
その中でも、特に印象に残ったのは「古生物学を社会に還元するといったことは考えているのか?」という質問でした。大路さんは、考えていないと答えまし た。「研究は現象があったときに、理解したいと考える科学者の興味が最初である。目的の段階から応用するといったことは考えていない。」とおっしゃいました。やはり、研究においては「役に立つ」ということと「純粋な興味」の間でバランスをとっていく必要があるのかもしれないと感じました。
 
 そうしているうちにあっという間に時間は過ぎてしまいましたが、終わってからも参加者の方と大路さんの熱い議論は途切れることがありませんでした。普段はふれることのない、古代の生物について考えるひと時でした。大路さん、参加者の皆様、ありがとうございました。

[アシスタント:平川 裕也]

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