総合防災情報研究センター・特任教授
第12回
人びとの暮らしや社会が地形や気候と折り合いをつけながらたがいにつくりあげてきた国土。 2月のUTalkは、須見徹太郎さん(総合防災情報研究センター・特任教授)をゲストに、絶えず変化している地形について、河川とのかかわりから考えます。
2月14日のゲストは、東京大学大学院情報学環、総合防災情報研究センター特任教授、須見徹太郎さんにお越しいただきました。今日は「国土という思想」をテーマに、国土を川から捉えるという視点からお話いただきました。
私たちが暮らしている関東平野の大地の、地表に見えている大部分は、今から約1万年前から現在までの間の、沖積世と呼ばれる時代にできたものだそうです。 46億年の地球の歴史の中ではごく最近のことになります。この時代の地層に焦点をあて、立体地図を見ながら人が自然に手を加えて川をどのように変えてきた のかひも解いていきました。
地文学の地名の研究の紹介では普段何気なく使用している地名、たとえば"早稲田"などは、水捌けが悪いため、早く実る稲を植え、急いで刈り取らなけ ればならない土地であることを意味している、などといった由来を教えていただき、参加者一同、川や水と人の生活との緊密さに驚きました。
また、歴史をさかのぼって、徳川幕府の新田開発に目をむけ、利根川を3代かけて東に移した経緯を地図で確認しました。現在の利根川と昔の利根川の違いを目で見て、社会の変化に合わせて変わる川を知った上で、川の本来の性質に合わせて生活する大切さに気づかされました。
東京大学地震研究所・地震予知情報センターの、"立体メガネ"で地震の地図を見ると、遊園地のアトラクションのように震源の場所や深さが浮かび上がり、視覚的に理解することができました。
その後、参加者からの「今住んでいる地域の地盤がゆるいようで、心配です」「地下水のくみ上げ制限によって、地下水位があがってしまうことによる影響もあ るのでは?」といった質問をきっかけに、災害時の情報を効果的に伝える方法について話し、参加者からもアイデアが出されました。時代とともに防災に関する 情報伝達も、デジタル化が進んでいるようです。
2月にも関わらず気温20度を超える暖かい午後に、アットホームなムードの中、生活文化と環境に思いを馳せるひと時となりました。お話くださった須見さん、そして参加者の皆様、ありがとうございました。
[アシスタント:岡本絵莉・帯刀菜奈]