私達にとって、生活の必需品となっているケータイ。今や日本人の70%がケータイを持つ時代です。ケータイの普及により、私達はいつでもどこでも誰とでも望むようにコミュニケーションすることができ、また手軽にウェブ上の情報やサービスを活用できるようになりました。
子どもにとってもケータイを安全で便利な道具として使えるようにすること、また子どもを保護者と結び危険から守ることが社会的に要請されています。そのため、ケータイキャリア各社はさまざまな子ども向けサービスを提供しています。
今回の研究会では、これらのサービスが目指す「子どもとケータイの理想的な関係」がどのようなものであるかを考え、ケータイのある環境での新しい学習をデザインするには何がポイントとなるのかについて、議論が進められました。
携帯電話を持っている子どもが徐々に増加している。携帯電話が広く普及したことの他、少子化で親と子の関わりが深くなったことが考えられる。また、最近では子どもをねらった犯罪が増えており、携帯電話を使った位置情報サービスに期待する親が増えていることも考えられる。このような状況の中、auでは親が子どもに持たせたく、子どもも使いやすい子ども向けの携帯電話を企画するという話に至った。しかし既にauでは特に子ども向けをうたってはいないが、使いやすさを重視したフレンドリー・デザイン、子ども向けの制限機能、GPS機能を内蔵した端末があり、更に子どもに特化した端末が必要なのか疑問視する声も社内であった。このような逆風の中、「ジュニアケータイ」は開発された。
開発にあたり、子どもは携帯電話を「いつ持つのか」、「どんな使い方をするのか」などを調べた。
まず、「どのような契機で子どもに携帯電話を持たせるか」を親に調査したところ、「塾へ行くときや近所に出かけるときはいつも持たせる」といった答えが多かった。昔は近所に子どもがたくさんいて、「○○ちゃん見なかった?」と尋ねると居場所が判明することが多かったが、今はそれを尋ねる子どもがいないので、親が直接子どもに電話して尋ねるしかないという状況がある。また、公衆電話の減少が原因にあることも考えられる。
次に検討したことは「端末の大きさ」についてである。子どもは携帯電話を「どのように持つのか」について調査した。首から提げる、カバンに入れるなど様々なケースが結果として出てきた。カバン等を持たないとポケットということになるが、最近の子どもの服はポケットが少なかったり小さかったりするため、ポケットに入れるなら小さめじゃないと!という母の意見も入れた。子どもの手の大きさから、操作するにも、携帯するにもサイズは小さめが良いという結論に至った。
続いて、カラーバリエーションの展開が難しかったので、子どもが「好きな色」について調査した。事前に様々な予測をしたが、大人が思っている子どもが好きな色と、実際に子どもが好きな色には大きな隔たりがあった。大人は濃い色を想定していたが、実際には子どもは淡い色を好む傾向があった。
また、「携帯電話の使い方」を親と子どもにそれぞれ聞いてみると、子どもは、「ムシキングなどのサイトを見たい」、「写真を撮りたい」といった答えがあるものの、一番多いのは「母親に電話をしたい」というものだった。また、親については、「子どもとの通話」と「子どもの位置情報の取得」の2つに絞られた。
これまでの調査結果から、「ジュニアケータイ」のコンセプトは
ということが導かれた。
「子どもが使いやすいこと」については、端末の大きさにこだわった。様々な端末を社内の子どもがいる家庭に配布してビデオで撮影し、どのくらいの年齢の子どもがどのくらいの大きさの端末を無理なく使うことができるのかを検証した。結果、高学年になるとどのような端末でもそれなりに使えるのだが、小学校低学年の場合、端末によっては通話ボタンまで指が届かない場合があるということがわかった。「ジュニアケータイ」は小学校1〜4年生をターゲットにしているため、端末のサイズを無理なく使えるサンプル端末のサイズを基準に小さくすることとした。
「安心」については使って安心なサービス/機能と制限機能を柱に考えた。
まず、母親の利用ニーズの高い位置情報サービスを3つ(「安心ナビ」、「ココセコム」、「ヘルプネット」)プリセットしている。「安心ナビ」では対応端末同士で位置情報を任意に確認できる「いつでも位置確認」「位置確認メール」のほか、あらかじめ設定した時間帯に設定したエリアに近づく(エリア内にいる)、または離れた(エリア内にいない)場合にメールで通知する「エリア通知」が利用できる。「ココセコム」「ヘルプネット」とも、同様に任意に子どもの位置を確認できるサービスである。両者の違いは、「ココセコム」は、万が一の事態が生じた場合、セコムスタッフが急行する一方、「ヘルプネット」は、状況に応じて、消防や警察などの関係機関に居場所を通知するところである。「安心ナビ」の内、「位置確認メール」「エリア通知」は標準で利用できるサービスだが、「安心ナビ いつでも位置確認」、「ココセコム」、「ヘルプネット」は申し込みが必要である。このように子どもの位置を確認するサービスは、母親が強く利用を希望しているが、それがどこにあるのかを探して、アプリをダウンロードするなど煩雑な操作を要する。「ジュニアケータイ」ではこれらのアプリをプリセットすることによって、母親が簡単に利用開始できるようにした。そのほかに、防犯ベルが鳴らされると「ペア機能」に登録した相手に子どもの位置情報を通知する機能を設けた。「ペア機能」は良く通話/通信をする相手を5人まで登録でき、簡単に発信が出来るというもので、「ジュニアケータイ」の他、Sweetsシリーズ等に搭載されている。
制限機能については、携帯電話を持たせたいけれど見知らぬ相手やコンテンツとの接触が怖いという母親の意見を元に、「ジュニアモード」を搭載した。「ジュニアモード」に設定することで、ペア相手やアドレス帳に登録した先としか通話・メールができない制限、時間による制限、料金による制限、メールの回数による制限、WEBサイトへのアクセス制限、メールに含まれている電話番号やWEBサイトへの接続の制限といった制限を組み合わせて使える。それ以外にも、もともとauで提供しているきめ細やかな制限をジュニア設定メニューから簡単に設定できるようにした。
「親にとって操作が簡単であること」は重要で、いわゆる普通のお母さんは、「携帯電話でメールは打てるけどパソコンではちょっと…」、「パソコンでWEBは見るけど、その他のことはよくわからない」といった人が多い。そのようなお母さんが、簡単に自分のやりたいこと(位置情報サービス/制限)をできるように端末側で工夫をしたほか、最低限知って欲しいことをまとめたお母さん向けのマニュアルを用意した。また、お母さん向けのマニュアルから、子どもに最低限知って欲しいことをまとめ、漢字にルビを振った子ども向けマニュアルも用意した。
子どもに携帯電話を持たせることについて、昨今では議論が活発化し、メディアからの取材も増えている。そこで必ず聞かれることは「ケータイで子どもが守れますか?」「通信キャリアとして子どもの為にできることは何ですか?」ということである。我々、通信キャリアができることは基本的に情報を伝達することだけである。子どもを守るために有用な情報を想定して様々な方々に提供することはできるが、最終的にその情報を利用して子どもを守る行動に出られるのは、親、先生、近隣の住民であり、通信会社だけではできないことも多い。それでも、情報を伝えるという職分を活かして、子どもを守る為にどんな情報をどのように誰に提供すればいいかを、子どもを実際の行動として守れる周囲の人たちとさらに議論をして、子どもを守る為に役立てていけたらと考える。
最後に学習とのつながりについて述べる。現在auでは「学び」というカテゴリで漢字検定や英検のドリル等の学習コンテンツを提供するサイトがある。サイトでは適宜、公開模試等が行なわれていて、自分が全国でどれくらいのランクに位置しているのかを見ることができる。最近では、教育の現場でパソコンなどのITを用いた学習は積極的に導入されている。では、携帯電話をそこに簡単に導入できるかというと、ただ単にパソコンをリプレイスする存在ではなく、昨年度のBEATの研究にあったような、カメラ機能や通信機能を用いた協調学習のツールとしての存在が有望であると個人的には考える。
ウィルコムの前身は、PHSサービスを提供するDDIポケットという会社で、KDDIグループの一事業であった。2004年10月に主要株主がKDDIからカーライル、京セラとなり、新生ウィルコムとして生まれ変わることとなった。そして従来より定評のあるデータ定額に続き、音声定額サービスを開始し、最近では契約者数が伸びている。その定額サービスが提供できる秘密は基地局のシステムにある。ウィルコムの基地局は全国に16万局ある。つまり通信のキャパシティがとても大きいといえる。キャパシティを上げるには、通話品質を落とすか、基地局を増やすか、の2つが考えられるが、ウィルコムでは後者の戦略をとりキャパシティを上げている。
その結果、通信キャリアでは大変困難とされた定額通話が実現され、その結果、契約者数が増進することとなった。これから「低電磁波」、「位置情報」、「情報セキュリティ」、「定額」をキーワードにウィルコムの取り組みについて説明する。
先ほど基地局が多いと述べたが、基地局が多いということは、通話に必要な電波の出力が小さくても済むということになる。電磁波がペースメーカーや人体に与える影響は様々に議論がされているのは周知の通りである。携帯電話についても、もちろん基準値を下回っていると考えられるが、どうせ持たせるならより安全な方がよいということで、全国3,000以上の病院で使用されている。
ウィルコムでは最近子ども向けの位置情報サービスとして、「どこ・イルカ」と「イルカーナ」を提供し始めた。これらは子どもがどこにいるかを見つけるサービスである。携帯電話各キャリアと比べて、少ない人数で、サービスを展開するには大変な苦労を伴うが、同時期に立て続けにサービスを提供できたことは、「コア・モジュール」戦略の成果であると考える。
「コア・モジュール」戦略で中心的役割をしているのは「W-SIM」という記念切手程度の大きさのカードである。このカードにはPHSの機能が内蔵されており、これを対応端末に挿入することによって端末の着せ替えが可能になっている。仕事の時はPDAタイプの端末、週末は小型の端末といった使い分けが可能である。また、「CSCエンジン」というものも用意しており、こちらもPHS機能が内蔵されたデバイスであるが、センターシステムから端末の設定の一部を書き換えることが可能になっている。
現在、携帯電話を製造しているメーカーはそれほど多くはない。電波を扱う機器の製造には高度な技術が必要で、また端末は通信キャリア経由で販売されるため独自性のある端末を作りづらい土壌もある。「コア・モジュール」はそれ自体で通信に必要な無線機能を内蔵しており、インタフェースを用意すればあらゆる機器に通信機能を持たせることができるので、新たな端末の開発の負担を低減できる。それによって、より多くのメーカーの参入が可能となりより個性的な端末の登場が期待できる。80年代の中ごろに、固定電話機の仕様が公開され、NTT以外のメーカーが電話機を自由に作れるようになり、家電量販店に様々な電話機が並んだ。「コア・モジュール」戦略でも同様な効果をねらっている。また、現状の携帯電話の端末のマン・マシン・インタフェースは類似したものであってそれに対応するかたちでコンテンツも設計されている。「コア・モジュール」戦略ではマン・マシン・インタフェース部分もより自由になり、より多様なコンテンツの登場が期待される。
ウィルコムの一部端末は万が一紛失をした際に、遠隔で操作を制限することができる。これによって不正な発信や情報の保護をすることが可能である。
子どもに携帯電話を持たせる場合、料金については必ず親の懸案事項となる。そこで、ウィルコムでは定額を実現した。家族内でも安心して使える料金体系用にしている。
ウィルコムには子ども向けの端末として、「安心だフォン」、「papipo!」、「どこ・イルカ」、「イルカーナ」の4つがある。
「安心だフォン」は比較的シンプルな端末で、他の携帯キャリアの子ども向け携帯電話と近い思想で作られている。それに対して「papipo!」は株式会社バンダイ殿が製造している端末で「W-SIM」を使用している。「papipo!」は「コア・モジュール」戦略の効果が表れている製品でこのようなデザインは通信事業者の中にいる人間にはなかなか理解ができない部分もある。「たまごっち」などの遊びの機能をもたせた端末で子どもの心を惹きつけるプロであるバンダイならではの発想である。無論、子どもに持たせるのに必要な制限機能はついている。
「どこ・イルカ」は子どもの位置を親に知らせるための端末である。携帯電話でも位置情報サービスは実現されているが、「どこ・イルカ」の特徴はPHSサービスのコストの安さを生かし、リクエストしたときだけでなく、5分おきといった短い間隔で常に位置情報を親に送信することができる。また、目立つようなデザインにして常にランプを点灯させ犯罪を未然に防ぐというのがコンセプトである。対して「イルカーナ」は端末を小型化し周囲から見えにくいようにしている。また、デザインも公開されていない。こちらは予防よりも、犯罪に巻き込まれたときに確実に位置情報を送り続けさせることがコンセプトである。加藤電機殿というカーセキュリティ製品を提供しているメーカーならではの発想といえる。
ウィルコムではインフラだけを提供して、端末とそれに伴うサービスについては、それぞれメーカーの得意分野を生かして自由に提案をして欲しいと考えている。
携帯電話を利用したeラーニングについては、既存の携帯電話のような形をした端末が適切なのか疑問である。未開の分野であるが、たとえばベネッセ殿のような企業が自社のコンテンツを見るのに最適な端末を開発することは、「コア・モジュール」を使えば、これまでと比べて大変容易に可能になるだろう。バンダイ殿の「papipo!」でWEBを見た場合、最初からバンダイ殿の専用サイトに接続されるように設定されている。同様にeラーニングに適した端末で、eラーニングコンテンツに誘導することは可能である。料金の設定も比較的自由にできるようになっている。
子ども向けのサービスを提供するにあたり、
が重要であると考える。
ドコモでは主に端末を、ローエンドの「Simpureシリーズ」、ミドルエンドの「FOMA 700シリーズ」、そしてハイエンドの「FOMA 900シリーズ」を展開している。私はこれらに該当しない企画系端末の商品企画を担当している。たとえばワンセグに対応したもの、次世代の高速データ転送に対応したもの、太陽電池やエコプラスチックを用いたもの、防水のものなど、あまねく広いマーケットというよりは、ある特定のマーケットにターゲットを絞った端末が該当する。「キッズケータイ」も企画系の端末として開発された。
「キッズケータイ」の企画が発案されたとき、ドコモ社内では、ターゲットである子どもを持つマネジメント層の支持もあり、全社的に企画を進めて行くこととなった。ドコモは昨今では携帯電話の負の側面が取りざたされ、マナーや犯罪に対しての対策を考えるために、全社を挙げて「安心ミッション」に取り組んでいたところであり、「子どもへの配慮と保護」もその一つであった。そのような中、子どもが安心して使える携帯電話を商品化しようということになり、「キッズケータイ」が商品化されることになった。「キッズケータイ」では安心なサービスを訴求することを中心とし、子どもでも簡単に使える、学べるコンテンツの提供を目的としている。さらに、端末、サービス・コンテンツ、料金の3つについて総合的に検討した。また「キッズ・アドバイザリー・ボード」と題して、子どもに安心な携帯電話のあり方について、社内外から有識者を集めて議論を重ねている。
「キッズケータイ」が対象としているのは、小学校低学年である。高学年になると大人と同じ「700シリーズ」や「900シリーズ」を持ちたがる傾向があるためである。「キッズケータイ」で「ケータイデビュー」をして頂き、親と子どもとで一緒にケータイの使い方を学んでいくということをコンセプトとして、外観デザインやコンテンツのディレクションはデザイナーの佐藤可士和氏にお願いした。
色は調査の結果、女の子に人気がある「ミント」、男に人気がある「アクア」、親が子どもに持たせたい「トリコ」の3色展開となった。待ち受け画面は星空に流れ星が流れるなど、子どもが喜ぶものを用意した。着信メロディーについては、様々なジャンルを代表する楽曲を入れ、たとえば、ジャズとはこういう音楽、レゲエとはこういう音楽ということが学べる工夫をした。サイズについては手になじむ丸みを帯びたデザインと、小ささは相反するものであるが、適度にバランスをとった。また、スペックについては大人向けの端末と変わらない機能を備えている。
「キッズケータイ」の機能について説明する。位置情報取得機能、防犯ブザーといった機能は無論備えている。特徴的なものとして防犯ブザーは音の大きさについて綿密に検討した。また、防犯ブザーを子どもに持たせると、遊びで鳴らしたりするので周りの大人も気にしないようになってしまうので、「キッズケータイ」では周期的に別な音を混ぜて、ブザー音を変化させることによって周囲の大人への注意を喚起するような工夫をした。
また、防犯ブザーが鳴ると同時に登録された連絡先3件に対して音声通話の発信、メールによる位置情報の発信を行う。これらは暗証番号を入れないとオフにできない。電源のオフにもパスワードが必要である。また、企画当時におこった子どもの誘拐事件でGPS機能付きの携帯電話を所持していたにもかかわらず、犯人に電源を切られていたためにGPS機能を利用出来なかったということも背景にあり、たとえ電源を切ったとしても一定の間隔で位置情報を発信する機能を付加している。さらに、バッテリーは特殊工具がないと外れない構造になっている。
加えて、保護者用と子ども用のパスワードを用意している。保護者用のパスワードを使えば「キッズモード」に設定することができ、各種機能の制限・解除が行える。また、子どもは携帯電話を落としやすいので、特定の番号から一定の間隔で3回電話をかけると端末がロックされる機能も備えている。
学習のための機能であるが、国語事典が内蔵されており、メールを打つときに漢字の意味を参照することができる。また、脳力トレーニングのゲームが内蔵されている。また「iモード」の機能を、子ども向けの「キッズiモード」のみに限定することもできる。ここではコンテンツプロバイダに働きかけをして、子ども向けのコンテンツを提供してもらっている。現在、100程度のコンテンツがあるが、着信メロディーやゲームが主なので、これからは学習系のコンテンツも用意していきたい。
続いて、ラウンドテーブルが行われ、会場から寄せられた質問に登壇者の方々が答えました。
au販売台数は正確な数値は言えないが、価格は1円から販売されている。
ウィルコムバンダイの「papipo!」は6月からの発売なので台数はまだ出ていないが、価格は14,800円(税込み)になる。
ドコモ発売からほぼ2ヶ月の4月末の段階で12万台程度である。価格は10,000円弱である。
au確かに子どもにはまだ早いと思っている親は多い。お母さん同士で牽制をしあっている場合も多く、まだまだ壁は分厚い。それに対しては、現状では地道な努力を行っているとしか言えない。
ウィルコム携帯電話については、学校に持って行くと没収されるということが数年前にはあったが、「安心だフォン」については発信先が限定されていることなどから、例外的に学校への持ち込みが認められているケースがあった。また、メールについて有害なメールが問題となっているが、このようなメールについての対策に取り組んでいる最中である。
ドコモ実際に持たせたくないと考えている親御さんは多く、有害なメールやWEBについて懸念されている方が多い。実際にこれらを制限する機能が「キッズケータイ」には備わっているが、それをご存じではない親御さんが多い。ドコモではショップを通じて説明をしたり、小学校や中学校で「ケータイ安全教室」と題した説明会を開いたりなどして、安全な携帯電話の使い方についての周知をはかっている。
au「ジュニアケータイ」の防犯のための機能は、登下校時にこそ有効なのだが、大半の公立小学校では持ち込みを禁止されている。主な理由として、金銭的な事情によっては子どもに携帯電話を持たせることができない家庭もあるため、不平等が生じるということである。一方、私立の方はそのような事情があまりないので、持ち込みに関して制限しないケースが多い。過去に、子どもの位置情報を家庭と学校の両方で取得し、Bluetoothによって出欠をとり、万が一の場合は親と学校に連絡が行くというシステムの実験を行った。このような実験に学校は協力してくれたこともあり、安心のための機能を理解してもらえれば可能性はあると考える。
ウィルコム子どもの位置を親や学校が把握することはそれほど難しいことではないのだが、位置がわかったところで、実際に子どもがトラブルに巻き込まれたときに即座に助けに行けるかということについては確実ではない部分がある。位置情報を生かしたより確実なケアビジネスみたいなものが確立されれば、携帯電話に対する認識も大きく変わるのではないだろうか。
ドコモ公立の学校よりも私立の学校の方がハードルは低いというのは確かで、先ずは私立や主旨に賛同して頂いた学校と組んで様々なユースケースを検証している最中である。そういった地道な活動を積み上げることで有用性が実証できれば携帯電話に対する考え方が変わるのではないのだろうか。
au法律では、契約者ではなく利用者が、自分の位置が取得されていることがわかること、また拒否できることが必要であると規定されている。KDDIも法務には厳しい会社なのでこれを可能にする機能はもちろん盛り込むが、実際に利用される場面になると守られていないケースがあるのも事実である。自分の旦那の動きをブログで公開している主婦も存在する。最終的にはやはりモラルが高まることが必要であり、キャリアとしてできることをやっていきたいと考える。
ウィルコム電気通信事業法の中にも位置情報に関しては様々な規定がありそれはもちろん遵守している。しかしながら、位置情報を取得できる端末を持たされる本人からキャリアの方で了解を得ているか確認を徹底しても最終的には使用者のモラルに頼らなくてはならない部分がある。このモラルが高まらないと、良いサービスでも評価されなくなってしまう。
ドコモ位置情報をはじめとする顧客のプライバシーに対しての社内の取り扱いは大変厳しい。法制度上は、位置検索されている方が、第3者から検索されていることが分かることと、検索されている方の意思で検索を中止することが出来ることと規定されている。「キッズケータイ」については、位置情報を検索されている場合、携帯電話のLEDを点灯して画面上に誰から検索されているのかが表示されるようになっている。また、検索されることを中止することが出来るようになっている。
山内位置情報は大変価値が高い情報である。たとえば、学習においては自分のいる場所に関する知識を学習者に提示できれば大変効果的である。ユビキタス学習の実現でもっとも基本となる情報である。つまらないことで位置情報サービスが台無しにならないで欲しいと考えたのでこのような問いをしてみました。
auパケット量が同等と予測できる異なるサービスについて、ある特定のサービスだけを安くするにはその理由を説明する必要がある。満足できる理由を見出すのは難しいと考える。
ウィルコムパソコンでのモバイル通信で使われるデータ量は月間で数百MB、PDAによるモバイル通信で数十MB、音声通話で数MBである。PDAでは利用できるコンテンツも限りがあり、逆に言うとトラフィックを予測しやすいので低・定額制が可能である。安価になったメモリを活用したり、学習のためだけのコンテンツに限定したりデータ量を減らすことで、低・定額制が可能になると考える。
ドコモドコモでのパケット通信サービスの速度は、下りが384Kbpsであるが、この夏から3.6Mbpsのサービスが開始される。当初は料金は変わらないが、情報量あたりのコストは低減しているので、普及の状況によってはより安価になる可能性はあるだろう。また、個人的な考えではあるが、コンテンツ限定の割引サービスは難しいと考えられる。コンテンツ限定でやるには、サーバーにも大きく手を入れる必要があり、また現状ではどれくらいのボリュームになるか見込めないためである。
au端末のコストは、販売価格よりも実際は高価なものがほとんどで、学習など用途に特化した端末を作った場合、数が見込めずかなりの金額になってしまい現状では実現が難しいと考える。
ウィルコム携帯電話は常に基本料金が発生していて、用途に特化した特殊な端末をいつも持ち歩くのかという疑問がある。特殊な端末であればあるほど、端末を着せ替える必要が出てきて、コア・モジュールの考え方が生きてくると考えられる。
ドコモ携帯電話のキーボード部分を液晶のタッチパネルにして、用途に応じてインタフェースを変えるコンセプトを現状では考えている。これは2つの液晶画面を使って“学習”や“脳鍛錬系”ゲームのニンテンドウDSのようにソフト次第で学習に適したケータイとなる可能性はあると思う。PDFやあまりに用途に特化した端末では数が見込めず生産はなかなか難しいので、現状の携帯電話の延長線上にあるものが妥当であると考える。
au通信キャリアは基本的につなぐことが仕事であり、コンテンツは専門の企業の方が長けていると感じる。コミュニティ機能に関しては、サーバーへのアクセスの制限は容易に可能なので、グルーピングは比較的容易に可能である。
ウィルコム通信キャリアはある程度はコンテンツも作っているがあまり得意であるとは言えない。通信キャリアは基本的に音声通話とIPサービスを自由に使えるようにすること、またそれに伴うセキュリティについて対応するのが仕事と考えており、「餅は餅屋」という考えで、学習コンテンツを作っている人たちにもっと提案していただきたい。
ドコモ学習コンテンツではないが、以前にFOMAのテレビ電話機能を使って遠隔社会見学を行ったことがあった。具体的には美術館の学芸員と高校の教室をFOMAのテレビ電話で繋いで、絵画を遠隔で解説してもらうという実験をしたことがある。また、ドコモでは今、プッシュトークというサービスを始めていて、最大20名まででトランシーバー的な使い方を音声でできる。これにテレビ電話の機能を用いてビジュアルを送受信できるようにすれば何らかの学習コミュニティが実現する可能性がある。
山内今回は子ども向けの携帯電話についてお話を伺いました。まだ始まって間もない分野でありますが、様々な展望と問題について良く理解できました。また、「餅は餅屋」ということで我々が学習コンテンツに参入できるという可能性を感じております。本日はありがとうございました。
今回は主要な携帯電話キャリアから、子ども向けの携帯電話の端末とサービスについて、貴重なお話を伺うことができました。やはり子どもに持たせるものということで、安全面への配慮に各社の大変の努力を感じます。対して学習に携帯電話を活用する場合には、位置情報や通信機能をフル活用してこそ魅力的なコンテンツが作れると考えられます。セキュリティと自由な通信機能の使用は相反するものがあり、なかなか困難が伴うと予想されます。この困難を乗り越えるためには、通信キャリアの努力も必要ですが、コンテンツ提供者、また、ユーザーのモラルの向上など、作る側と使う側双方が問題解決に関わる必要があると感じました。