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Beating 第93号
2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第11回:Facebookグループの学習管理システムとしての利用に関する探索的調査

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東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
メールマガジン「Beating」第93号     2012年2月28日発行
現在登録数 2,888名

2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第11回: Facebookグループの学習管理システムとしての利用に関する
探索的調査


http://www.beatiii.jp/?rf=bt_m093

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みなさま、こんにちは!

寒さの中にもそこはかとなく春の気配が漂ってきましたね。

さて、今月号の「@Eduなう!拡大版」ではソーシャル・ネットワーキング・
サービス(SNS)のひとつであるFacebookを、学習管理システムとして利用
した研究を取り上げます。

また、次回BEATセミナー 「ソーシャルラーニングとこれからの人財育成」の
ご案内も掲載しています。前回のご案内では未定だったパネリストも決定しま
した。みなさまのご参加をお待ちしています。

では、Beating第93号のスタートです!

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★CONTENTS★

【特集】2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第11回: Facebookグループの学習管理システムとしての利用に関する
探索的調査

1. お知らせ・BEAT Seminar
2011年度第4回 BEAT公開研究会
「ソーシャルラーニングとこれからの人財育成」開催迫る!

2. お知らせ・UTalk
「ほのぼの時間のつくり方」のご案内

3. 編集後記


特集─────────────────────────────────
━━ 2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第11回: Facebookグループの学習管理システムとしての利用に関する
探索的調査
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■2012/1/31 17:58:54
https://twitter.com/#!/beatiii/status/164271424029196288
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──
解説
──
(Wang et al. 2011)Facebookグループを授業の学習管理システムとして利用
し、学生の認識を教育的、社会的、技術的アフォーダンスの観点から調査した
研究。学生は利用に満足しているものの、機能面やプライバシー管理などに
限界もみられた。http://t.co/SYGEjgiQ

■問題と目的
近年、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)がコミュニケーション
ツールとして注目を浴びています。その中でもFacebook(以下FB)は教えること、
学ぶことに対する可能性を秘めていると言われています。

先行研究によると、イギリスやアメリカのティーンエイジャーの50%以上が
SNSを使用しています。更にアメリカでは、大学生のFB使用者の半数以上が
毎日FBにアクセスし、82%が日常的に更新しています。FBの利用は学生の
授業に対するモチベーション、満足度、クラスの雰囲気や人間関係を高め、
また、教員のページを閲覧する学生は学習に対する意欲が高いと言われて
います。

そこで、FBが学習管理システム(Learning Management System 以下、LMS)の
代替になることが期待されています。これまでのFBを使用した学習に関する
先行研究には、長所・短所の両面がありました。例えば、学部生の授業で、
WebCT(*ネットワーク上でコースを管理・運営するwebアプリケーション)と
FBを使用して議論させた事例では、WebCTでは投稿が強制的であり、一方、FBは
自由投稿であったにもかかわらず、FBの方が4倍多く投稿されました。これは、
学生は普段からFBに多くの時間を費やしているためだと考えられます。また、
中国語の授業でFBグループを利用した事例では、教材の共有や議論が行われて
いました。

一方で、学部生を対象にMoodle(*学習サイトを作成することのできるフリーの

ウェブアプリケーション。詳細は http://moodle.org/about/ を参照。)と
FBを使用する授業の研究では、Moodleのほうが長文で建設的な
投稿が行われていました。その理由としては、もともとMoodleを用いて授業が
行われていたために、学生はこれまでとは別のツール(FB)を使用することを
嫌ったからだと考えられます。更に学部生と大学院生のFBの日常的な使用者と
非使用者を比較したところ、日常的なFB使用者の方が学習時間が少なく、成績も
低いことがわかりました。

このようなICTやテクノロジーを活用した教育環境の有用性については、教育的、
社会的、技術的なアフォーダンスを測ることが有効だと言われています。
そこで本研究では、これらの観点からFacebookグループのLMSとしての有用性を
調査しました。

本調査のリサーチクエスチョンは次の通りです。
LMSとしてFBグループを使用することを学生がどのように認識しているか?

■方法
対象となったのは、シンガポールの教員養成校の大学院生と学部生の2種類の
授業です。大学院の授業の受講者は24~55歳の16人で、修士課程に在籍する
現職の教師と会社員が対象です。学部の授業の受講者は20~23歳の15人で、
専攻は多岐にわたりました。授業は1回あたり3時間で、院生は13回、学部生は
12回授業を行ないました。両者とも、このうちの3回はオンラインの授業です。
FBグループの利用の仕方は両者とも同じでした。

学生が、招待者と友達登録せずともFBグループに参加できるように、コース開始前は
グループを公開設定にしました。学生が全員参加した時点で、グループを非公開にし、
関係者以外の参加を防ぎました。FBグループでは、1.講義情報の投稿、2.授業教材の
共有、3.週一回のチュートリアル、4.オンラインの議論を行いました。

各コースの授業の最後にオンライン上でアンケート調査を行いました。
ここでは、FBグループをLMSとして使用した際の1.教育的 2.社会的 3.技術的
アフォーダンスの3つの観点から、学生の満足度を調査しました。教育的アフォー
ダンスでは、FBグループがLMSとして成功したかを測りました。社会的アフォー
ダンスでは、安心して安全な人間関係を築くことができる環境であるかを測り
ました。技術的アフォーダンスでは、技術的な問題がなくFBグループを使用
できるかを測りました。質問項目は全部で15問で、各項目それぞれ5問ずつ質問
しました。また、大学院生の授業では、FBグループを積極的に使用するように
ルールで決められていたため、「授業内でのFBグループの使い方はどうだったか」
「今後、似たような使い方をするつもりはあるか」という追加質問を行いました。
回答は、5段階の数値評価と自由記述で構成されています。それぞれのコースで
14人の回答を得ました。

■ 結果と考察
調査の結果、質問項目全体の平均値は、5段階評価で学部生が4.1、大学院生が
3.7と高く、FBグループのLMSとしての利用を肯定的に受け止めていることが
確認されました。また、教育的、社会的、技術的なアフォーダンスが認められ、
情報の投稿、アイデアや教材の共有、オンライン上での議論を促すことがわかり
ました。このようにFBグループのLMSとしての利用には可能性がある一方、以下の
ような限界も見られました。

教育的アフォーダンス:
FBグループのウォール(一種の掲示板)は、情報や教材の共有に有用なプラット
フォームであると認識されていました。しかし、FBグループにはPDFやPPTなどの
ファイルを直接アップロードできないことから、Googleドキュメントなど他の
アプリケーションを使用して教材のアップロードやダウンロードを行わなければ
なりませんでした。

社会的アフォーダンス:
FBグループの設定には、公開、非公開、秘密の設定が使い分けられており、
今回は非公開、かつ、メンバーはお互いに友達申請をしない設定で活動を行い
ました。学部生は、FBグループが安全な環境だと答えたのに対して、院生は
学術的な投稿を友達に見られているのではないかと心配し、プライバシーが
守られる安全な環境だとは捉えていない様子が窺えました。

技術的アフォーダンス:
学内のネットワークの関係で、FB上に情報がうまく掲示されないことがあり
ました。これらの問題は、学外からアクセスした場合には起こりませんでした。
また、FBグループでは、投稿した情報が更新順に並べられるため、議論の構造が
分かりづらく、学生は既存の投稿を引用したり、「~さんへの返信」というように
氏名に言及することで、議論をこなしていることがわかりました。

以上のように、限界はあるものの、FBグループの利用を学生は概ね肯定的に
受け止めており、FBグループのLMSとしての利用には可能性があることが
わかりました。有料のLMSを導入できない学校では、FBで代用することも
できるでしょうし、既にLMSを導入している学校でも、カリキュラム外の
活動で、LMSに不足していると言われている社会的なインタラクションを補う
ツールとして活用することができるでしょう。また、FBグループは、院生よりも

学部生に受け入れられており、より若い学習者に適していることが分かりました。
一般的にも若い人の方がデジタルネイティブであり、新しい技術を受け入れやすいと
言われており、教師は学習者によってFBの利用を使い分ける必要があるでしょう。


◎特集記事協力◎
末橘花/東京大学 大学院 学際情報学府 修士1年

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BEATはTwitterを利用して教育やICTに関する最新情報や、BEATに関する
情報を発信しています。Beatingで紹介している情報以外にも多くの情報を
発信していますので、Twitterをご利用のかたはぜひBEAT公式アカウント
(@beatiii)をフォローしてみてください。
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おしらせ・BEAT Seminar  ─────────────────────
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2011年度第4回BEAT公開研究会
「ソーシャルラーニングとこれからの人財育成」開催迫る!
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BEAT(東京大学情報学環ベネッセ先端教育技術学講座)では、
2011年度第4回 BEAT Seminar「ソーシャルラーニングとこれからの人財育成」
を3月24日(土)に開催致します。


近年のソーシャルメディアの急速な普及により、人々の関わり方やつながり方
に大きな変化が見られるとともに、コラボレーションや学習の形態も様変わり
しつつあります。ソーシャルメディアがもたらす新たな学び「ソーシャルラー
ニング」が、これからの人財育成のあり方にどのような影響を与えるかが問わ
れています。

今回のBEATセミナーでは、まず、BEAT で今年度実施したSoclaプロジェクトの
活動成果をご報告します。高校生を対象にFacebook上で実施したプロジェクト
学習プログラムと、小論文、数学をテーマとした基礎学習の研究プロジェクト
の報告を行います。次に、これまで数々の社会人教育プログラムの設立に取り
組まれ、政府審議会等で次世代人財育成のあり方を提言してこられた妹尾堅一郎氏
(産学連携推進機構・理事長、コンピュータ利用教育学会・会長、一橋大学
大学院MBA・客員教授)に人財育成に求められるイノベーションと教育機関の
あり方についてご講演いただき、これからの人財育成におけるソーシャルメディアを
利用した学習環境デザインの可能性や課題を議論します。


日時:2012年3月24日(土)13:00-17:30

場所:東京大学 本郷キャンパス 情報学環・福武ホール(赤門横)
福武ラーニングシアター(B2F)
アクセスマップ>> http://www.beatiii.jp/seminar/seminar-map48.pdf

内容:
13:00-13:15
趣旨説明 山内祐平(東京大学 准教授)

13:15-14:20
報告1:Socla 数学学習 藤本徹(東京大学・特任助教)
報告2:Socla 小論文学習 高橋薫(東京大学・特任助教)
報告3:Soclaプロジェクト学習 山内祐平(東京大学・准教授)
今年度成果の総括と来年度に向けて 山内祐平(東京大学・准教授)

14:30-15:30
講演「先端人財育成モデルのイノベーション
~工業モデルの熟達者訓練、農業モデルのイノベーター育成~」
妹尾堅一郎氏 (産学連携推進機構・理事長、コンピュータ利用教育学会・会長、
一橋大学大学院MBA・客員教授)

15:40-16:00
参加者によるグループディスカッション

16:00-17:30
パネルディスカッション「ソーシャルラーニングとこれからの人財育成」
パネリスト:
妹尾堅一郎
山内祐平
藤岡慎二(島根県立隠岐島前高校魅力化プロジェクト・教育ディレクター)

司会:
藤本徹
高橋薫

定員:180 名
参加費:無料
懇親会:セミナー終了後UTCafe にて参加希望者(3,000円)

お申し込みはこちら
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
http://www.beatiii.jp/seminar/index.html


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お知らせ UTalk ──────────────────────
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「ほのぼの時間のつくり方」のご案内
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UTalkは、様々な領域で活躍している東京大学の研究者をゲストとして招き、
毎月開催するイベントです。カフェならではの雰囲気、空気感を大切にし、
気軽にお茶をする感覚のまま、ゲストとの会話をお楽しみいただける場と
なっています。

3月は、サービス工学の研究者である大武美保子さん(人工物工学研究センター
准教授)をお招きします。大武さんは、認知症予防回復支援サービスへの応用
研究を進めつつ、NPO法人ほのぼの研究所を立ち上げ、研究と実践を往還する
アプローチをされていらっしゃいます。当日は、その活動の中で開発された
「共想法」を参加者の皆様にもご体験いただきながら進めたいと考えています。
みなさまのご参加をお待ちしています。

日時:3月10日(土)14:00-15:00


場所:UTCafe BERTHOLLET Rouge(東京大学 情報学環・福武ホール併設)
http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/access.html

料金:500円(ドリンク付き/要予約)

定員:15名

申し込み方法:UTalkホームページ https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/utalk/
の参加申込フォームに必要事項をご記入の上、お申し込みください。

※申し込みの締め切りは3月2日(金)までとします。
なお、申し込み者多数の場合は抽選とさせていただく場合がございます。
ご了承ください。


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 編 集 後 記 ──────────────────────
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Beating第93号はいかがでしたでしょうか。

今期のBEATのSoclaプロジェクトでは、Facebookを活用した学習環境デザインの
研究を行なっており、現在スタッフ一同は3月24日のBEATセミナーでの報告に
向けて着々と(必死の形相でかな?)準備を進めています。
Facebookのグループ機能は、BEATの研究の他に、自分が非常勤先で担当している
授業(大学生のアカデミックライティング)でも活用しています。すべての
教育機関が学習管理システム(LMS)を備えているわけではないので、
「@Eduなう!拡大版」で取り上げたような限界はあるものの、これだけの機能が
手軽、かつ、無料で使えるのはかなりお得感があると感じています。
これからFacebookを学習で活用してみたいと思っている方は、3月のBEATセミナーは
必見ですよ!セミナーでは単にFacebookの活用だけではなく、「ソーシャル
ラーニングとこれからの人財育成」をテーマに議論をおこなっていきます。
どうぞお楽しみに!

ご意見・ご感想をお待ちしております。


「Beating」編集担当 高橋 薫 (たかはし かおる) kaorutkh@beatiii.jp

-------次回発行は3月27日の予定です。

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「Beating」編集担当 高橋 薫 kaorutkh@beatiii.jp
(東京大学大学院情報学環ベネッセ先端教育技術学講座 特任助教)

□「BEAT」公式Webサイト http://www.beatiii.jp/?rf=bt_m093

□発行:東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
Copyright(c) 2012. Interfaculty Initiative in information Studies,
The University of Tokyo. All Rights Reserved.

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