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Beating 第90号
2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第8回:協調的 eラーニングにおける社会的意識の支援

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東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
メールマガジン「Beating」第90号     2011年11月29日発行
現在登録数 2,800名

2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第8回:協調的 eラーニングにおける社会的意識の支援

http://www.beatiii.jp/?rf=bt_m090

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みなさま、こんにちは!

急に冷え込むようになり、雪のたよりも聞かれるようになりました。
気温の変化に体がびっくりして風邪を引いてしまった人も多いようです。
これから年末に向けてますます忙しくなりますので、体調管理には
気をつけたいですね。

では、Beating第90号のスタートです!

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★CONTENTS★

【特集】2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第8回:協調的 eラーニングにおける社会的意識の支援

1.お知らせ・BEAT Seminar 2011年度第3回 BEAT公開研究会
「デジタル読解力を育てる情報教育」開催迫る!

2.お知らせ・UTalk
「たかが“紙”、されど“紙” ― 紙が語る歴史と未来 ―」のご案内

3.編集後記



特集─────────────────────────────────
━━ 2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第8回:協調的 eラーニングにおける社会的意識の支援
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■ 2011/10/28 18:29
https://twitter.com/#!/beatiii/status/129852212397617153
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──
解説
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(Lambropoulos, Faulkner and Culwin, 2011) eラーニング環境において、社会
的意識の向上を目的としたツールの導入、評価を行い、参加者間の相互作用の
可視化とeチューターの役割の重要性を調べた実験研究。
http://bit.ly/uuZnSk



■背景と問題

近年ようやく、eラーニングにおける社会的意識の重要性が実証されるように
なってきました。社会的意識は、コミュニケーションにおける他者の顕在性の
程度や心的距離、オンラインでの会話において個人が“実在する”と認識される
程度などとして定義されています。その背後には、個人の認知構造とそのプロ
セスは、他者との相互作用によって顕在化されるという社会構成主義的な学習
理論があります。

つまり、効果的なeラーニング環境は、情報や知識の伝達だけでなく、参加者間
の社会的、対話的な相互作用を考慮すべきであり、そうした環境のデザイン如何
では、学習を促進するだけではなく、妨害にもつながる可能性があります。
また、相互作用の可視化は、学習者が学習内容と関連性のある情報を見つける
手助けとして必要とされています。しかし、社会的意識の向上を目的としたメデ
ィアの重要性は指摘されているものの、eラーニング学習者の社会的意識を可視
化するためのツールはほとんど開発されていないのが現状です。

本研究で社会的意識を扱うにあたり、以前の研究では分割して捉えられていた
存在感と共存感覚との結合を試みました。これまで、存在感は自己表現・自己
局所性・自己組織・自己評価などに、共存感覚は集団表現・集団局所性・集団
組織・集団評価などに関連づけられていました。けれども、その両者がeラーニ
ング学習ネットワークの縮図として表されるならば、学習者は自己を観察し、
他のグループとの関係性の中で自身の行動を学習・省察する機会を得ることに
なると考えたからです。


■目的

本研究の目的は、eラーニング学習者に対して、文脈における活動の可視化を
可能にした場合、学習が増加するかどうかを検討することです。


■方法

社会ネットワーク分析は、人と人、人とグループ、グループとグループ間の
コミュニケーションや関係性を可視化するために用いられることがあります。
分析の結果として得られるソシオグラムは、点として表現されるノード(主体)
と、線として表現される関係性(主体同士の関係性)から構成されています。
方向性のないネットワークにおける主体同士の関係性は単線(紐帯)で、方向性
のあるネットワークにおいては矢印で示されます。

本研究では、主体間の相互作用を可視化するツールとして、ソシオグラムを
提供するアプリケーションであるUCINETを用いました。UCINETは、eラーニング
学習者のログと議論での発話順序の交代に基づいてソシオグラムを生成します。
主体自身や他者に対して、参加者間の関係性を可視化することで、グループ内
での位置を表現することができるという特徴があります。

本ツールの効果と有効性を評価するために、ギリシャの学校ネットワークに
おいて、ムードル(Moodle)を使用したeラーニング学習を実験的に行いました。
ムードルとは、モジュラーオブジェクト指向ダイナミック学習環境(Modular
Object-Oriented Dynamic Learning Environment)の頭文字をとったもので、
教育者が質の高いオンライン学習過程を構築する助けとなるパッケージソフト
のことです。実験には、eチューター5名を含む計40名が、ツールを利用しない
eラーニング学習と、ツールを利用したeラーニング学習の2つのケースに参加
しました。(a)ツールの評価を目的とした質問紙調査、(b)参加度合いの分析、
(c)社会ネットワーク分析、(d)データの質的分析などを行い、ツール利用の
eラーニング学習における参加者の行動変化を検討しました。


■結果

(a) 質問紙調査の結果、新しい協調的ツールの使いやすさについては高得点が
得られましたが、学習のしやすさについては得点が低く、ツールがあまり利用
されなかったことの説明材料になるのではないかと考えられます。

(b) 学習者の参加の度合いは、登録をした上で他者の投稿を読むか読まないか、
自分自身が投稿をするかしないかといった観点から、能動的と受動的に分ける
ことができます。さらに、能動的な参加は高・中・低の3段階に、受動的な参加
は不参加・高・中・低の4段階に分けられます。7段階の参加の度合いと参加者
の割合を分析した結果、ツールの利用は参加の度合いに影響を与えず、参加行動
は変化しなかったことが明らかになりました。

(c) 社会ネットワーク分析により生成されたソシオグラムでは、相互作用のネッ
トワークとしてeラーニング学習者間の関係性が示されます。分析の結果、(1) ツ
ールを利用しないeラーニング学習とツールを利用したeラーニング学習の間で、
相互作用のネットワーク量に有意な差が見られなかったこと、(2) ツールを利用
したeラーニング学習では、より多様な相互関係が表れていたことの2点が明らか
になりました。

(d) 学習者間のメッセージの数は、ツールを利用しないeラーニング学習よりも
ツールを利用したeラーニング学習において2倍に増加していることが明らかに
なりました。この結果から、学習者の発話が独り言から対話へと発展したことを
示しており、学習者は見解を述べる立場から見解を構成する立場に移っていった
と考えられます。


■考察

eラーニング学習において、学習者の社会的意識を向上させるためには、学習
者間の相互作用を可視化することの有効性が示されました。学習者は、オンライ
ン議論の運営や操作を行い、自分たちの長所や短所を発見するための手段として
可視化ツールを捉えていたと考えられます。その際、適切かつタイムリーな介入
を行うeチューターの存在が重要な役割を果たしており、現在のところ、eラーニ
ング学習のツールはそれに代わる機能を有していません。

eラーニング学習のツールと学校で使用されるツールやスキルとの間には違い
があること考えられます。そのため今後は、社会的、技術的な文脈に注意を払い
ながら、システムを作っていく必要があるといえるでしょう。


◎特集記事協力◎
伏木田稚子/東京大学 大学院 学際情報学府 博士1年

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発信していますので、Twitterをご利用のかたはぜひBEAT公式アカウント
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お知らせ BEAT Seminar ─────────────────────
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2011年度第3回 BEAT公開研究会
「デジタル読解力を育てる情報教育」 12月17日(土)開催迫る!
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BEAT(東京大学情報学環ベネッセ先端教育技術学講座)では、
2011年度第3回 BEAT Seminar 「デジタル読解力を育てる情報教育」
を12月17日(土曜日)に開催致します。

今年6月にPISAのデジタル読解力調査の結果が発表されました。
本テストでは「インターネットの上の情報の信頼性を検証しウェブページを
ナビゲードしながらその信頼性を評価するという課題」を実施しており、従来の
プリント読解とは異なる方法で測定しています。

調査の結果、大半の国ではプリント読解力とデジタル読解力には密接な関係が
見られたものの、成績最上位層の比率が国によって大きく異なることが分かり
ました。

21世紀における教育、雇用、社会参加の機会に完全な形でアクセスするためには、
このデジタル読解力が大きな鍵を握っていると思われます。
では、デジタル読解力を高めるためにはどのような教育が求められるのでしょうか。

今回のBEATセミナーでは、
PISA型読解力の研究をされている国立教育政策研究所の有元秀文さんと、
情報教育の研究をされている横浜国立大学の野中陽一さんにお越しいただき、
デジタル読解力を育成する情報教育のあり方について議論します。
みなさまのご参加をお待ちしております。

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日時:2011年12月17日(土)14:00~17:00

場所:東京大学 本郷キャンパス 情報学環・福武ホール(赤門横)
福武ラーニングシアター(B2F)
アクセスマップ>> http://www.beatiii.jp/seminar/seminar-map47.pdf

内容:
14:05-14:45
1.講演1「デジタル読解力を育てるe-Book Club」
有元秀文(国立教育政策研究所)

14:50-15:30
2.講演2「情報教育研究の実践的課題」
野中陽一(横浜国立大学)

15:40-16:00
3.参加者によるグループディスカッション

16:00-17:00
4.パネルディスカッション「デジタル読解力を育てる情報教育」
司会:
高橋 薫 (東京大学)
パネリスト:
有元秀文(国立教育政策研究所)
野中陽一(横浜国立大学)
山内祐平(東京大学)

定員:180名(定員になり次第締切りますので、お早めにお申し込みください)
参加費:無料
懇親会:セミナー終了後1F UT Cafeにて 参加希望者(3,000円)

お申込みはこちら
↓↓↓↓↓↓↓↓
http://www.beatiii.jp/seminar/index.html


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お知らせ UTalk ──────────────────────
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「たかが“紙”、されど“紙” ― 紙が語る歴史と未来 ―」のご案内
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UTalkは、様々な領域で活躍している東京大学の研究者をゲストとして招き、
毎月開催するイベントです。カフェならではの雰囲気、空気感を大切にし、
気軽にお茶をする感覚のまま、ゲストとの会話をお楽しみいただける場と
なっています。

紀元前に発明された紙。紙は身近な材料でありながら、その性質や構造は多様で、
現代はエレクトロニクスやバイオセンサーへも応用されています。また東日本大
震災の被災地では、紙を塩水で保存するという技術が、津波による被害を受けた
文書類の救援に活用されようとしています。12月のUTalkでは、紙文化財学、
紙の物性解析から、子ども向けの「紙の科学」教室まで多彩な研究を展開されて
いる江前敏晴さん(農学生命科学研究科・准教授)をゲストにお迎えします。
みなさまのご参加をお待ちしています。


日時:12月10日(土)午後2:00-3:00

場所:UTCafe BERTHOLLET Rouge(東京大学 情報学環・福武ホール併設)
http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/access.html

料金:500円(ドリンク付き/要予約)

定員:15名

申し込み方法:UTalkホームページ https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/utalk/
の参加申込フォームに必要事項をご記入の上、お申し込みください。

※お申し込みの締め切りは11月30 日(水)までとします。
なお、申し込み者多数の場合は抽選とさせていただく場合がございます。
ご了承ください。


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 編 集 後 記 ──────────────────────
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Beating90号はいかがでしたでしょうか。

12/17(土)のBEATセミナーでは「デジタル読解力」を取り上げます。
今年6月に発表されたPISAのデジタル読解力調査の報告によると、これまでの
プリントされたテキストの読解とデジタルテキストの読解では、若干異なる傾向
が見られるようです。文部科学省の報告書によると、紙ベースの場合は、「すで
に構築されている連続的なテキストの内部において情報をまとめる」のに対し、
デジタルテキストの場合は「リンクを選択し、テキストを収集、理解するプロセ
スにおいて、それぞれのテキストの重要な側面を読み手自身が構築していく」と
いう違いがあるのだそうで、異なるストラテジーが要求されているようです。

近年、大学生の就職活動もSNSを活用して行われるようになってきており、
デジタルテキストの読解は、子どもたちや若者たちにとっては必須のスキルに
なってゆく可能性が高いと思われます。
必見のセミナーですので、ぜひご参加ください!

それでは、また次号でお会いいたしましょう!

ご意見・ご感想をお待ちしております。

「Beating」編集担当 高橋 薫 (たかはし かおる) kaorutkh@beatiii.jp

-------次回発行は12月27日の予定です。

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□ご意見・ご感想は…
「Beating」編集担当 高橋 薫 kaorutkh@beatiii.jp
(東京大学大学院情報学環ベネッセ先端教育技術学講座 特任助教)

□「BEAT」公式Webサイト http://www.beatiii.jp/?rf=bt_m090c

□発行:東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
Copyright(c) 2011. Interfaculty Initiative in information Studies,
The University of Tokyo. All Rights Reserved.

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