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Beating 第23号
2006年度Beating特集「5分でわかる学習プロジェクト講座」開講!
第1回:書くことが、より深く知ることに繋がっていく 〜学習プロジェクトの夜明け〜 『Knowledge Forum』

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  東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」   
  メールマガジン「Beating」第23号     2006年4月25日発行    
                        現在登録者985名   
  2006年度Beating特集「5分でわかる学習プロジェクト講座」開講!
  第1回:書くことが、より深く知ることに繋がっていく
        〜学習プロジェクトの夜明け〜 『Knowledge Forum』
           http://www.beatiii.jp/
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みなさんこんにちは。お元気でお過ごしでしょうか?

新年度が始まり、新たな出会いや出来事にちょっとしたドキドキやワクワクを
感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今年度の「Beating」も、新たなスタッフにより新たな企画をもってリニュー
アルいたします。ちょっぴりスリムに、でも、前年度に引き続き、濃い内容を
気軽に楽しんでいただけるよう頑張ってお届けいたしますので、今年度もどう
ぞよろしくお願いいたします。

では、2006年度Beating第23号のスタートです!

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┃★CONTENTS★
┃■1. 特集:2006年度Beating特集「5分でわかる学習プロジェクト講座」
┃   第1回:書くことが、より深く知ることに繋がっていく
┃         〜学習プロジェクトの夜明け〜 『Knowledge Forum』
┃
┃■2. 【お知らせその1】公開研究会「BEAT Seminar」2006年度第1回:
┃                         〜5/20(土)開催!
┃
┃■3. 【お知らせその2】「BEAT 2005年度研究成果報告会」レポート
┃                         Webサイトのご案内
┃
┃■4. 編集後記
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■1. 特集:2006年度Beating特集「5分でわかる学習プロジェクト講座」
   第1回:書くことが、より深く知ることに繋がっていく
          〜学習プロジェクトの夜明け〜 『Knowledge Forum』
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今年度のBeatingでは、BEATの研究をより理解していただくため、Beatingで昨
年度までにみてきた学習理論を土壌に、世界各地で花開いている学習プロジェ
クトを、1年を通じてみなさんに紹介していく講座を開講いたします。

昨年度までのBeatingでは、「社会的構成主義」や「認知的徒弟制」、「ジグ
ソーメソッド」等さまざまな学習理論を学んできました。

昨年度のBeatingバックナンバー
http://www.beatiii.jp/beating/index.html

そこで沸き上がる自然な疑問…。『◯◯理論というけれど、どうやったら教室
や学びの場に使えるのだろう?』そんな疑問にお答えするべく、今年度の
Beatingでは古今東西学習プロジェクトの今を、みなさんにお届けしていきま
す。

朝の電車に揺られながら、お昼のお供、風呂上がりの一時に、軽く目を通して
いただくことで、世界各地の学習プロジェクトの現在が見えてくる。また、一
年を通して読み続けると、学習プロジェクトの歴史から現在のトレンド、未来
までをも考えられる、盛り沢山な内容を用意しています。

今号から始まる珠玉のプロジェクト達は、テクノロジーの発達を背景に学習プ
ロジェクトのパイオニアとなった Knowledge Forum を始めとした古典から、
ゲームをいかに学習へと結びつけるかを探った Scratch 等時代の最先端に、
既存の領域を横断して新たな学びの場を考えていくLIFE等これからの学習プロ
ジェクトと、大学の講義もびっくりな内容です。

【掲載予定プロジェクト】
・Knowledge Forum
・WISE
・Learning By Design
・Scratch
・Tappedin
・RecoNote
・Kaleidoscope
・SLC center
・LIFE
等々。ご意見・ご要望も募集中です!

それでは早速学習プロジェクト探訪の旅へと出発しましょう。
「5分でわかる学習プロジェクト講座」開講です!

第1回目は、学習プロジェクトの夜明けとは・・・

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書くことが、より深く知ることに繋がっていく
          〜学習プロジェクトの夜明け〜 『Knowledge Forum』

プロジェクト名:Knowledge Forum
国・発足年  :カナダ・1994年
代表者    :ベライター、スカルダマリアほか
所属     :トロント大学附属オンタリオ教育研究所
        Learning in Motion社
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■学習者自身が知識を構成する!
学習科学の基本的な考え方のひとつに、学習者自らが問題を発見し、それを解
きながら自らが知識を作るものだとする考え方があります。1990年代初期に、
テクノロジを駆使してこのような考え方を実現しようとしたプロジェクトに、
CSILE(Computer-Supported Intentional Learning Environment:コンピュー
タに支援された自覚的な学習環境)と呼ばれるものがあります。

第4回BEAT Seminar「CSCL:コンピュータを活用した協調学習」でもCSILEがと
りあげられているのでご覧ください。
http://beatiii.jp/seminar/012.html

この学習科学の基礎を成した協調学習支援ソフトであるCSILEが改良を重ねら
れることで多機能化し、Learning in Design社による商用ソフトとして開発さ
れたものがKnowledge Forumです。Knowledge Forumは、誰もが書き込める掲示
板データベースとして、さまざまな協調学習を支援しています。

■自ら知識を構成できる書き方へ!
CSILEの産みの親の一人、カナダ・トロント大学のカール・ベライターは、セ
サミストリートを生んだ1960年代の教育改革運動、ヘッドスタート計画に理論
的な基礎を提供したことでも知られています。彼は1980年代に、トロント大学
の同僚であるマルレーヌ・スカルダマリアとともに小学生から中学生を対象に
した作文過程の研究を始めます。その過程で彼らは、生徒がものを書く場合に
は、単に知っていることを書き連ねる書き方(knowledge telling)と、書く
ことによって自らの考えを整理し、より深く理解していく書き方(knowledge
reformation)の二種類があることを明らかにしてきました。彼らによれば、
作文が苦手な生徒のほとんどは、書くことを単なる知識伝達だと考えており、
また学校が作文の授業で教えるのも、ほとんどの場合 knowledge telling でし
かないといいます。この結果、ほとんどの作文活動は浅い理解しか提供できな
いため、やる気を引き起こすようなものではなく、より深い知識の構成にはつ
ながりません。このような作文研究の成果から考えて、生徒に knowledge
reformation につながる作文をさせれば、知識構築へと至ることができる可能
性があることになります。そこで彼らは、書くことによって生徒自らが自分の
知識を深化させる過程を支援する必要があると考えました。

■より深い理解を支援する掲示板のシステム
このような考えのもと、Knowledge Forumではまず、共通の課題について生徒
一人一人が自分の考えていることをノートとして書き込めるデータベースがネ
ットワーク上に掲示板として用意されます。このデータベースに書かれた生徒
のノートには、同じ課題を共有する他の学習者がコメントやリンクをつけるこ
とができます。それだけではなく、人のノートをもとにして内容をさらに深化
させたり、学習者が関連すると考えたノート同士をひとまとめにしたりなど、
ただ書くだけではないハイパーリンク的な一階層上の操作が可能になっていま
す。
また、Knowledge Forumではノートを書くときに、何を考えてノートを書くべ
きかの手助けがあります。ノート同士をただ関連づけるだけではなく、「積み
上げ」(人のノートの内容をより深化させるもの)や「鳥瞰」(いくつかのノ
ートをまとめることでより抽象的なまとめを書くこと)など、関連する汎用的
な型をあらかじめ用意することで、自分や他人のノートを使って学習者が意識
的に知識を構成していくことが促されます。Knowledge Forumを使ってノート
を書くこと自体が、knowledge  reformationにつながり、より深い理解を支援
するようデザインされているといえるでしょう。

■Knowledge Forumの成果は?
たとえば、カナダの小学校5、6年生の歴史の時間に「中世の城が敵から自分
たちを守る防衛法」について授業が行われた際、多くの生徒が鉄格子や跳ね橋
などの絵を描いて考えている中、その防衛法が本当に有効であるかどうかを、
物理シミュレータを使って確かめたコメントがつきました。その結果、これを
見た他の生徒も自らのアイデアの有効性を確かめるようになり、ただの歴史の
授業というだけではない、質の高い授業になったということです。
このような活動は、歴史に限らず生物、高校の現代国語など多様な教科で展開
されています。Knowledge Forumを利用した生徒たちは、利用しなかった生徒
たちに比べて、読解力、語彙、つづりなどの基礎技能に加え、科学概念の使用
や問題解決能力などのより高度な学力に関しても、テストの成績が有意に高か
ったといいます。Knowledge Forumの活動は現在もヨーロッパやオーストラリ
アなど、世界12カ国250校の学校において実際に継続中で、日本においても、
神戸大学発達科学部付属住吉小学校で行われた遺伝子組み換え作物の授業で質
の高い学習を引き起こしたという報告がなされています。
単に事実を書き連ねるだけの作文ではなく、書くことによって理解を深化させ
るよう支援するKnowledge Forumは着実に成果をあげてきており、また同時に、
新しい技術によるよりよい学習環境の実現を提示したという意味でも、大きな
意義があったと言えるのではないでしょうか。

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●参考文献
『人はいかに学ぶか—日常的認知の世界』
稲垣 佳世子 (著), 波多野 誼余夫 (著)
【ご購入したい場合はコチラ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/412100907X/
249-5109732-4111526

『学習科学とテクノロジ』
三宅なほみ・白水始(著) 放送大学教育振興会
【ご購入したい場合はコチラ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4595236182/

『Education and Mind in the Knowledge Age』
Carl Bereiter(著)Laurence Erlbaum Associates
【ご購入したい場合はコチラ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0805839437/
qid=1145380111/sr=8-3/ref=sr_8_xs_ap_i3_xgl14/
503-1363329-1544755

●参考URL
『Knowledge Forum』
http://www.knowledgeforum.com/
『IKIT』
http://ikit.org/
『トロント大学オンタリオ 教育研究所』
http://www.oise.utoronto.ca/

(特集記事協力:
 三宅正樹/東京大学 大学院 学際情報学府 修士1年
 平野智紀/東京大学 大学院 学際情報学府 修士1年)
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今号でのKnowledge Forumの紹介、お分かりいただけましたでしょうか。
Beatingで知ってもっと学びたくなった、という方のために参考図書も充実さ
せていく予定です。どうぞご期待ください。

では、「5分でわかる学習プロジェクト講座」次号もどうぞお楽しみに!
ご意見・ご感想もお待ちしております。


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■2. 【お知らせその1】公開研究会「BEAT Seminar」2006年度第1回:
                         〜5/20(土)開催!
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今年度第1回となる5月のBEAT公開研究会は、

「『かわいい子にはケータイを持たせよ?!』
   〜キャリア各社の子ども向けケータイサービスへの取り組み」
というテーマで開催します。

私達にとって、生活の必需品となっているケータイ。今や日本人の70%がケー
タイを持つ時代です。ケータイの普及により、私達はいつでもどこでも誰とで
も望むようにコミュニケーションすることができ、また手軽にウェブ上の情報
やサービスを活用できるようになりました。

子どもにとってもケータイを安全で便利な道具として使えるようにすること、
また子どもを保護者と結び危険から守ることが社会的に要請されています。そ
のため、ケータイキャリア各社はさまざまな子ども向けサービスを提供してい
ます。

この研究会では、これらのサービスが目指す「子どもとケータイの理想的な関
係」がどのようなものであるかを踏まえ、ケータイのある環境での新しい学習
をデザインするには何がポイントとなるのかについて、議論を進めていきたい
と考えています。

—————————【第1回 公開研究会 概要】————————————
●テーマ
  「キャリア各社の子ども向けケータイサービスへの取り組み」

●日時
  2006年5月20日(土曜日) 午後2時〜午後5時

●場所
  東京大学 本郷キャンパス 工学部2号館北館 93-B教室
http://www.beatiii.jp/images/sem21-map.gif

●定員
  70名(お早めにお申し込みください)

●参加方法
  参加希望の方は、BEAT Webサイト
http://www.beatiii.jp/seminar/
  にて、ご登録をお願いいたします。

●参加費
  無料

●登壇予定:※現在調整中

■株式会社NTTドコモ
■KDDI株式会社
■株式会社ウィルコム

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2005年度の公開研究会では、いつもたくさんの方々にご参加いただきまして
ありがとうございました。

2005年度は、「デジタル教材の系譜・学びを支えるテクノロジー」と題し、
古今東西のデジタル教材をレビューすることによって、みなさまと一緒に
教育を支える新しい人工物の姿を考えてきました。

この公開研究会でレビューした教材を中心に、次のような本の出版を予定し
ています。
———————————————————————————————————
「デジタル教材の系譜・学びを支えるテクノロジー」(仮称)
2006年出版予定
ベネッセ先端教育技術学講座(編著)
———————————————————————————————————

2006年度の公開研究会でも、みなさまの多数のご参加を心よりお待ちしており
ます。今後の情報をお見逃しなく。


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■3. 【お知らせその2】「BEAT 2005年度研究成果報告会」レポート
                         Webサイトのご案内
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BEATのこれまでの活動の成果を、3/25(土)に開催された「BEAT 2005年度研究
成果報告会」にて報告いたしました。おかげさまで席が足りないほどの盛況で
した。みなさんご参加ありがとうございました。
その内容を BEAT Webサイトにて公開しております。当日出席出来なかった方、
内容を振り返りたい方など、どうぞご覧下さい。

・第12回:BEAT特別セミナー
http://www.beatiii.jp/seminar/020.html

これからもさまざまなかたちで、進捗状況や成果の報告をしていきますので、
みなさんどうぞご期待ください。


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■4. 編集後記
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今年度初号Beating第23号はいかがでしたでしょうか。

次号以降も引き続きBeatingをよろしくお願いいたします。

新年度の出会い、私にとって一番衝撃的だったのは、息子の新しいクラス担任
でした。20歳で学生結婚&出産を成し遂げ、現在小学1年のお子さんがいらっ
しゃる女性の先生です。夫婦共に一生教師を続けていく決心をし、教師就任後、
早々に出産休暇をとらずにすむよう、学生時代に出産するというライフデザイ
ンをされたそうです。そんな生き方もあるんですね。。。
文字通り明るく元気で前向きなお姿に大いなるパワーを頂きました。

人とのインタラクションは新たな気づき、学びを与えてくれます。まさに協調
学習の基本理念ですね。人生そのもの協調学習、人類みな協調学習!?

そして私は「BEAT」から日々多くの気づきや学びを頂いております。皆さまと
BEATを通してつながり合える事に感謝し、共に気づき学び合えるよう日々頑張
っていきたいと思います。

今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。


                        「Beating」編集担当
                             佐藤 朝美
                         satomo@beatiii.jp


-------次回発行は5月第4週頃の予定です。
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します。また、ご本人の同意なく、第三者に提供することはございません。

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無断転載をご遠慮いただいておりますので、転載を希望される場合はご連絡
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□登録アドレスの変更、登録解除などはコチラ
http://www.beatiii.jp/beating/

□ご意見ご感想はコチラ
「Beating」編集担当
佐藤 朝美(東京大学大学院 学際情報学府 山内祐平研究室 修士課程2年)
satomo@beatiii.jp

□「BEAT」公式Webサイト
http://www.beatiii.jp/

□発行
東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」

Copyright(c) 2006. Interfaculty Initiative in information Studies,
The University of Tokyo. All Rights Reserved.
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