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Beating 第86号
2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第4回:協働的な授業関連の活動を組織化するための学生のFacebook利用

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東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
メールマガジン「Beating」第86号     2011年7月26日発行
現在登録数 2,700名

2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第4回:協働的な授業関連の活動を組織化するための学生のFacebook利用

http://www.beatiii.jp/?rf=bt_m086

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みなさま、こんにちは!

いよいよ夏本番ですね。
今年は節電対策が強化され、屋内にいても熱中症が心配されます。
エコ生活のための知恵を絞りつつ、上手に暑い夏を乗り切りたいですね。

では、真夏のBeating第86号のスタートです!

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★CONTENTS★
【特集】2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第4回:協働的な授業関連の活動を組織化するための学生のFacebook利用

1.  お知らせ・BEAT Seminar 2011年度第2回 BEAT公開研究会
「楽しさと学びを融合するシナリオデザイン」開催予告

2.  お知らせ・UTalk 宇宙をひもとく「超ひも理論」

3.  編集後記


特集─────────────────────────────────
━━ 2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第4回:協働的な授業関連の活動を組織化するための学生のFacebook利用
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■2011/06/24 19:38:54
http://twitter.com/#!/beatiii/status/84208871098425344
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Student use of Facebook for organizing collaborative classroom activities
(Lampe et al, 2011)
米国の大学生を対象に、Facebook利用が授業関連の活動に与える影響を調査。
自己効力感、FB上の交流意欲が予測因子として示され、FB利用時間より利用の
仕方が協働活動度合に影響を与える傾向が示された http://t.co/oMZhSzr
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解説
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■問題と目的
Facebook(以下、FB)は、ソーシャルインタラクションのためにデザインされ
たツールを備えたインフォーマルなシステムであり、学生が学術的に利用する
のにふさわしいシステムです。FBのようなソーシャルネットワークサイト(SNS)
は、授業の周辺のインフォーマルなコミュニケーションを促進するでしょう。
また、課題達成を目的とするよりも、インフォーマルな方法で学生を繋ぐこと
の方が、よりよい教育のゴールとなりうるでしょう。しかし、授業活動を組織
化するためにFBがどのように使われているか、また、FBを組織化の目的で再
利用する学生の特徴については、ほとんど明らかになっていません。

そこで本研究では、FBを用いた授業活動の組織化に関係する変数を明らかにす
るために、2つの研究を行いました。研究1ではFBを用いて協働する学生の傾
向に焦点をおき、研究2ではFB上で起こっている協働のタイプの違いに焦点を
あてました。

■■ 研究1 協働のためのFBの利用傾向
(PFC: Propensity of use Facebook for collaboration)■■

研究1では以下の4つの仮説を検証しました。

仮説1:FB利用度と、授業の協働活動としてFBを利用する傾向には、
正の関係があるだろう。

仮説2:自尊心と授業の協働活動としてFBを利用する傾向には、
正の関係があるだろう。

仮説3:大学生活の満足度と授業の協働活動としてFBを利用する
傾向には、正の関係があるだろう。

仮説4:FBで教師とやりとりをする意欲(a. FBで教師のプロフィールを
みる、b. FBで教師とで連絡をとる、c. FBで教師を「友達」登録する)と、
コースの組織化にFBを利用する傾向には、正の関係があるだろう。

また、学生は不正行為としてサイトを利用することもあることから、教師が承
認しない(教師が望まないような)協働というフレームをもうけ、次のような
リサーチクエスチョンをたてました。

RQ1:承認されない協働としてのサイトの利用と、コースの組織化にFBを利用
する傾向にはどのような関係があるか?

■方法
大規模な中西部の大学の学生1,996名を無作為に抽出し、電子メールでオンラ
インアンケートに招待し、SNSの使用状況を調査しました。373人からの回答が
得られ、そのうち97%の360人がFBを使用していました。回答者は、女性66%、
白人88%、上級生(3,4年生)58%、平均年齢20.5歳です。アンケートでは、
FBへの関わり度、生活の満足度、自尊心といった、FB利用に関わる先行研究の
重要な変数を取り上げ、調査しました。また、授業特有のFBへの態度や、独自
に作成した授業の協働のためのFB利用に関する測度を用いて調査しました。

■結果
回帰分析の結果、FBの利用度と、授業の協働活動としてFBを利用する傾向(PFC)
には相関が見られ、仮説1を支持する結果が得られました。しかし、自尊心や
生活の満足度とPFCには相関が見られず、仮説2、3は棄却されました。一方、
FBで教師とやり取りをする意欲とPFCには相関が見られ、仮説4を支持する結
果が得られました。さらに、承認されていない(教師が望まない)協働として
のサイト利用と、PFCには強い相関が見られました。

■考察
以上のことから、FBの利用度は学生のPFCを予測する変数となることが分かり
ました。これはFBに費やす時間が多い学生ほどFBの友人が多く、協働する機
会も多くなるためでしょう。また、FBを頻繁に利用すれば、スキルも高くなる
と言えます。

仮説2の自尊心と仮説3の生活の満足度は支持されませんでした。これらの変
数は異なるタイプの協働になる可能性があり、単一のものさしではかることは
難しいのかもしれません。この問題については研究2で取り上りあげます。

FBで教師とやり取りをする意欲は、PFCを予測する変数となることが明らかに
なりました。しかし学生は教師のFBのプロフィールを見たり、FBで教師と連
絡を取ったりするものの、教師を「友達」登録しないことが分かりました。こ
れは学生が権威的なものから自分の生活を守ろうとすることの表れであると考
えられます。

RQ1の結果からは、学生は教師が望まない方法で課題に協働で取り組んでいる
ことが分かりました。これについても研究2で取り上げます。


■■ 研究2 社会的・心理学的な協働活動の予測 ■■
研究1の結果を踏まえて、研究2では次の4つのリサーチクエスチョンを立て
ました。

RQ1:FBが可能にする授業の協働活動には、どのような
タイプがあるか?

RQ2:心理的に健康な状態であることと、コースの組織化のためにFB を
利用することとの関係は、協働のタイプによって変化するか?

RQ3:どのようなタイプのFBへの自己効力感が、授業の協働活動としてのFB
の利用傾向に影響を与えるか?

RQ4:FBに関連するコミュニケーション活動と、授業の協働活動としてのFB
の利用傾向には、どのような関係があるか?

■方法
大規模な中西部の大学の電気通信学専攻の265人の学生に、SNSの使い方につ
いてオンラインによるアンケート調査を行いました。参加者は、男性が65%、
平均年齢20歳、5%が留学生でした。

FBが可能にする授業での協働を検討するための尺度として、研究1で使用した
PFCに関する質問紙に項目を追加して使用しました。FBの自己効力感について
はオリジナルの尺度を作成しました。また、新しい関係性の開始と社会的情報
探求についてはEllisonらの測度を用いました。

■結果
肯定的・否定的協働活動の傾向から、ふたつの回帰モデルを作りました。

肯定的な協働活動としてのFBの利用傾向のモデルでは、FBの利用度、自尊心、
大学生活の満足度は、肯定的な協働活動と関連しませんでした。一方、FBの
プライバシー設定に対する自己効力感が高い学生ほど、肯定的な協働活動とし
てFBを利用する傾向があることがわかりましたが、FBへの興味とFBでのコミ
ュニケーションへの自己効力感には、関連がみられませんでした。また、学生
は教員にはFBで学習の援助を求めませんが、TAに対する援助要請は肯定的な
協働活動と関連することがわかりました。さらに、新しい関係性の開始は、肯
定的な協働活動と関連がありますが、社会的情報探求は、肯定的な協働活動の
組織化につながらないことがわかりました。最後に、男性は女性よりもFBで協
働活動を行う傾向にあることが確認されました。

否定的な協働活動としてのFBの利用傾向のモデルでは、FBの利用度に関連が
見られました。また、自尊心や大学生活の満足度の心理的な健康状態は、否定
的な協働活動を説明する上で、重要な役割を果たします。高い自尊心を持つ学
生は否定的な協働活動をあまり行わないのに対して、大学生活に満足している
学生ほど否定的な協働活動を行っていました。学生はFBへの興味の自己効力感
が高いほど、否定的な協働活動は行わないことが分かりました。FBのプライバ
シー設定やFBのコミュニケーションの自己効力感は重要ではありませんでし
た。新しい関係性の開始は否定的な協働活動を予測しますが、一方で、社会的
情報探求をする人ほど、否定的な協働活動は行わないことがわかりました。
最後に、学年が重要項目となっており、3、4年生は1、2年生よりも否定的恊
働活動をする傾向にありました。

■考察
この研究では、4つの重要な知見が得られました。

第一に、心理的な健康状態は否定的な協働活動に影響するものの、肯定的な恊
働活動は影響しないことがわかりました。これは高い自尊心が、必ずしも良い
結果をもたらすとは限らないということを示しています。この結果は、指導を
行う教員よりも、むしろ大学の健康管理サービスグループにとって興味深い発
見になるでしょう。

第二に、サイト上のコミュニケーション(例えば他人の事をよく知るために利
用する、知らない人とコンタクトをとるなど)は、肯定的・否定的、双方の恊
働活動を促します。FBで新たな関係を構築することは、協働活動の傾向を高め
ますが、FBで他者について新たな情報検索をすることは、肯定的な協働活動の
傾向を低下させます。

第三に、FBに対する自己効力感のタイプは、協働活動に重要な効果があります。
プライバシー設定に対するFBの自己効力感が高いと、肯定的な協働活動を増加
させます。これは、ツールに対する知識の安心感が増せば、肯定的な利用が増
えることを示しています。興味に対するFBの高い自己効力感は、否定的な協働
活動を減少させ、情報探索スキルが向上すれば、否定的な協働活動が減少する
ことを示しています。

第四に、FBの利用度は、研究1では重要な変数とされましたが、研究2の結果
では重要ではありませんでした。これは、FBの利用方法に統制をかけたために、
研究2の利用度が低く見積もられたと考えています。社会的なプロセスに不可
欠なものとしてFBを見なしたり、FBを協働活動の鍵と見なすことは、どちら
も高いFBの利用を導くでしょう。

最後に、FBは大学生にとって社会的コミュニケーションのプラットホームとし
て広く利用されています。FBを授業の組織化や教師とのサポートなどの協働作
業に使用している学生もいれば、していない学生もいます。FBは、クラス内の
相互作用の新しい形として、ゆるいつながりをサポートし、時間の制約を超え
てクラス活動ができます。将来の研究では、例えば、コースに対する興味が高
まったか、学校に関する自己効力感の向上、コースのコンテンツに対する高レ
ベルの取り決めなど、FBがどのような良い結果をもたらすかについて、評価す
るべきでしょう。FBが独立的に学生の教育的経験に連合的なシフトを引き出す
ことは誰も予期していませんでしたが、今後も大多数の学生が日常的にアクセ
スしているツールは、学生と教師のインタラクションのための新しい形として
サポートしてくれるでしょう。

◎特集記事協力◎
末 橘花/東京大学 大学院 学際情報学府 修士1年

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情報を発信しています。Beatingで紹介している情報以外にも多くの情報を
発信していますので、Twitterをご利用のかたはぜひBEAT公式アカウント
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お知らせ BEAT Seminar  ─────────────────────
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2011年度第2回 BEAT公開研究会
「楽しさと学びを融合するシナリオデザイン」 9月3日(土)開催!
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BEAT(東京大学情報学環ベネッセ先端教育技術学講座)では、
2011年度第2回 BEAT Seminar 「楽しさと学びを融合するシナリオデザイン」
を9月3日(土曜日)に開催致します。

学習環境のデザインにおいて、学習者の意欲を高め、学習活動に引き込む手法
はこれまでにもさまざまな形で提案されています。
ユーザーを活動に引き込むという観点からは、デジタルゲーム開発で
取り組まれている、楽しさを生み出す世界観やコンテンツデザインの手法は
独自の発展を続けています。

今回のBEATセミナーでは、コーエーテクモゲームスで歴史ゲームを
プロデュースされている竹田智一さんと、eラーニング教材開発の専門家
熊本大学の鈴木克明さんにお越しいただき、ユーザーの活動を促進する環境
デザインについて議論します。
みなさまのご参加をお待ちしております。

日時:2011年9月3日(土)14:00~17:00

場所:東京大学 本郷キャンパス 情報学環・福武ホール(赤門横)
福武ラーニングシアター(B2F)
アクセスマップ>>http://www.beatiii.jp/seminar/seminar-map46.pdf

内容:
14:05-14:45
1.講演1「歴史ゲームのシナリオ開発の実際」
竹田智一 (コーエーテクモゲームス)

14:50-15:30
2.講演2「シナリオを重視した学習コンテンツデザイン」
鈴木克明 (熊本大学)

15:40-16:00
3.参加者によるグループディスカッション

16:00-17:00
4.パネルディスカッション「楽しさと学びを融合するシナリオデザイン」
司会:
高橋 薫 (東京大学)
パネリスト:
竹田智一 (コーエーテクモゲームス)
鈴木克明 (熊本大学)
藤本 徹 (東京大学)

定員:180名
参加費:無料
(懇親会:セミナー終了後1F UT Cafeにて 参加希望者(3,000円))


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お知らせ UTalk       ──────────────────────
━━━━━━━━━━ 宇宙をひもとく「超ひも理論」のご案内
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UTalkは、様々な領域で活躍している東京大学の研究者をゲストとして招き、
毎月開催するイベントです。カフェならではの雰囲気、空気感を大切にし、
気軽にお茶をする感覚のまま、ゲストとの会話をお楽しみいただける場と
なっています。

リンゴが地面に落ちるのも、月が地球を回るのも、実は同じ重力に支配されて
います。そんな風に、すぐには見えてこないけど、何かシンプルな法則が宇宙
を支配しているのでは?

8月のTalkのゲストは、理論物理学者の杉本茂樹さん(数物連携宇宙研究機構・
特任教授)。究極の理論と呼ばれる「超ひも理論」では宇宙はどのように描かれ
るのでしょうか。

みなさまのご参加をお待ちしています。

日時:8月20日(土)午後2:00-3:00

場所:UT Cafe BERTHOLLET Rouge(東京大学 本郷キャンパス 赤門横)

http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/access.html

料金:500円(ドリンク付き/要予約)

定員:15名

申し込み方法:(1)お名前(2)ご所属(3)ご連絡先(メール/電話)
(4)このイベントをお知りになったきっかけ、をご記入の上、

utalk2011@ylab.jp までご連絡ください。

※       申し込みの締め切りは8月10日(水)までとします。

なお、申し込み者多数の場合は抽選とさせていただく場合がございます。
ご了承ください。


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 編 集 後 記 ──────────────────────
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Beatingの登録者数が2,700名になりました!
キリ番をゲットしたのはあなたかもしれませんよ。

さて、先月号のお知らせでお伝えしたように、7月30日から高校2年生を対象
にFacebookを活用して進路を考えるSoclaオンラインサマースクールがスター
トします。そこで「@Eduなう!拡大版」ではFacebook関連の論文を取り上げ
てみました。

個人的には、自尊心や満足度が必ずしも肯定的な協働活動につながらないと
いう結果がおもしろいと思いました。また、研究1で結果がでなかった点を
研究2で切り口を変えて再度調査していることに、研究者の執念を感じました。
(笑)このような発想の転換法は自分も見習いたいと思います。

それでは、また次号でお会いいたしましょう!

ご意見・ご感想をお待ちしております。

「Beating」編集担当 高橋 薫 (たかはし かおる)kaorutkh@beatiii.jp

-------次回発行は8月30日の予定です。

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「Beating」編集担当 高橋 薫 kaorutkh@beatiii.jp
(東京大学大学院情報学環ベネッセ先端教育技術学講座 特任助教)

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□発行:東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
Copyright(c) 2011. Interfaculty Initiative in information Studies,
The University of Tokyo. All Rights Reserved.

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