Beating 第43号
2007年度Beating特集「5分で分かる教材評価講座」
☆特別企画☆ 第9回:読者相談室 第2弾!:皆さまからの質問・相談にお答えします!
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東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
メールマガジン「Beating」第43号 2007年12月25日発行
現在登録者1529名
2007年度Beating特集「5分で分かる教材評価講座」☆特別企画☆
第9回:読者相談室 第2弾!:皆さまからの質問・相談にお答えします!
http://www.beatiii.jp/?rf=bt_m009a
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°。+ ° ★ + °。° 皆さまこんにちは。
°。°。 ☆☆°。° 。°楽しいクリスマスをお過ごしですか!?
+ 。。 ☆☆☆。 + 。 それともお仕事!? あるいは大掃除の真っ最中!?
° ☆☆☆☆ °。° いずれにせよ、今年もあと少し!やり残しを片付け、
☆☆☆☆☆ 良い年越しを出来るといいですね。
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□□□□ それでは、2007年度Beating第43号のスタートです!
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┃★CONTENTS★
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┃■1. 特集:2007年度Beating特集「5分で分かる教材評価講座」☆特別企画☆
┃ 第9回:読者相談室 第2弾!:皆さまからの質問・相談にお答えします!
┃
┃■2. 【お知らせ】公開研究会「BEAT Seminar」2007年度第3回
┃ Webサイトのご案内
┃
┃■3. 編集後記
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■1. 特集:2007年度Beating特集「5分でわかる教材評価講座」☆特別企画☆
第9回:読者相談室 第2弾!:皆さまからの質問・相談にお答えします!
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今年度のBeatingでは、BEATの研究をより理解していただくため、学習の「評
価」についてさまざまな観点から紹介し、一年間で皆さまと一緒にその秘訣を
探っていく「5分で分かる教材評価講座」を開講しています。
さらに今年度は、皆さまからの質問・相談にお答えする「読者相談室」という
スペシャルな企画をしております。いよいよその第2弾!厳選されましたテーマ
からワークショップに注目いたしました。
ワークショップ (workshop:以下WS) とは、本来「作業場」や「工房」を意味
する語ですが、最近では「体験型の講座」を指すことが多く、問題解決や
トレーニングの手法として注目されています。まちづくりや人材育成、さらには
アートや社会教育、人間関係や心理学など様々な分野で盛んに行われています。
今回は、実践家として活躍されている方からいくつかの質問を頂きました。
それでは早速、山内祐平先生(東京大学大学院 情報学環 准教授・BEAT併任)
と北村智先生(BEAT客員助教)にお答えしてもらいましょう!
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第9回:読者相談室 第2弾!:皆さまからの質問・相談にお答えします!
テーマ :ワークショップの客観的に評価って!?
ポイント:"目的の明示化"、"目的に対応したデータの評価"
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●山内:
北村さん、WS評価の質問が来ましたね。WSはやっている人は楽しいし、
やって良かったという参加者は多いのだけど、それを説明するのは難しい。
一方で、対外向けや、第三者、あるいは参加者の保護者への説明が求められ
てきている。その点が問題になっているのですかね。
●北村:
それにWSは評価の目的自体もさまざまですね。デザイナーが自分のデザイン
したWSが目的を達成したかを知るため、もしくは研究のための評価、または、
社会貢献活動として行っている企業が評価する場合、あるいはファシリ
テーターの成長を測りたい場合では評価方法が違ってきてしまいますね。
WSの目的も多様であれば、WS評価の目的も多様。これは1つ1つみていく
しかありませんね。
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■疑問点1「そもそも一体何をどのように調べれば良いのでしょう?」
☆Point:目標に対応したデータを収集し、分析する
☆Point:プロセス・プロダクトの評価
●北村:
まず評価を行うためにはデータが必要なわけですから、言語データだけでな
く、行動データ等、WSの最初から最後まできちんと記録を残すということが
必須だと思います。
問題となるのは取った記録をどう分析することなのかなと思います。
どこを見ればいいかは評価するポイントによって決まってきますね。
●山内:
評価ポイントは、目標と対応してれば良いと思います。例えばメディアリテ
ラシーの習得が目標のWSであれば、メディアリテラシー的な視点や思考に
つながるような発話やディスカッションがどれ位あったか、発話をユニット
化し、分析するという方法も考えられますね。
もう少しプレイフルなWSであれば、どれ位笑っていたか?などですかね(笑)
●北村:
1つ目のパターンでは、基本的にはある種望ましいカテゴリーの行動や発話
がどれ位あったかを測る事が挙げられます。これはプロセスを見ていますね。
2つ目にはプロダクトが挙げられます。WSでは何か作品を作ることが多いと
思うのですが、作品には作者の色々なものが表れています。評価のカテゴリー
を決め、複数で評価するという方法もありますね。
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■疑問2「客観的に評価するための評価尺度はありますか?」
☆Point:デザインの目的に対する評価
☆Point:意図していない現象に対する評価
☆Point:データの取得を活動の中に組み込む
●北村:
目的や内容が多様であるWSは、このモノ差しを使えばばっちり!という、
汎用的な尺度はないでしょう。先にも述べましたが、デザインのコンセプト
が達成されたかどうかを調べる方法は、WSごとに目的や内容が異なるので、
それぞれの評価尺度を考えなければいけません。
●山内:
WSでは、デザイナーが意図していない効果も出てきてしまうのも事実です。
けれどもその効果が、実はデザインから誘発された場合もありますので、
調べる必要もあるでしょう。ネガティブなズレが生じてしまった場合であれ
ば、デザインにフィードバックしなくてはなりませんね。
●北村:
デザイナーは、学習環境の構成要素として「空間」、「活動」、「モノ」、
「人」の各々に意図をこめているのだと思いますが、それらも全体として
捉えるのではなく1つ1つ意図通りに有効に機能していたかをみていく必要
必要があります。
●山内:
WSを客観的に評価するためには、意図した要素の個別的な評価を組み合わせ
て見ていく仕組みを考えていかなければならないわけですね。と同時に意図
しない現象に対しては、デザインから誘発されたものなのか、デザインが
機能しなかったのかを見極める必要もあるわけです。
●北村:
参加者の満足度を測るためにはアンケートという方法がパッと思いつきそう
ですが、僕はWSの活動にそぐわないと思います。むしろ、活動の最後のほう
で、「活動で得た気づきを語る」のような活動を組み込んでおくと、データ
として取得できますね。
WSの評価では、評価として取れるデータを活動自体に組み込んで、雰囲気を
壊さずにデータ収集を行うことがとても大切なポイントであると思います。
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■疑問3「長期的な効果はどう評価したらいいのでしょう?」
☆Point:記憶が追える範囲での縦断的な評価
☆Point:コストに見合った評価
●山内:
WSのデザイナーの方々の中には、即時的な効果だけではなく、長期的な効果
を考慮している方が多いかもしれません。そのような効果を測るにはどうし
たら良いでしょうか?
●北村:
企業研修では、直後に本人に何を覚えていたかを聞くだけでなく、前回の
Beating特集で説明したドナルド・カークパトリックによる「レベル4フレー
ムワーク」の
3.Behavior:学習内容の活用状況を測定
(実際に職場で活用しているか)
4.Result :行動変容によって得られた組織貢献度を測定
(学習内容を活用しビジネス成果を向上させたか)
のようなケースもありますね。
http://www.beatiii.jp/beating/042.html
やろうとするにはそういう方法があるとは思うのですが、WSでは、費用対
効果に見合わないかもしれませんね。
●山内:
確かに実践者が行うのは難しいかもしれませんが、研究では、縦断的研究と
いうのがあります。メディアの影響などを見る場合などや授業研究でも行わ
れています。
ただし、1年後位であれば子どもでも記憶が残っているのでデータを取ること
が出来ますが、10年後となると要因が拡散しているので、生み出された新しい
意味に影響しているものが何かを特定するのが難しいですね。
いずれにせよ、WSに限ったわけではなく、長期的な影響を評価することは
難しいといえます。
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■疑問4「WSデザイナー(ファシリテーター)を評価したいのですが。」
☆Point:反省会などでの相互評価
☆Point:徒弟的な学び
●山内:
教師が作る授業にもデザインとデザイニングの概念があります。あらかじめ
計画しているのがデザインで、即時的に意思決定してその場で対応していく
のがデザイニング。デザイニングが出来るのがベテランの教師といわれてい
ます。これはファシリテーターも同じでしょう。
ただし、このようなスキル評価はペーパー等の自己評価だと難しいですね。
●北村:
参加者同士で行う相互評価が確実だと思います。WSの現場は、例えば初心者
の失敗で問題が起きた時でも、ベテランが誰にも気づかれないようにフォロー
し乗り切るケースも多々あります。そのような場合でもWS後の反省会などで
お互いを評価すれば、お互いの力量が見えてくるのだと思います。
●山内:
そこでの初心者の学びは大きいかもしれませんね。
WSを行う集団はある種のコミュニティなので、ファシリテーターをランク付
けし、評価を行うというよりは、反省会のような機会の中で自然にお互いの
評価を共有していくというほうがWSらしい評価かもしれませんね。
ファシリテーターの力量は、状況や内容に依存する部分がとても大きいので、
事例を通しながら徒弟的に学んでいくことが多いですね。
●北村:
もう少し手堅く行うのであれば、ポートフォリオ的にポジティブなものを
含めてWSの経験を蓄積し、人材育成データベース化していくという方法も
あるでしょう。
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■疑問5「WSでとても重要な"雰囲気"って測れないものですか?」
☆Point:代替指標を考える
☆Point:雰囲気を感じる元は何かを特定する
●山内:
雰囲気の研究をしている人は確かにいるんですが、それを適用できるか
どうかは難しいですね。
●北村:
雰囲気自体を測る事が出来なければ代替指標を取るしかないのです。
例えば、「場」から生成された心地よい空気感や熱のようなものが漂ってる
と何が変わるのか?というのを現象的に捕らえることが出来るのであれば
それを見ればいいわけです。
●山内:
逆にいうと何かを読み取っているから熱と感じているわけですね。
よく考えると思い当たる節があるわけで、それを言語化出来ればある程度
測ることが出来ます。
例えばですけど、参加者がWS終了後、さっと帰るのか?それともじわじわ
喋っているのか?の差は帰りたくないという感情の高ぶりの持続が影響し
てますね。そのような状況が熱として感じられたりするわけです。そこから
測れる所もあるかもしれません。そこで喋っている内容も、質的にみれば、
WSについてなのか、全く関係ないものなのかによって感じてくることも
変わってくるわけです。
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■まとめ
●山内:
このようにWSの評価の難しさについて話してくると、実は評価することが難
しいというのではなく、目的を明示化し、言語化することが難しいというこ
との問題が浮き彫りになりますね。デザイナーがWSの目的をきちんと突き
詰めて明示化し、言語化する作業が必要なのかもしれません。
●北村:
WS全体の目標だけでなく、いくつかのレイヤーに分け、デザインの意図を細
かく言語化することも必要でしょう。複数ある意図の1つ1つを丁寧に分析し、
また、偶然発生したものに対しても、意図したデザインから影響されたもの
かどうかを見極めていけば、複雑な要素が絡み合っているように見えるWSの
中で、何がどのように効いているのか分かってくるのだと思います。
●山内:
WSの実践記録が評価つきで残っていくようになれば、WSを学習素材にするこ
とができます。そうなると徒弟制だけではなく学ぶことができ、WSの多様性
を生み出す可能性につながるのではないかと思います。
少なくとも今回の相談室において応募下さった実践家の皆さんだけでも、
評価の重要性を感じ、方法についての悩んでいるという事が分かりました。
今回の読者相談室が少しでもそうした皆様の助けになれば幸いです。
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●参考文献
『ワークショップ—新しい学びと創造の場』中野 民夫 (著) 、2001、岩波新書
(特集記事協力:山内祐平(東京大学大学院 情報学環 准教授・BEAT併任)
北村智(BEAT客員助教))
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「5分でわかる教材評価講座」次号もどうぞお楽しみに!
ご意見・ご感想もお待ちしております。
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■2. 【お知らせ】「2007年度 第3回 BEAT Seminar」Webサイトのご案内
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2007年度第3回となる12月のBEAT公開研究会は、
「子どもの放課後学習環境」
というテーマで開催致しました。
多くの方々のご参加、ありがとうございました。
当日は、株式会社ベネッセコーポレーションの木村治生氏、株式会社リクルート
の藤井繁子氏、コクヨ株式会社の安永哲郎氏より、子どもが放課後や休日にど
のように学んでいるのかについて、各分野からのご報告がありました。
その内容を BEAT Webサイトに本日公開いたしました。当日出席出来なかった
方、内容を振り返りたい方など、どうぞご覧下さい。
「2007年度 第3回 BEAT Seminar」12/1(土)
http://www.beatiii.jp/seminar/032.html?rf=bt_m009
3/26(土)の第4回 BEAT Seminar 成果報告会プログラムも現在企画検討中です。
詳細が決まりましたらまたWeb、メルマガ等でお知らせいたします。
今しばらくお待ち下さい。そして、どうぞお楽しみに!
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■3. 編集後記
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Beating第43号はいかがでしたでしょうか。
ワークショップといえば、私はいつも息子の付き添いばかりなのですが、
先日は、自身が参加者として、東京大学教育学部で行われた
「幼児教育と小学校での物理的活動:ビー玉転がし(斜面と経路)をめぐって」
というリタ・デブリーズ先生のワークショップに参加してきました。
デブリーズ先生は、幼児教育の分野でピアジェ理論にもとづくカリキュラムの
開発を行っています。このワークショップでは、ピアジェ理論でいうシェマ
(認知的枠組み)を用いて環境に働きかけ、フィードバックにより調節を行う
という一連の流れをビー玉転がしによって体感するというものでした。
参加者は幼稚園の先生が多く、作る姿を観察されるといういつもとは逆転の立
場ということで、最初はぎこちない様子でしたが、一緒に失敗を体験していく
うちに、気がつくと自然に役割分担をしながら、夢中になってビー玉を転がす
通路を作っていました。まさに、参加体験型の面白さを実感することができま
した。来年もまた、さまざまな参加体験にトライしてみたいと思います。
それでは、皆さま良いお年をお迎え下さい。
年明けのBeatingもお楽しみに。
「Beating」編集担当
佐藤 朝美
satomo@beatiii.jp
-------次回発行は1月第5週頃の予定です。
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「Beating」編集担当 佐藤 朝美
(東京大学大学院 学際情報学府 山内祐平研究室 博士課程1年)
satomo@beatiii.jp
□「BEAT」公式Webサイト
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□発行
東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
Copyright(c) 2007. Interfaculty Initiative in information Studies,
The University of Tokyo. All Rights Reserved.
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