UTalk / 田んぼから見える自然と人

富田 晋介

農学生命科学研究科・助教

第38回

田んぼから見える自然と人

5月のUTalkのゲストは、ラオスに通い、村に長期滞在し調査を続けている富田晋介さん(農学生命科学研究科・助教)。稲と雑草の関係や、土地利用の歴史など、田んぼを多角的に調べることで自然と人間のかかわりを解き明かそうとしています。 フィールドワークから見えてくる自然資源の活用について考えます。

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 今回のUtalkは東南アジアの社会生活について研究されている農学部助教の富田さんをゲストにお迎えしました。工学部出身でもともとロケット開発を目指していた経歴をお持ちですが、バックパッカーとしてアジアを旅することも好きで、大学院から農学へと転向されたそうです。とても気さくな方で、終始和やかに会は進められました。

 東南アジアを研究フィールドにしたのは、農学部の修士課程時代の指導教官に「君、タイに行くことになってるから」と言われ、入学したての5月から知識も経験もないまま半年間タイに滞在したことがきっかけだそうです。整然と苗がならび雑草がほとんど見当たらない日本の田んぼと比較すると、タイの田んぼは、雑草だらけであったり、大きな樹がはえたままだったり、あまり手入れがいきとどいていないかのように見えたそうです。そして、そこに着目して調査をはじめたとのこと。雑草の種類と数を丹念に調べることで、農薬を撒くのではなく、雑草と共存しながらも、現地の人たちにとって「バランスよく」保たれている田んぼの現状がみえてきたそうです。

 現地の田んぼを詳細に研究するためにある農家の家に長期滞在したことで、興味の主体が田んぼ単体だけではなく、現地の方々の生活へとひろがっていったそうです。その結果、東南アジアの家族・社会全般を専門にするようになったそうです。
 
続いて調査に入ったラオスでは、土地の歴史を調べたそうです。記録がほとんど残っておらず、誰がいつ開墾したのか、誰が使っていたのか、という土地の履歴を聞いていくことで、ある村の100年の歴史が見えてきたそうです。土地の履歴は家族の歴史、村の歴史そのものだったとのこと。

 ラオスは社会主義国で規制もあり、調査のために村へ入る事ができるようになったのは近年になってからのことだそうです。現地の研究機関と協議したり、研究成果のフィードバックを調査協力者にするなどして、徐々に今日に至る関係性を築いたそうです。現地では、政府当局関係者の農家へまず案内されることが多いそうですが、富田さんは多くの村や農家に足を運び、生のラオスの方々の声に耳を傾けているそうです。

 参加者からは、日本と東南アジアの田んぼの違いや、現地の生活についての質問が寄せられていました。たくさんの写真を用意して、研究成果のみならず、長期のフィールドワークによって得たゆたかな経験も含めてお話してくださいました。富田さん、お集まりいただいたみなさま、ありがとうございました。

 [アシスタント:池尻良平]