UTalk / 生きている地球

沖野 郷子

海洋研究所・准教授

第11回

生きている地球

水深2000mの火山と温泉

海の底はどんな形をしていて、そこでは何が起こっているのでしょうか。 1月のUTalkでは、インド洋やフィリピン海に出かけて調査をしている沖野郷子さん(海洋研究所・准教授)に400度の熱水が湧く海底火山についてお聞きします。

 1月10日のゲストは、東京大学海洋研究所准教授の沖野郷子さんにお越しいただきました。
 沖野さんは、海底地形の研究をなさっていて、「生きている地球―水深2000mの火山と温泉―」をテーマに、通常見ることのできない海底にある火山 の特徴や、そこから湧き出る温泉の特徴について、話題提供いただきました。海底の地形がわかる世界地図や写真、岩石など、たくさんの資料を持ってきていただきました。
  
 まず、実際に海底から採取した岩石を見ながら話がはじまりました。海底火山では、噴火したマグマが周囲の海水によって急速に冷やされるとのこと。岩石の性質を分析することで、海底地形や海底火山のことがわかるそうです。
 実際に海底から採取した岩を、断面図が見えるように真っ二つに切った状態で見せていただきました。参加者のみなさんは、へぇといった表情で回ってくるその岩を興味津々で触っていました。
 
 また、海底から噴き出ている温泉は、400℃にもなり、その付近には、今までには確認されていなかった生物も見つかったらしく、その写真も見せてい ただきました。温泉の近くにいる生物は、酸素ではなく硫黄や水素をエネルギー源にしており、光合成にたよらないエネルギー摂取は他に例がなく、最も原始的 な生物として生物学者からも注目を浴びているそうです。
 生物の特徴は温泉の質によって異なり、それは岩石にふくまれる成分によるものであると考えられているそうです。

 さらに、実際に海底に行くときに乗る潜水船のお話もしていただき、参加者はフィールド調査の大変さや、調査技術の進歩を知って驚いた様子でした。質問も多く飛び出し、時間を超えて、海底の魅力や不思議さについて語っていただきました。
 沖野さんの話を聞いて、「地球が日々変化していること」や「生物と環境は密接に結びついていること」を改めて認識することができました。

 貴重な時間を作っていただいた沖野さんをはじめ、寒い中お越し下さった参加者の皆様、ありがとうございました。

[アシスタント:池尻良平]