Prev

Next

Beating 第87号
2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第5回: オンライン協調学習のディスカッションに対する効果的なフィードバック・モニタリング・評価の提供

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
メールマガジン「Beating」第87号     2011年8月30日発行
現在登録数 2,728名

2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第5回: オンライン協調学習のディスカッションに対する
効果的なフィードバック・モニタリング・評価の提供


http://www.beatiii.jp/?rf=bt_m087

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

みなさま、こんにちは!

日中は日差しの強い日が続いていますが、夜風はだいぶ秋の気配が漂ってきま
したね。コンビニの店頭には秋色のパッケージのビールも登場し始めました。
既に新学期がスタートした地域も多いのではないでしょうか。

では、行く夏を惜しみつつBeating第87号のスタートです!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★CONTENTS★
【特集】2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第5回:オンライン協調学習のディスカッションに対する
効果的なフィードバック・モニタリング・評価の提供

1.お知らせ・BEAT Seminar
2011年度第2回 BEAT公開研究会
「楽しさと学びを融合するシナリオデザイン」開催迫る!

2.お知らせ・UTalk
「何故、ウナギの卵は2000年間見つからなかったのか」のご案内

3.編集後記


特集─────────────────────────────────
━━ 2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第5回:オンライン協調学習のディスカッションに対する効果的なフィード
バック・モニタリング・評価の提供
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■2011/07/05 09:17:39
https://twitter.com/#!/beatiii/status/88038796804898818
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
──
解説
──
(Caballe,et al, 2011)オンライン上のディスカッションプロセスにおいて
効果的なフィードバック・評価・モニタリングを行うために、どのように学習
が発達し認知プロセスが構築されるかという観点から社会言語学的な対話
モデルを提案した研究  http://ht.ly/5wuQE

■理論的な背景と目的■
学習と知識構築は、知識社会に生きる人々にとって重要な能力となっています。
本稿では、オンライン上でのディスカッションにおいて、どのように学習が進
化し、どのように認知的なプロセスが構成されるかを理解のための、社会言語
学的対話モデルを提案します。

本研究では以下の3つのモデルを統合して使用します。

1. 交渉言語交換モデル(the negotiation linguistic exchange model)
(Martin,1992) このモデルの主要なカテゴリーは次の3つです。
・情報を与えるやりとり(give-information exchange)
学習パートナーの心理状況を変えることを目的として、ある状況について
パートナーに伝えること。
・情報を引き出すやりとり(elicit-information exchange)
パートナー自身が自分でも気づいていない心理状況(知識、信念、態度、臨み、
能力)を引き出すこと。
・問題提起のやりとり(raise-an-issue exchange)
参加者によって定められた問題や質問といった論点をあげることであり、自身
の知識や信念といった心理状況の発見を促すこと。

2. ディスコース寄与モデル(a model of discourse contributions)
 (Clark & Schaefer, 1989)
ディスコースのやりとりには、義務的なムーブ(obligatory move)がディス
コースに寄与するものがあります。協調的な会話は、一緒に活動する学習者に
よる協調行動としてみなされ、その結果として、対話の成功のための会話
の単位である典型的なターン(ムーブ)となります。結果として、義務的ムー
ブはやりとりが成功したという証拠になります。

3. 参加ターンに潜む学習行動のタイプ(the types of learning actions
 underlying a participant turn )(Self, 1994)
ムーブのタイプの量や質は、やりとりの対話ゴールを達成しようとするメンバ
ーの共同の努力によって測定されます。やりとりの完了は、参加者全員がもつ
共通の信念(対話ゴールの達成)を表現しています。さらに、異なる参加者同
士での知識の構築や達成も含まれています。

以上のような協調学習のプロセスの向上に寄与するオンラインディスカッショ
ンのインタラクションモデルをもとに、学生の参加を促し、個々のパフォーマ
ンスを向上させるディスコースの側面を考慮したツールを作成し、検証しまし
た。

■方法■
■対象
インターネット上で高等教育を提供するOpen University of Catalonia(UOC)
の情報学科の大学院生・学部生730名で、2週間の実験に参加しました。同校
では非同期型のグループでのディスカッションに付加価値を与えるために、
教育モデルの柱の一つとしてオンラインでのディスカッションを組み込んでい
ます。また、学生のモニタリングや評価を効果的に行うために、適切なツール
となるディスカッションフォーラムの開発を進めています。学生は2つのグル
ープに分けられ、旧来の非同期型スレッドのディスカッションフォーラムを使
用するグループと(ST群)、新たにデザインされたディスカッションフォーラ
ムを使用するグループ(DF群)に分けられました。

■新たなディスカッションフォーラム(DF)について
新たにデザインされたDFでは、ユーザーは投稿する際に、ディスカッションへ
の寄与に関して、自分のコメントを以下の枠組みに基づいて分類します。
(本枠組みは前述のモデルをもとに作成)

○コメント分類の枠組み
<援助する>
・あいさつ
・励まし
・動機付け
<情報を引き出す>
・情報を求める
・精緻化を求める
・明確化を求める
・意見を求める
・説明を求める
<情報を与える>
・情報を広げる
・情報を誘導する
・情報を提案する
・情報を精緻化する
・情報を説明/明確化する
・情報を正当化する
・情報を述べる
・情報に賛成する
・情報に反対する
<問題を提起する>
・問題を述べる
<解決策を与える>
・問題を解決する
<解決策を承諾する>
・問題の解決策を広げる
・問題の解決策を評価する

また、チューターや参加者は、進行中のディスカッションにおける内容の質や
有用性の観点からコメントが評価されます。

■フィードバックの提供
すべてのやりとりはDFに記録され、以下の観点について、討論参加者や
チューターにディスカッションのフィードバックを行います。

1.活動(activity)
参加行動を、順向・逆向・支持(もしくは賛成)に分類
2.受動性(passivity)
他の人のコメントをただ読み解くだけの人は受動的な参加者と判定
3.影響(impact)
初期値として0から1の間で割り当て、対話で受けた反応の数に従って増減
4.有効性(effectiveness)
ムーブの有効性を同意のコメントを受け取った数で計算
5.評価(assessment)
チューターおよびピア(peer)評価の指標は、ディスカッションプロセスを
モニターしていた講師によって内容の質を、ディスカッションに参加した学生
によって有用性への寄与を、0~10の11段階で評価

■結果■
定量的分析として、ST群とDF群の参加者数、スレッド数、投稿数を比較しま
した。また、質的分析として、ST群とDF群の双方のスレッドから、十分な議論
が行われているスレッド(7つ以上のコメントがついているもの)を抽出し、
双方の内容の質を考慮し、学生の知識獲得の進化を比較しました。

定量的な分析として、参加者ひとりあたりの投稿数を比較したところ、DF群は
ST群よりも有意に多く投稿していることが分かりました。また、スレッドあたり
の投稿数もDF群はST群よりも有意に多く投稿しており、ひとつのテーマに
ついて多くの議論がなされていることが明らかになりました。

質的な分析では、DF群はスレッドの議論の質を向上させた学習者が32%、変化
なしが68%で、低下した者はいませんでした。一方、ST群は有意に向上させた
例は見られませんでした。

また、チューターは、新たなDFについて、ディスカッションのモニタリング
に使用することは有望であると述べています。一方で、システムから出された
最終得点が、チューターから出された得点よりも、平均して1.1点低かったこと
から、矛盾があるともいえます。今後は特に半自動式の評価アプローチの
評価過程の妥当性を確認することが必要でしょう。

■まとめ
本稿では、参加行動、知識構築、パフォーマンスの観点から、協調学習のプロ
セスの向上に寄与するオンラインディスカッションのインタラクションモデル
のための、概念的なフレームワークについて述べました。学生の参加を促し、
個々のパフォーマンスを向上させる明らかな鍵となるディスコースの側面を
考慮することは、インタラクティブな学習環境の開発において、重要な一歩を
踏み出したと考えています。

◎特集記事協力◎
末 橘花/東京大学 大学院 学際情報学府 修士1年

--------------------------------------------------------------------
BEATはTwitterを利用して教育やICTに関する最新情報や、BEATに関する
情報を発信しています。Beatingで紹介している情報以外にも多くの情報を
発信していますので、Twitterをご利用のかたはぜひBEAT公式アカウント
(@beatiii)をフォローしてみてください。
http://www.twitter.com/beatiii
---------------------------------------------------------------------


━━━━━━━━━━━
お知らせ BEAT Seminar  ─────────────────────
━━━━━━━━━━━
2011年度第2回 BEAT公開研究会
「楽しさと学びを融合するシナリオデザイン」 9月3日(土)開催迫る!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
BEAT(東京大学情報学環ベネッセ先端教育技術学講座)では、
2011年度第2回 BEAT Seminar 「楽しさと学びを融合するシナリオデザイン」
を9月3日(土曜日)に開催致します。

学習環境のデザインにおいて、学習者の意欲を高め、学習活動に引き込む手法
はこれまでにもさまざまな形で提案されています。
ユーザーを活動に引き込むという観点からは、デジタルゲーム開発で
取り組まれている、楽しさを生み出す世界観やコンテンツデザインの手法は
独自の発展を続けています。

今回のBEATセミナーでは、コーエーテクモゲームスで歴史ゲームを
プロデュースされている竹田智一さんと、eラーニング教材開発の専門家
熊本大学の鈴木克明さんにお越しいただき、ユーザーの活動を促進する環境
デザインについて議論します。
みなさまのご参加をお待ちしております。

日時:2011年9月3日(土)14:00~17:00

場所:東京大学 本郷キャンパス 情報学環・福武ホール(赤門横)
福武ラーニングシアター(B2F)
アクセスマップ>>http://www.beatiii.jp/seminar/seminar-map46.pdf

内容:
14:05-14:45
1.講演1「歴史ゲームのシナリオ開発の実際」
竹田智一 (コーエーテクモゲームス)

14:50-15:30
2.講演2「シナリオを重視した学習コンテンツデザイン」
鈴木克明 (熊本大学)

15:40-16:00
3.参加者によるグループディスカッション

16:00-17:00
4.パネルディスカッション「楽しさと学びを融合するシナリオデザイン」
司会:
高橋 薫 (東京大学)
パネリスト:
竹田智一 (コーエーテクモゲームス)
鈴木克明 (熊本大学)
藤本 徹 (東京大学)

定員:180名 (若干お席がございますので、お早めにお申し込みください。)
参加費:無料
懇親会:セミナー終了後1F UT Cafeにて 参加希望者(3,000円)

お申込みはこちら
↓↓↓↓↓↓↓↓

http://www.beatiii.jp/seminar/index.html



━━━━━━━━━━
お知らせ UTalk       ──────────────────────
━━━━━━━━━━
「何故、ウナギの卵は2000年間見つからなかったのか」のご案内
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

UTalkは、様々な領域で活躍している東京大学の研究者をゲストとして招き、
毎月開催するイベントです。カフェならではの雰囲気、空気感を大切にし、
気軽にお茶をする感覚のまま、ゲストとの会話をお楽しみいただける場と
なっています。

ウナギは謎に包まれた生物。稚魚も卵を持った親も見つからないので,
リストテレスが「ウナギは泥の中から自然発生する」と記したほどです。
9月のUTalkでは,世界で初めてウナギの卵を発見した塚本勝巳教授(大気
海洋研究所)をお招きします。ウナギの生態は一体どこまで分かっている
のでしょうか?
みなさまのご参加をお待ちしています。

日時:9月24日(土)午後2:00-3:00


場所:UT Cafe BERTHOLLET Rouge(東京大学 本郷キャンパス 赤門横)


http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/access.html


料金:500円(ドリンク付き/要予約)


定員:15名


申し込み方法: (1)お名前(2)ご所属(3)ご連絡先(メール/電話)
(4)このイベントをお知りになったきっかけ、をご記入の上、

utalk2011@ylab.jp までご連絡ください。

※申し込みの締め切りは9月16日(金)までとします。

なお、申し込み者多数の場合は抽選とさせていただく場合がございます。
ご了承ください。


━━━━━━━━━
 編 集 後 記 ──────────────────────
━━━━━━━━━
Beating87号はいかがでしたでしょうか。

2011年09月17~19日に日本教育工学会第27回全国大会(首都大学東京/
南大沢キャンパス)が開かれます。BEATからは2010年度のSoclaプロジェクト
の成果の一部を発表します(一般研究/ポスター発表)。詳細は以下のサイトを
ご覧ください。

http://blog.beatiii.jp/presentation/27.html

それでは、また次号でお会いいたしましょう!

ご意見・ご感想をお待ちしております。

「Beating」編集担当 高橋 薫 (たかはし かおる) kaorutkh@beatiii.jp

-------次回発行は9月27日の予定です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本メールマガジンのご登録先は、ベネッセ先端教育技術学講座です。ご登録
にあたって、お知らせいただいたお名前・メールアドレスなどの個人情報は、
ベネッセ先端教育技術学講座にて、「Beating」からのお知らせのためだけに
使用いたします。また、ご本人の同意なく、第三者に提供することはござい
ません。

「Beating」はお申し込みをいただいた方々に配信しています。無断転載は
ご遠慮いただいておりますので、転載を希望される場合はご連絡下さい。

□登録アドレスの変更、登録解除などは
  http://www.beatiii.jp/beating/?rf=bt_m087b

□ご意見・ご感想は…
「Beating」編集担当 高橋 薫 kaorutkh@beatiii.jp
(東京大学大学院情報学環ベネッセ先端教育技術学講座 特任助教)

□「BEAT」公式Webサイト http://www.beatiii.jp/?rf=bt_m087c

□発行:東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
Copyright(c) 2011. Interfaculty Initiative in information Studies,
The University of Tokyo. All Rights Reserved.

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

Prev

Next

PAGE TOP