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Beating 第26号
2006年度Beating特集「5分でわかる学習プロジェクト講座」
第4回:ゲーム・プログラミングによる学び方の学び〜『Scratch』

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  東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」   
  メールマガジン「Beating」第26号     2006年7月25日発行    
                        現在登録者1120名   
  2006年度Beating特集「5分でわかる学習プロジェクト講座」
   第4回:ゲーム・プログラミングによる学び方の学び〜『Scratch』

           http://www.beatiii.jp/
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みなさんこんにちは。お元気でお過ごしでしょうか?

世間ではもうすっかり夏休み! なのに、すっきりしないお天気で、今ひとつ
レジャー気分が盛り上がりませんね。

天気とは対照的に「BEAT」の活動は、活発に盛り上がっております。
先月の公開研究会〜Web2.0で創る〜『みんながちょっとずつ頭がよくなる世界』
は、ほぼ満員。多くの方が足をお運び下さいました。

また、8月開催予定の第3回公開研究会『ゲーム・ルネッサンス:いつか来た道、
これからの道』は、登録開始後間もなく定員に達しております。

どんよりした気分の際には、是非「BEAT」の活気ある活動に注目し、気分を盛
り上げてください!!

では、2006年度Beating第26号のスタートです!

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┃★CONTENTS★
┃■1. 特集:2006年度Beating特集「5分でわかる学習プロジェクト講座」
┃   第4回:ゲーム・プログラミングによる学び方の学び〜 『Scratch』
┃
┃■2. 【お知らせその1】公開研究会「BEAT Seminar」2006年度第4回:
┃                         〜9/2(土)開催!
┃
┃■3. 【お知らせその2】東京大学大学院教育学研究科
┃   教育測定・カリキュラム開発(ベネッセコーポレーション)講座
┃                         国際研究会のご案内
┃
┃■4. 編集後記
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■1. 特集:2006年度Beating特集「5分でわかる学習プロジェクト講座」
   第4回:ゲーム・プログラミングによる学び方の学び〜『Scratch』
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今年度のBeatingでは、BEATの研究をより理解していただくため、Beatingで昨
年度までに見てきた学習理論を土壌に、世界各地で花開いている学習プロジェ
クトを、1年を通じてみなさんに紹介していく講座を開講いたします。

昨年度のBeatingバックナンバー
http://www.beatiii.jp/beating/index.html

「◯◯理論とは言うけれど、いまいち具体的なイメージがわかないなあ…」
「どうやったら教室や学びの場に実際に使えるのだろう?」そんな声にお答え
するべく、今年度のBeatingでは古今東西学習プロジェクトの"いま"を、
みなさんにお届けしていきます。

朝の電車に揺られながら、お昼のお供、風呂上がりの一時に、軽く目を通して
いただくことで、世界各地の学習プロジェクトの現在が見えてくる。また、一
年を通して読み続けると、学習プロジェクトの歴史から現在のトレンド、未来
までをも考えられる、盛り沢山な内容を用意しています。

第4回目の今回は、ゲーム・プログラミングのお話です。

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第4回:ゲーム・プログラミングによる学び方の学び〜『Scratch』

国・発足年:アメリカ 2003年
代表者    :ヤスミン・カファイ
所属      :カリフォルニア大学ロサンゼルス校、MITメディアラボ


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■ものを作ることを通じて新しい知識を作るシステム
マサチューセッツ工科大学のシーモア・パパートはかつて、心理学者ピアジェ
の理論に基づき、学習に関する「構成主義(Constructionism)」という考え
方を打ち立てました。ちょっと難しい話になりますが、これは、学習者が環境
に働きかけ、ものを作る(構成する)ということを通じて、何らかの新しい知
識を得る(構成する)という、二重性を持った概念です。彼はこの考え方に基
づき、Logoというプログラミング言語を開発しました。

Logoと構成主義については、2005年6月のBEAT SeminarとBeating13号でも紹介
されています。
http://beatiii.jp/seminar/011.html
http://www.beatiii.jp/beating/013.html

Scratchは、このようなパパートの構成主義の考え方を引き継いだ、オブジェク
ト指向のプログラミング環境、簡単に言うと、ゲームを作ることでプログラミ
ングの基礎を学ぶことができるソフトウェアです。パパートの弟子で、カリフォ
ルニア大学ロサンゼルス校のヤスミン・カファイらによって開発されました。



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■コンピュータ・クラブハウスという放課後学習センターの活動
マサチューセッツ工科大学は、世界14カ国75箇所にコンピュータ・クラブハウ
スという子どもの放課後学習センターを持っています。ここでは、10歳から18
歳までの経済的に貧しい子どもたち20000人以上が、従来の学校とは別に、コ
ンピュータを使ったプログラミングなどの技術を学んでいます。Scratchは、
おもにこのコンピュータ・クラブハウスの子どもたちを対象に行われています。

コンピュータ・クラブハウスには視覚的デザインの文化があり、子どもたちは
Photoshopなどの高度な画像処理ソフトウェアを使ったグラフィックデザインを
制作し、自らの表現手段としています。しかし、プログラミングに関しては、
うまくできる子どもはほんの少ししかいません。Scratchは、コンピュータ・ク
ラブハウスにプログラミングの文化を定着させ、より深い情報技術の理解を促
進することを目論んだプロジェクトでもありました。



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■ゲームのプログラミングで「学び方を学ぶ」!
では、Scratchがどんなものなのか、詳しく見ていきましょう。

Scratchは、GUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェイス)を用いたプログ
ラミング環境です。「右へ何マス動く」「音を鳴らす」など、一つひとつのコ
マンドがレゴのブロックのようになっていて、それを組み合わせることで、
ゲームのプログラムを作っていきます。この種類のブロックにはあの種類のブ
ロックしかつながらない、というように、ブロックの組み合わせ方はある程度
決まっているので、子どもたちはプログラムの間違いをすることなく、直感的
にコマンドを組み合わせていくことができます。

また、画像や音楽を外部から取り込んでくることができるため、従来のプログ
ラミングとは違い、複雑な操作なしで、質の高いさまざまな画像や音楽をゲー
ムに利用することができます。

さらに、制作したものを簡単に共有できることも、Scratchの特徴のひとつです。
子どもたちはインターネットを通じてお互いの作ったものを見ることができ、
そこからほかの子どもたちのプログラミングのやり方を学び、自分のプログラ
ムに活用することができます。このブロックを使ったプログラミングという考
え方は使っている言葉に依存しないので、言葉を越えた世界的なコラボレー
ションも可能になります。



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■Scratchの良いところは? 〜Logoを超えて
Scratchで学ぶことで、いったいどんな良いことがあったのでしょうか? 
実は、Scratchは現在も進行中のプロジェクトであり、きちんとした評価はまだ
行われていません。ここでは、Logoと比較したScratchの良い点を挙げておきた
いと思います。

パパートの生み出したLogoは、学習者とLogoの一対一関係で成り立っており、
学びの成果を確かめ合う他の学習者がいなかったことが問題として挙げられて
います。それに対してこのScratchは、コンピュータ・クラブハウスのような
一種の学びの共同体に適用するためのツールとして作られました。また、制作
されたプログラムはインターネットを通じて世界中で共有され得ます。つまり
Scratchは、ソフトウェアだけでなく、他の学習者との関係など、それを取り
巻く環境までを考えて作られているのだと言えます。

Scratchは、パパートのLogoの考え方を基礎にしながら、パパートを乗り越え
ようとしているのです。



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●参考文献
『マインドストーム−子供、コンピューター、そして強力なアイデア』
S.パパート(著)奥村貴世子(訳)
【ご購入したい場合はコチラ】
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4624400437/
503-9244240-3836728?v=glance&n=465392

●参考URL
『Scratch』
http://weblogs.media.mit.edu/llk/scratch/index.html
『Computer Clubhouse』
http://www.computerclubhouse.org/
『Lifelong Kindergarten :: MIT Media Lab』
http://llk.media.mit.edu/

(特集記事協力:
 三宅正樹/東京大学 大学院 学際情報学府 修士1年
 平野智紀/東京大学 大学院 学際情報学府 修士1年)
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今号でのScratchの紹介、お分かりいただけましたでしょうか。
Beatingで知ってもっと学びたくなった、という方のために参考図書も充実さ
せていく予定です。どうぞご期待ください。

では、「5分でわかる学習プロジェクト講座」次号もどうぞお楽しみに!
ご意見・ご感想もお待ちしております。


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■2. 【お知らせ】公開研究会「BEAT Seminar」2006年度第4回:
                         〜9/2(土)開催!
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今年度第4回となる9月のBEAT公開研究会は、

「学校の枠を超えた交流学習:伝え合うことで"異文化"を学ぶ子どもたち」

というテーマで開催します。

インターネットが学校で活用されるようになった1995年頃から、
交流学習には大きな注目と期待が寄せられ、実践研究が進められてきました。

交流学習には、教育内容としても教育方法としても、
大きな可能性と実績があります。
しかし、教師にとっては、
クラスの子どもたち以外の「他者」が存在することを前提に
授業を設計し、運用することは、容易なことではありません。
学習効果があるとわかっていても、実施が難しいのです。

そこで今回は、国内外の交流学習を成功させている方々をお招きし、
ベスト・プラクティスから以下の諸点を学びたいと考えています。

1)交流学習の教育効果はどのようなものか、何に効くのか
2)交流学習の成功の秘訣は何か
3)交流学習の「よさ」を引き出すために、
  今後、テクノロジーに期待されることは何か

どうぞふるってご参加下さい。

企画担当:堀田 龍也
—————————【第3回 公開研究会 概要】————————————
■日時
  2006年9月2日(土曜日) 午後2時より午後5時まで

■場所
  東京大学 本郷キャンパス 工学部2号館北館 9階 92-B教室
  http://www.beatiii.jp/seminar/seminar-map24.pdf

■定員
  70名

(最近、BEATの公開研究会は〆切前に募集停止になることが多くなっています。
 くれぐれも、お早めにお申し込みください。なお、キャンセルの場合は、
 お手数でもsato@beatiii.jpまでメールをいただければ幸いです。一人でも
 多くの方に席をお譲りしたいと思っています)

■参加方法
  参加希望の方は、BEAT Webサイト
  http://www.beatiii.jp/seminar/
  にて、ご登録をお願いいたします。
  第3回公開研究会「ゲーム・ルネッサンス:いつか来た道、これからの道」
  終了後(8月5日17:00〜)より登録を開始いたします。

■参加費
  無料

■登壇予定(敬称略、交渉中を含む)

 ●「日英交流学習サイト"Japan-UK Live!"」
  ハイディ・ポッター
  (ジャパン21・エグゼキューティブディレクター)
  http://www.japan21.org.uk/

 ●「交流学習の現状と課題」
  稲垣 忠
  (東北学院大学教養学部・助教授)

 ●国内外との交流学習の実践報告
  金 隆子
  (山形県米沢市立南原中学校・教諭)
  上村孝直
  (熊本県天草市立下浦第一小学校・教諭)

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2005年度の公開研究会では、いつもたくさんの方々にご参加いただきまして
ありがとうございました。

2005年度は、「デジタル教材の系譜・学びを支えるテクノロジー」と題し、
古今東西のデジタル教材をレビューすることによって、みなさまと一緒に
教育を支える新しい人工物の姿を考えてきました。

この公開研究会でレビューした教材を中心に、次のような本の出版を予定し
ています。
———————————————————————————————————
「デジタル教材の系譜・学びを支えるテクノロジー」(仮称)
2006年出版予定
ベネッセ先端教育技術学講座(編著)
———————————————————————————————————

2006年度の公開研究会でも、みなさまの多数のご参加を心よりお待ちしており
ます。今後の情報をお見逃しなく。


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■3. 【お知らせその2】東京大学大学院教育学研究科
   教育測定・カリキュラム開発(ベネッセコーポレーション)講座
                         国際研究会のご案内
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■テーマ:「リーディングリテラシーの測定,現状と課題
               〜各国の取り組みを通じて〜」

■内容: オランダ,オーストラリア,アメリカ,韓国などから,
     国際学力到達度調査(PISA)の担当者をはじめ読解研究
     におけるエキスパート達を招聘.
      諸外国でのリーディングリテラシーの定義や測定の現
     状について,実証に基づく報告を得ながら,これからの
     日本における「読解リテラシー」の測定・育成のあり方
     について議論を深めたいと考えています.

■日時: 2006年8月6日(日)10:00〜18:20
     (18:30より懇親会,任意参加)

■場所: 東京大学 本郷キャンパス 理学部1号館 小柴ホール

■基調講演: 小野元之 (日本学術振興会理事長)

■講演者: Erna Gille & Gunter Maris (Cito,オランダ)
      Juliette Mendelovits (ACER,オーストラリア)
      Jay Happel (ACT,アメリカ)
      Chang Won Kim (Gyeongin National University
                  of Education,韓国)
      有元秀文 (国立教育政策研究所,日本)

■問合せ先: sokutei@p.u-tokyo.ac.jp

* 開始時間,講演者は本日段階の予定であり,若干の変更が
加わる可能性があります.最新の情報はホームページをご確認
下さい.
http://www.p.u-tokyo.ac.jp/sokutei/sympo.html


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■4. 編集後記
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

8月開催予定の第3回公開研究会 BEAT Seminar のKeyword は、"ゲーム"です。
(すでに満員御礼で、申込は終了しています。ごめんなさい。)

ゲームといえばニンテンドーDSがすごい人気ですね。我が家でも、昨年のクリ
スマスプレゼントとして購入し、脳のトレーニング、英語の勉強等、教育的に(!?)
活用しています。効果のほどはわかりませんが、親子でチャレンジすると、思
わぬところで張り合ってみたり、協調してみたりと、ゲームに没頭するだけで
なく、面白いコミュニケーションが生まれたりもしています。

つい先日、ニンテンドーDSブラウザが発売され、DS でもインターネットを見
れるなどブラウザの操作も可能となりました。私はまだ試していませんが、
Gadget に興味のある読者の皆さまの中には、既に試された方もいらっしゃい
ますでしょうか?
ニンテンドーDSの教育的な利用も益々広がっていくのかもしれません。
みなさまの活用法などもお寄せいただけると嬉しく思います。


では、次号のBeatingもお楽しみに。そして素敵な夏休みをお過ごし下さい!


                        「Beating」編集担当
                             佐藤 朝美
                         satomo@beatiii.jp


-------次回発行は8月第4週頃の予定です。
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無断転載をご遠慮いただいておりますので、転載を希望される場合はご連絡
ください。

□登録アドレスの変更、登録解除などはコチラ
http://www.beatiii.jp/beating/

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「Beating」編集担当
佐藤 朝美(東京大学大学院 学際情報学府 山内祐平研究室 修士課程2年)
satomo@beatiii.jp

□「BEAT」公式Webサイト
http://www.beatiii.jp/

□発行
東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」

Copyright(c) 2006. Interfaculty Initiative in information Studies,
The University of Tokyo. All Rights Reserved.
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